“スマホ育児”って絶対ダメ? 注意する人と分かり合うために心得るべきこと
2020/03/31
「スマホ育児」という言葉が聞かれるようになった。むずかるわが子に動画を見せて落ち着かせるなど、スマホに頼った育児を指すもので、言外に非難するニュアンスがある。スマホ育児は本当に悪いのだろうか。パパママはICTとどのように付き合っていくべきだろうか。
新しいメディアは常に怖い!
70年以上前、「一億総白痴化」という言葉が話題になった(「白痴」という言葉は現代においては使うべき言葉ではないが、経緯があるのでここではそのまま記載する)。テレビが普及し始めた頃のことだ。評論家の大宅壮一氏がテレビによって日本人は「一億白痴化」すると書き、作家の松本清張氏がここに「総」を加えたそうだ。
「新しいメディアの登場はいかに脅威を感じさせるか」を物語っている。大宅氏や松本氏のような知識人が危機感を表明せざるを得なかったのだ。
しかし、日本人は白痴化はしなかった。むしろ前向きになったと言えないだろうか。自然災害が起きれば、みんな自分に何ができるかを考え、多くの人がボランティアに駆け付ける。そうした人々を動かしているのはテレビを中心にした速報性のあるメディアだ。大きなきっかけになったのは阪神大震災だった。
阪神大震災が起きた1995年、まだ携帯電話やインターネットの普及は不十分だった。しかし今や、テレビさえもはやオワコンなのかどうかが語られる時代だ。人々はスマホでつながり、災害時の情報発信、収集に役立てられ、ときには政治的なムーブメントさえ起こす。共助、公助のあり方に、スマホは欠かせないツールとなっているのだ。
ところが自助、特に家庭内の子育てのようなきわめてプライベートな領域では、なぜかスマホを持ち込むことに抵抗があることが、大きく見たときの「スマホ育児」問題の一つの本質のように思われる。
スマホ育児に警戒的な〇〇世代
子育て関連のサービスを提供する企業が共同で運営する「子育Tech委員会」が子育てとテクノロジーに関する調査を行い、その結果を発表した。ママたち1,113人を対象に実施したものだ。
アプリなどのツールへの満足度を尋ねたところ、母親の年齢が低いほど、また子供の月齢が低いほど、満足度が高いという結果となった。母親の年齢が高くても、子供の月齢が低ければ満足度は高い傾向にあった。
若い母親ほどデジタルツールへの親和性が高く、また子供が小さいほど、アプリなどに頼らねばならない状況が多いのでは、と推察できるだろう。
子育てにITツールを使用することについて周囲から注意を受けるかという質問もしている。半数以上にあたる約59.8%が何かしらの注意をうけていると回答した。
また、母親の年齢と、注意を受けた相手の相関については、20代の母親に対しては50代が最も注意をし、30代の母親に対し60代が最も注意をするということがわかった。祖父母世代が多く注意をする傾向にあると、子育Tech委員会としては考察している。
祖父母世代が神経質になるのはよく理解できる。新しいメディアに対してヒトは警戒的なものであり、そのこと自体は危険回避のために必要だ。しかし、スマホやタブレットで流れる情報は文字情報、動画や画像、音声であり、基本的にテレビと変わりはない。むしろ、手軽さ、オンデマンド性の高さといったメリットがはるかに大きい。
ただしスマホ依存には気をつけたい。そのためには節度が大切で、スマホについ頼ってしまいたくなる、育児をめぐる社会状況を何とかすることが一番大事だ。
もしパートナーがスマホに頼り過ぎていると感じたら、余裕ができるように何とかしてあげよう。なお、ママからよく聞かれるのは「自分は育児に追われているのに、夫がスマホでゲームをしているのが一番腹立たしい」という声だ。
DATA
Text:平井達也