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「母親なら◯◯すべき」理想を強要するダメイクメン

母性本能はエセ科学!?

「母親が子育てをするのは、人間の本能だ」という人も多いと思いますが、私はそれにも疑問を感じています。というのも、人間はもっとも本能に縛られない、理性を持った生物だからです。

女性は子供を産んで母性本能が芽生えるというけど、血が繋がっていない子供だって育てられるし、母親じゃなくて男性だって育児はできます。たしかに子供を産んで、変わる女性はいるけれど、変わらない女性がいてもいいと思います。

精神科医である私のもとには、戦中戦後を経験した女性が訪れることもあります。カウンセリングのなかで、「専業主婦だったけれど本当はやりたい仕事があった」とか、「本当は子供が好きじゃなかった」とかいう話が出てくることも。長年、望まない生き方を強いられてきた人もいるのですよ。

だから、これを読んでいる男性には、自分の理想の母親像を妻に押し付けてほしくないし、「お前も母親になったんだから」と変化を求めるようなこともしてほしくないです。ぜひ、パートナーの生き方を尊重してください。

 

VIEWS 「理想の母親像」問題をとらえる3つの視点

①性別を置き換えて考える

今井絵理子議員の不倫問題もニュースになっていますが、そのなかで「男と会っている時間があるなら、子供を大切にすべき」という意見があり違和感を抱きました。妻子ある男性と交際するのは褒められたものではないですが、なぜ男性側は「不倫なんてせずに、もっと子供との時間を大切にすべき」という話にならないのでしょうか。不倫のニュースや子供がいる女性の交際に関する話題を目にするたびに感じます。

②理想の母親像は幻想

日本の理想の母親像は、自然に生まれたものではなく、男性によってつくられたものです。そもそも、男は仕事、女は家庭という価値観が生まれたのは明治以降の話で、江戸時代は地域みんなで子育てをしていた記録も残っています。自分の理想の母親像に妻を近づけようとするなんてもってのほか。妻の生き方を尊重しましょう。

③母性本能を理由にしない

本能に忠実に動く動物ならともかく、理性を持った人間は、本当の母親でなくても子供を育てることができます。それは里親を見ればわかるし、産院の取り違え事件のその後を見てもわかりますよね。男性が子育てをすることもできます。「子供が生まれたから母性本能が芽生えてママの顔になったね」とか、「なんでお前は母性本能がないんだ」とか言うべきではありません。

 

PROFILE

香山リカ RIKA KAYAMA

東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、 現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメ ディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。


Text >> TAKESHI TOYAMA

FQ JAPAN VOL.44より転載

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