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時事・コラム

東日本大震災から8年。被災した子供の心のケアと、親ができること

東日本大震災から今日で8年。3.11以降も、日本は自然災害に多く見舞われてきた。昨年は、大阪北部地震や西日本豪雨、北海道胆振東部地震などが立て続けに発生したが、災害を経験した子供の恐怖心をできるだけ取り除き、適切な心のケアを行うにはどうしたら良いのだろうか。

被災したパパ&ママは
子供の安心を最優先すべき

東日本大震災から9年目を迎える今年。その後も熊本地震や西日本豪雨、それに北海道胆振東部地震が発生しました。これらの災害・二次被害により失われた命に哀悼の意を表します。

一方で今を生きる私達は、こうした災害を悲しい出来事だったと終わりにしてはいけません。教訓を得なければならないのです。

そこで私が精神科医として、またボランティア活動を通じて得られた、被災者の心のケアに関する知見をお伝えします。

最初は、被災直後の子供のケアについて。最優先すべきは、当然のことですが、物理的な安全を確保すること。その次に行うべきは、子供が安心できる環境作りです。衣食住を整えてあげましょう。そしてできることなら、そうした環境作りを通して、子供に「深刻な事態ではないよ、大丈夫だよ」と安心感を与えてください。

最近の研究で明らかにされてきたことですが、被災者の心に後になって悪影響を与えるのは災害初期の記憶なのです。初期の恐怖を減らしてあげるよう心をケアすることで、後によりスムーズに日常を取り戻すことができるのです。

アメリカで起きた同時多発テロの研究からは、メディアを通じた恐怖体験がトラウマになり得ることが分かりました。被災時には情報を収集する必要がありますが、テレビやインターネットを通じて災害の様子を子供に見せてしまうと、それが恐怖体験として定着してしまう恐れがあります。心のケアの一環として知っておいてください。

いたずらに振り返らず
初期記憶の定着を防ぐ

時が過ぎて日常を取り戻して行く過程で、子供が自分から被災した時のことについて話し始めることがあります。これまでは「聞いてあげる」、「吐き出させてあげる」こと、つまり感情を閉じ込めないことが重要である、とされていました。

ところが最近の研究からは、そうした行為により、かえって怖かった記憶を定着させてしまうことが分かってきています。被災時の様子を詳細に話したり、作文を書いたり、絵に描いたりすることで、せっかく薄れかけていた記憶を定着させてしまうのです。

私はボランティアとして被災地の民生委員・児童委員のメンタルケアを行う活動に取り組んでいますが、それを始めることができたのは、被災から1年を経てからのことです。これは、大人であっても一定程度の時を経た後でなければ、すぐに記憶を辿るべきではないための配慮です。

こうした研究から判断すると、子供が被災した時のことを話し始めたら、ごく自然に対応してあげれば良いのです。近年の日本では、各地で次々と自然災害が発生しています。いざという時に子供の心を正しくケアできるよう、覚えておいてください。

PROFILE

香山リカ RIKA KAYAMA

東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。



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