「ベビー・ブルー」って何? 出産後の妻の状態と、夫ができること
2018/10/23
そして、ベビー・ブルーへ
悲しいけど、楽しいことにはいつか終わりが来るもの。生後1週間も経たないうちに君のパートナーのテンションは冷めてしまって、打ちひしがれた泣き虫になってしまうかもしれない。これは産後鬱とはちょっと違って、いわゆる「ベビー・ブルー」と呼ばれるものなんだ。勘違いな僕は、最初は彼女の涙が喜びを意味するもんだと思ったけど、そうじゃなくて実は悲しみの涙だったんだ。
「こんな素晴らしい赤ちゃんがいるのに、一体、なぜ泣く必要があるの?」と聞きたくなるだろ。どうやら理由はあらゆるところにあるらしい。そんな突然の落ち込みの一番大きな原因は、出産後に急にホルモンの分泌が低下することにあるんだ。妊娠中ずっと、彼女の体は子供を身ごもるのに耐えられるように、気分よくいるためのホルモンであふれていた。
でも、出産から2日もするとそのホルモンは一気に分泌が抑制されるようになり、彼女の体は薬物大量使用後の離脱症状みたいなことになってしまう。出産というめまぐるしい体験から数日して、ようやく緊張がほぐれリラックスしようとし始めている一方で、まだ彼女の体は出産から完全には回復していないんだ。
それまではアドレナリンと生まれた赤ちゃんへの愛情が彼女に力を与えて頑張れた。でも、こみ上げて来る疲労感が彼女を襲い始めると、それは見ているのが辛いほどだ。でも、心配することなかれ。ほとんどの女性の場合、ベビー・ブルーは、ごく一時的なもの。彼女は自分が母親としての能力が足りないとか、母親としての資格がないんじゃないかっていう不安を感じてブルーになるかもしれない。当然、これまで君がそばで見てきたことが証明しているように、彼女は世界一立派な母親だ。彼女はオムツを替えるのだって、ミルクをあげるのだって、君みたいに下手クソじゃないんだから……。
まれに、ベビー・ブルーが数日で収まらずに長く続くケースもある。そんな場合は、産後鬱の可能性があるから気をつけてあげるんだよ。
父親としての振る舞い
当たり前だけど、奥さんをしっかり支えてあげることだ。「仕事でクタクタの僕の方がサポートして欲しいよ、赤ちゃんが出来てから何でも2番手になっちゃったし」なんてボヤているパパもいるかもしれない。しかし、彼女の”最愛の人”から”2番目”に降格したからといってムッとしている場合じゃない。君は自分の面倒くらいはできるけど、赤ちゃんは自分で何もできない。赤ちゃんと彼女の両方を思いやりを持って配慮するのが、君にとっても幸せになる最善の方法なはずさ。
将来への不安や責任
もしかしたら、君は「この先、父親としてうまくやっていけるかな?」って思っているかもしれない。でも、その答えは簡単、YESさ。もちろん君はちゃんとやっていけるよ。確かに妊娠期間を通して、君は妊娠・育児のことは参考書で勉強したつもりでいたのに、いざ実際に赤ちゃんが家に来ると、想像とは全然違うことにその自信も揺らいでくるだろう。妊娠が発覚した頃に感じた、責任とか経済面の心配や、自分が親として未熟であることの不安が呼び戻されたという先輩パパたちもいる。
父親になって気持ちがたかぶっていても、ベビーベッドやベビーシートに寝ている赤ちゃんが実際にいて、哺乳瓶から、おっぱいからお乳を飲んでいるのを目の当たりにしてしまうと、ついうろたえてしまうものさ。出産前から準備しておいたベビーカーの車輪に徐々にキズがつき始めて、何週間も綺麗に畳んでおいたフワフワの毛布が、今は家中のあちらこちらに散らばりだす……。
赤ちゃんの誕生で君のまわりのすべてが、すごくリアルで、すごくエキサイティングになったんだ。さっきの答えをもっと正確に言ってあげよう。君はちゃんとやれるなんてもんじゃない。すごくうまくやっていけるよ。さらに言わせてもらうと、育児をめちゃくちゃ楽しんじゃうはずさ。
プロフィール
ジョン・スミス
世界的ベストセラーとなった「The Bloke’s Guide to Pregnancy〜野郎のための妊娠ガイド〜」の著者でもあり、英国版FQ をはじめ多くの育児雑誌でコラム等を執筆する。
Translation >> MIDORI MIURA
FQ JAPAN VOL.11より転載