普段、自分と向き合ってる? 米国で親子禅キャンプ開催!
2017/03/22
1996年、日本の禅文化を世界に広めた仏教学者の鈴木大拙(すずき だいせつ)は、日本人にとって自然と人間は本来一体のものであると語っている。禅の世界観が世界で注目を浴びる中、アメリカでも親子で自然との一体感を感じることのできる禅キャンプが今夏に開催される。
自然との一体化を目指した
親子向けの禅キャンプ
今、アメリカの人たちにとって仏教は遠い存在ではない。2011年に亡くなった米アップル社の創業者であるスティーブジョブズが熱心に禅に取り組んでいたのは有名な話だし、ハリウッドセレブ達も集中力を高めるために禅を取り入れた思考法、マインドフルネスに挑戦しているという。自分と真摯に向き合う禅の考え方が、世界中で見直されているのだ。
ニューヨーク州の中央にあるゼン・マウンテン修道院は、1980年から現在までこの地で人々に仏教の精神を伝え続けてきた。そのゼン・マウンテン修道院で今夏、親子向けの禅キャンプを開催する。キャンプはキャッツキル山地の麓で2泊3日の予定だ。参加者達は一日の始まりに座禅に取り組んだ後、火をおこしたり、自分のすみかを創ったりする自然活動を通して、自然と一体化して生きていくことを学ぶ。普段おろそかにしている、自然に対する感性を取り戻すためだ。
プログラムのコーディネーターであるヴァネッサ・ズイセイ・ゴッダードさんは、20年間この修道院で修行を積んだ修道士だ。彼女は、こう問いかけている。「マッチやライターを使わずに火をおこせますか? 枝葉の落ちた地面の上を、足音をたてずに歩けますか?」
子供だけではなく、大人にだって難しいように感じる。
ガスの火がボタンひとつで灯り、アスファルトを踏みしめる都市での生活に慣れきった私たちにとって、もはやこれは挑戦だ。しかし、生き物としての営みを振り返ることで、普段の忙しさにまぎれて忘れかけている大切なことに気付けるのではないだろうか。ゴッダードさんはこのキャンプを通して、人間としての自由な気持ちやいきいきとした暮らしをもう一度思い起こして欲しいと語っている。
子供も大人も、普段の自分を振り返り、自然と密接につながる体験を得られるだろう。共に過ごした時間で何を考えたか、親子で話し合うこともまた1つの楽しみとなりそうなキャンプである。
寺院裏の庭で、父親たちが子供とレクリエーションをする。
カヌーで湖を渡るため、水場での安全指導が行われる。
Text » YUKO TERAO