イクボスって何?
2014/04/14
10年後を見据えて、今こそ“イクボス”の育成が求められる
上司(部課長~管理職世代)の固定化した価値観・仕事のやり方や男女の役割意識がワークライフバランス、つまり男性の育児休暇取得、女性の活躍推進、超長時間労働の是正などの妨げとなっています。一方、少子化で労働人口が減りつつある中、子育て世代の出産育児時の離職や40~50代の介護での離職者をいかに防ぐかは企業の喫緊の課題のはず。「男女問わず全て」の労働者の「育児、介護、その他私生活」などスタッフの生活事情全般への理解を示す上司であるところの「イクボス」を育成することが、社員のワークラフバランス推進にとどまらず、企業にとっては従業員の満足度、健康度、ロイヤルティを上げ、生産性向上と利益拡大にも繋がっていくはずです。
FJでは「イクボス十か条」も掲げています。
1)理解:現代の子育て事情を理解し、部下がライフ(育児)に時間を割くことに、理解を示していること。
2)ダイバーシティ:ライフに時間を割いている部下を、差別(冷遇)せず、ダイバーシティな経営をしていること。
3)知識:ライフのための社内制度(育休制度など)や法律(労基法など)を、知っていること。
4)組織浸透:管轄している組織(例えば部長なら部)全体に、ライフを軽視せず積極的に時間を割くことを推奨し広めていること。
5)配慮:家族を伴う転勤や単身赴任など、部下のライフに「大きく」影響を及ぼす人事については、最大限の配慮をしていること。
6)業務:育休取得者などが出ても、組織内の業務が滞りなく進むために、組織内の情報共有作り、チームワークの醸成、モバイルやクラウド化など、可能な手段を講じていること。
7)時間捻出:部下がライフの時間を取りやすいよう、会議の削減、書類の削減、意思決定の迅速化、裁量型体制などを進めていること。
8)提言:ボスからみた上司や人事部などに対し、部下のライフを重視した経営をするよう、提言していること。
9)有言実行:イクボスのいる組織や企業は、業績も向上するということを実証し、社会に広める努力をしていること。
10)塊より始めよ:ボス自ら、ワークライフバランスを重視し、人生を楽しんでいること。
上記「十か条」の過半は満たしている管理職のことを私たちは「イクボス」と呼びます。
繰り返しますが「イクボス」とは、多様な働き方を応援し、リーダーとして組織の生産性を高めようと力を尽くせる上司のこと。核家族化によって夫婦二人で協力しなければ子育てが成り立たない今の育児事情や、これから団塊世代が老後を迎えて「大量介護社会」に突入しようとしている構造の中で、「社員の長時間労働に頼る」という稼ぎ方はがもはや通用しなくなることは明らかなのです。
10年後を考えると、イクメン世代の30代前半が管理職として活躍する時代になるので、企業風土はよりワークライフバランスを重視したものに変わっていくはずです。これからの企業は、“イクボス”育成を軸に新たな企業風土づくりが急がれます。
FJでは、家庭をあまり省みなかった男性たちを「笑顔のパパ」にしてきたように、仕事一筋だった管理職たちを「笑顔のイクボス」に変える(変わってもらう)ことを目指します。
イクボスが増えれば、社会が変わる。
あなたの職場に笑顔の「イクボス」はいますか?
安藤 哲也(TETSUYA ANDO)
1962年生まれ。2男1女の父親。出版企業やIT系企業を経て、2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ、5年間代表を務める。現在は副代表。NPO法人タイガーマスク基金代表。「パパ’s絵本プロジェクト」メンバー、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員、子育て応援とうきょう会議実行委員、にっぽん子育て応援団団長、ラジオパーソナリティなどその活動は多岐に渡る。最新著書に『父親を嫌っていた僕が「笑顔のパパ」になれた理由』(廣済堂新書)がある。
(2014.04.14up)