男性社員の「育児休業完全取得」も!? 大手企業による働き方改革の取り組み3選
2019/05/28
イオンの“ダイ満足”は
社会を幸せにする
法整備に先んじて、働き方を改善してきた企業もあります。例えばイオングループ。ダイバーシティの推進によって生み出される「従業員・家族」「お客様」「会社」の満足を“ダイ満足”と定義。イオングループに関わる全ての人がメリットを享受できることを目指して、多岐にわたる取り組みを行っています。
グループ各社のダイバーシティ推進責任者などが参加して、情報共有や新知識をインプットする“ダイ満足”サミットを年に4回開催しているほか、若年女性の退職を減らすべく始めた取り組みもあります。25歳前後の女性を対象としたキャリアデザインコースのほか、女性の上位職への意欲向上を目指したキャリアアップコース、現管理職の意識変革を目的としたマネジメントコースを開講しています。
ダイバーシティ経営実現のキーマンである管理職に向けては「イオンのイクボス」づくりを行っており、私達ファザーリング・ジャパンも協力しています。イクボスセミナー開催のほか、「イオンのイクボス検定」を実施。また、地方自治体(千葉市・三重県)や他企業と連携した「イクボス共同宣言」を行っています。
これらの活動は法律対応のためではなく、従業員・会社・顧客、それに地方自治体や社会全体にまで目を向けて行われていることが、お分かりいただけると思います。
経営者自らが進めた
積水ハウスの働き方改革
次の事例は、従業員が仕事と家庭を両立させて多様な働き方・生き方を実践できる職場環境を整備すべく、2006年に人材サステナビリティを宣言した積水ハウス。従業員の働き方に配慮する企業の先駆け的な存在です。
今ではITの活用、在宅勤務制度の積極的な導入のほか、メリハリのある働き方を推進する方策としてスマートホリデイ(年次有給休暇)を導入しています。孫休暇、親孝行休暇、ヘルスケア休暇、家事休暇、ボランティア休暇など多彩なテーマを設け、多様な価値観や役割を持つ従業員に幅広く対応しています。
昨年「男性社員1ヶ月以上の育児休業完全取得」を宣言して注目されましたが、実はコレ、社長自らが積極的に導入を推進したもの。制度が整えられたところで上司が旧態依然としていたら、容易には休暇を申請できないのが日本社会。社員からすれば「取得したら評価が下がるのでは……」という心配もあります。ところが積水ハウスは経営層が推進し、「育休取得は評価や賞与には影響しない」と明言されているのです。これは心強い!
なぜ積水ハウスは働き方を改善するのでしょうか? それは「家を売る人(社員)には自分の家庭を幸せにしてほしい」という想いがあるから。仕事ばかりで家庭を顧みることができない人に、良い家が作れますか? そんな人が作った家を買いたいですか? そういう自社への問いかけが、こうした取り組みに反映されているのです。
パパ社員が育児アプリを開発!
昭和シェル石油の取り組み
最後の事例は昭和シェル石油。育児に取り組むパパとママのコミュニケーションをサポートする目的で、パパ育児に役立つ情報を配信するスマホアプリ「パパコミ」の提供を開始しました。実際に育休を取得したパパ社員が中心となって始めた新規サービスであることが注目ポイントです。
ファザーリング・ジャパンはアプリ内の記事配信を中心に協力しているのですが、このアプリが面白いのは、ママとのコミュニケーションに活用できる点。それが、育児に遊び心をプラスするビンゴ機能です。育児・家事に関するタスクを設定してビンゴシートを作り、ママのスマホと連携させることで、夫婦で協力してビンゴを進めることができます。また、育児参加のレベルをチェックできる機能も名案! 育児参加の度合いを他のパパと比較できるだけでなく、ママの期待にどれだけ応えられているかもわかる、というものです。
今回は3社の取り組みを紹介しましたが、三者三様、各社が本気で働き方改革に向き合っています。ここに挙げたような取り組みを一気に始めるのは難しいと思いますが、管理職や経営者の意識改革は、思い立ったら即実行できます! まずはそこから始めてみませんか?
PROFILE
安藤哲也 TETSUYA ANDO
1962年生まれ。2男1女の父親。2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表を務める。NPO法人タイガーマスク基金代表。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員などその活動は多岐に渡る。新著は『「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)
Text >> REGGY KAWASHIMA
FQ JAPAN VOL.50より転載