日本一忙しい小児科医が教える!子供の急な病気でNGな「親の行動」
2024/11/01

子供に迫る危機を考えるシリーズ「家族を守るリスクマネジメント」。今回は病気について。 親の誤った行動で入院の可能性も? 子供の病気につい知っておきたい注意点を、“日本一忙しい小児科医”鈴木先生が伝授。
本当は必要ないのに入院?
親は知らない「社会的入院」
実は、必要もないのに医者は患者を入院させることがあります。病状としては入院する必要はないけれど、「この親は家でこの子を看護する精神状態にない、能力がない」ということを医者は判断し、入院を提案することがあります。これを「社会的入院」と言います。
そのとき小児科医は「あなたにはこの子のことを見ることはできない」とは言わず、「お子さん辛そうなので」と言います。小児科医というものは、子供を診るときに親のことも見ています。
過剰におどおどしたり、判断能力・看護能力の低い親がいる家庭では、子供が病気になるたびに社会的入院が続くことになります。そうすると、さらに親は「他の子は1回も入院したことがないのにこの子は5回入院した」→「自分の子供はなにか違う病気なのではないか」→「大きな病院に行ったほうがいいんじゃないか」→「この子の体が弱いので調べてください」と、負のスパイラルに陥ってしまう可能性もあります。しまいには「うちの子は、がんではないか」と思ってしまう親もいます。
これが、本当は大きな病気ではなくても、親の対応ひとつで、親も子供も不幸にしてしまうということです。
子供の急な病気で親が
やってはいけないNG行動
1.「おどおどしない」
親が心配しておどおどしている姿を見ると、子供はもっとかまってほしくて過剰な演技をすることがあります。それを「疾病利得(しっぺいりとく)」といい、そんな子供の様子を見た親がさらに動揺する……という悪循環になることも。心の中では心配していても、いつでも冷静な態度で対応しましょう。
2.「急がない」
例えば、「夜中1時に熱が出た」としても、急いで病院へ行く必要はありません。深夜の病院は担当当直が1人であるケースがほとんどで、まさに「死ぬか生きるか」の緊急対応のためのもの。発熱や風邪に似た症状の場合は、一晩様子を見て、翌日の朝病院へ連れて行きましょう。
3.「怒らない」
子供は体調が悪いと、機嫌が悪く、親に甘えたいもの。たとえば子供に抱っこをせがまれたとき、他に何か大事なことで急いでいたとしても、そこで怒ったら逆効果です。子供が甘えたいときだけは怒ることを我慢するのが大事なのです。
医師と共有しておきたい
乳幼児の異変
食欲の低下
発熱すると、食欲は低下します。そんなときは「消化によいもの」よりも、「消化に悪くても子供が食べられるもの」から食べ物を選択するべき。それを食べさせてよい身体状況なのか、医師に聞いてみましょう。
発熱時の表情
子供は発熱時の表情にも個性があります。発熱すると常にしんどそうにする子、40℃を超える熱でもケロっとしている子。診察時の表情よりも、いつもの表情との違いが重要なのです。これを親が理解していないと、未熟な医師は病気の重症度の判断を誤ります。
血便
乳幼児であれば腸重積(ちょうじゅうせき)の可能性があります。2歳以下の乳幼児、特に生後4~9ヶ月の乳児に多く発症します。血便は粘液まじりのイチゴゼリー状と表現され、いち早く気付いてあげることが重要です。発病後24時間以上経過し、全身状態の悪化が認められた場合、開腹手術による治療も考慮した対応が必要となってきます。
発熱時の目の充血
目の充血は風邪ではなく、川崎病という病気の可能性があります。
②両目眼球結膜の充血
③口唇が赤くなる・イチゴのような舌になる
④発疹
⑤首のリンパ節の腫れ
⑥手拳背・足拳背の発赤・むくみと落らくせつ屑
以上の6大症状のうち5つがそろえば「川崎病」と診断されます。
咳・鼻水の性質
風邪以外でも、咳や鼻水がでてくる病気はさまざまです。自己判断はせず、早めに医師と情報を共有しましょう。
●透明な鼻水がダラダラと流れる(アレルギー性鼻炎)
●咳「ゼーゼー」「ヒューヒュー」「ゴロゴロ」(気管支喘息や急性細気管支炎)
●犬やオットセイの鳴き声のような咳、呼吸が「ゴーゴー」(クループ)
監修
「すずきこどもクリニック」院長
鈴木幹啓
日本小児科学会認定小児科専門医。日本小児科学会、日本小児感染症学会、日本小児アレルギー学会、日本小児呼吸器疾患学会、日本小児皮膚科学会所属。現在3児の父(長女11歳、次女9歳、長男3歳)。クリニックの年間患者来院数は約48,000人。著書『日本一忙しい小児科医が教える病気にならない子育て術』(双葉社)。
FQ JAPAN VOL.42(2017年春号)より転載
※2017年に公開した記事の更新版です