自然は最高の教師! 育児のヒントは「ソト」にある
2018/05/29
「ソトイク系DAD」の
ハイブリッドな育児スタイル
ソトイク(外育)とは、小誌が提唱している、文字通り「外で育てる」ことを基本理念とする育児方針のこと。比較的一緒にいる時間の長い母親による屋内の育児とは違い、父親ならではの”屋外(広義には自然)”を基本フィールドとする。「運動」「人間(コミュニケーション)」「自然」の3要素から構成される。
自然を感じるアンテナを鍛えるには、年に1回秘境と呼ばれるような大自然にお邪魔するよりも、近所の公園を毎週訪れ定点観測するほうがいい。
ビジターとして見る大自然はいわば1枚のスチール写真のようなもの。瞬間的な美しさはあるが、時間とともに変化する生命の本質は感じ取りにくい。近所の公園を定期的に定点観測していれば、生命が時間とともに変化しており、それこそが非生命との違いであることが理屈抜きに分かる。
公園の遊具やベンチは、夏も冬も変化しない。石ころも、誰かが蹴飛ばさない限り、ずっとそこにあり、変化しない。
しかし、木々や草花は時期折々に変化する。春には春の花が咲き、夏には夏の虫が闊歩し、秋には落ち葉がひらひらと舞う。冬にはあらゆる生き物が死んでしまったように見えて、実は虎視眈々と、春が来るのを待っている。そして僕たちは、自分たちも同じ環の中にいることに気付く。一回限りの一大イベントとして大自然を満喫するのもいいけれど、身近な自然とのサステナブルな触れ合いから学べることはもっと多い。
自ら自然の一部になることだ。そうすることで、子供たちの「生きる力」は覚醒する。木に登って、どろんこになって、ムシを追いかけて、ムシに噛まれて……。そんな自然体験を演出するのが僕たち「ソトイク系DAD」の使命。
夫婦が互いの得意を活かすことで
育児に多様性が生まれる
食事をさせたり、服を着せたり、しつけをしたり、絵本を読み聞かせたり、そういうインドアな育児はもちろん不可欠。でも同様に、アウトドアな育児も、子供の健全な発育には欠かせない。
もし仮に、妻がインドア系の育児を得意とするのなら、DADはあえてアウトドア系の育児を担当するというのもありだ。ムシの嫌いな妻が無理してハサミムシを捕まえる必要はないし、料理の苦手なDADが無理して下手な料理を作る必要はない。
まずはお互いの得意分野を活かせばいい。それが進化形イクメンの家庭内ワークシェアだ。妻のまねをするのではなく、自分の得意分野を子育てに活かす。そうすることで、子育て環境の中にダイバーシティ(多様性)が生まれる。
ちなみに、著名な識者を多数取材した経験から言えることは、男性の場合、彼らの多くが子供の頃にムシオタクだったということ。「ムシイク」はもしかして最高の英才教育なのかもしれないと思ったことがある。昆虫少年だったDADは、その特技を子育てにそのまま活かせばいい。
どろんこになって、ヘンな虫を虫かごに入れて帰宅すれば、妻に怒られることもあるだろう。取ってきたカマキリの卵が一斉に孵り、家中カマキリの赤ちゃんだらけになれば、妻にキレられてしまうかも知れない。そういう葛藤も含めて、子育て環境のダイバーシティといえる。
そしてキレた妻をなだめるのに必要なのは、理屈ではなくて愛。理屈では納得してもらえなくても、「しょうがないわねぇ」と思わせることができればそれでいい。「ダイバーシティ夫婦」である。
妻を愛し、リスペクトしつつ、自分は妻との違いを最大限に活かして子供に関わる。そうすることで子育て環境に奥行きが生まれる。子供の育つ環境がより豊かになる。そんな家庭環境をトータルプロデュースすることこそ、これからのイクメンのあるべき姿だと思う。
PROFILE
育児・教育ジャーナリスト
おおたとしまさ
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。All About公式「子育て」ガイドであり、心理カウンセラーの資格、中高の教員免許、小学校教員の経験もある。著書は『忙しいビジネスマンのための3分間育児』、『ガミガミ母さん、ダメダメ父さんから抜け出す68の方法』、『中学受験という選択』など。
FQ JAPAN VOL.27より転載