イクメンはやっぱりファッションだった!? 3児のパパが語る
2018/04/30
共同体の空洞化と
ネトウヨ化現象
大きな話をすれば、グローバル化による中間層の崩壊の中で、人々が感情的に劣化し、損得化していくという流れがあります。その結果、仲間のための貢献とか自己犠牲という感情がほとんど消えつつある。そして家族も地域も共同体ではなくなり、なおかつ性的な退局も進んでいます。
若い人になぜ恋愛しないのか聞くと、コストパフォーマンスが悪いとかリスクマネジメントができないなどと、真面目な顔で答えてきます。だから、それを僕は「本当のクズだ」と評しています。そうした劣化した連中、つまり損得の枠の中に閉じ込められた人たちというのが、私の言う“クズ”の定義です。
今の人は、何かあればすぐに「ビジネスマインド」と言います。それを経済や企業で当てはめるのは妥当としても、共同体にそれを持ち込むのは本当のクズです。共同体にもいろいろな定義がありますが、分かりやすくいえば「損得を超えた仲間の集団」です。家族、地域、恋愛関係など形式は何でもいいのですが、一見すれば同じように見えるそれらのものも、損得を超えた感情が失われていれば、それは共同体の空洞化なのです。
残念なことに、ネトウヨ化現象が起こっています。私はそれを言葉の自動機械と表現していますが、要は古くから知られている心の穴埋め現象で、不安になった人たちが穴を埋めるために言葉の自動機械として振る舞った結果、ネトウヨ化してしまいました。多くの人はそれをイデオロギーの問題で片づけていますが、学問の世界ではそれは間違いです。
イデオロギーには意味がなく、単に鬱屈を晴らして穴埋めをしたいだけだからです。そこでたまたま手近なインターネットというツールを使っているだけで、内容的には意味がありません。本当の右翼や保守の教養があれば、到底しないような構えまでしています。
本当の保守は実存的な構えで浅ましい人間を否定し、ひとかどの人物になることを尊重することです。細かく神経質な人はダメだし、自分たちで社会をコントロールできると思っている時点ではっきりいって浅ましい。そういう伝統も知らない、というよりむしろ対極にあります。
PROFILE
宮台真司
1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(社会学博士)。『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社)など著作多数。
Text » KOUSUKE OONEDA
FQ JAPAN DIGEST VOL.44(2018年春号)より転載