世間の空気感を変えた小泉大臣! 育休取得率が向上すると変わる“10のこと”とは?
2020/03/28
「子育ての大変さは、当事者になってみないと絶対に分からない。世の中のお母さんを尊敬します」と話していた小泉大臣。世間に育休の必要性が周知される日は、やって来るのだろうか?
当事者しか分からない大変さ
世間の空気を変えた小泉大臣
今年1月から育児・介護休業法が改正され、1時間単位で育休を取得できるようになりました。
ママが子供を保育園に預けて職場復帰しようとしても、子供は体調を崩しがちなのでスムーズにいかない。そこでパパが短期でいいから育休をとって子供のケアをすれば、ママも復帰しやすくなる。それが法改正の趣旨です。
しかし、国会議員ですらこれを知らない人がたくさんいます。
そこで登場したのが小泉進次郎環境大臣でした。お子さんが生まれ、「出産後3ヶ月間に通算2週間の育休を取る」と宣言。これに賛否両論が噴出しました。
産後3ヶ月間はママが産後うつになるリスクが高い。だからパパの育休取得が大切なのですが、小泉大臣も当初はそうした子育てリスクを知らなかった。
昨年、自民党有志による「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」が発足し、そこでのシンポジウムなどを通じて小泉大臣も学び、モチベーションにつながっていったようです。
子育ての大変さは当事者になってみないと絶対に分かりません。奥様の退院後、小泉大臣から私に報告の電話がかかってきました。「子育てはどうですか?」と尋ねると、「オムツ交換、沐浴、ミルクやりをしましたが、大変でヘトヘトです。
世の中のお母さんを尊敬します」と話していました。小泉大臣のような影響力がある人が発信すれば、世間に育休の必要性が周知される。だから、私は小泉大臣に「世間の空気を読むよりも空気を変えてほしい」と伝えましたし、実際に空気が変わったと思います。
止まらない少子高齢化
その背景にあるものとは
最近の我々の調査で、両親学級の産前講座の受講率は約69%である一方、講座全体の1/3以上は未だに「ママ」対象であることが明らかとなりました。
そこでパパに育休の大切さを知ってもらうため、パパに特化した「FJ式プレパパクラス」という産前講座を全国自治体と協力して推進しています。
それでパパの意識が高まればいいし、リアルなパパ友がいれば子育ての悩みを共有できて救われるパパもいるだろうと考えたのですが、やはり育休自体に反対する人がいます。
先ほど「賛否両論」と言いましたが、日本では議員でも民間企業でも育休反対派が多いので、取得率が全体で6%にとどまっているのが現実です。小泉大臣への反対派は「大臣職を辞めてから取れ」とか「日本が新型肺炎で大変な時に休むなんて」とか、あとは個人的な好き嫌いで意見しているだけ。こういう人たちは日本の構造的問題を根本的に理解していません。
私はいつも構造的問題をボーリングの10本のピンに例えます。
1番ピンの①男性の育児・家事参加を解決すれば、2列目の②離婚、③DV・児童虐待を減らせます。そうなれば3列目の④女性活躍推進、⑤働き方改革、⑥介護離職防止になり、最終的に4列目の⑦ジェンダー平等、⑧地域社会活性化、⑨少子化対策、⑩人生100年時代につながります。
一方で、女性でもパパの育休に反対する人がいます。「夫が何もしない」という理由が3割ですが、残り7割はきちんと参加している。マスコミがネガティブな方だけ強調するからママも「パパの育休は不要」と思い込んでしまう。また、ママの両親(子供の祖父母)が「旦那のキャリアに響くから働け」と育休を許さなかったりする。
敵は身内にあり。実際にこうした“育休を阻む壁”というものが立ちはだかっています。最近では育休をバックアップする企業も増えました。そうした企業の業績が良くなるというデータも出始めています。他社も追随するようになれば、パパの育休もさらに増えていくでしょう。
PROFILE
安藤哲也 TETSUYA ANDO
1962年生まれ。2男1女の父親。2006年、NPO法人ファザー リング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表を務める。NPO法人タイガーマスク基金代表。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員などその活動は多岐に渡る。新著は『「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)
Text >> KOSUKE ONEDA
FQ JAPAN VOL.54より転載