少子化が進んでいたフランス「2人目の壁」の乗り越え方
2016/11/14
経済的な不安により、2人目を生むことをためらう人がいる。育児環境が整っていないためだ。フランス大使館、ポール=ベルトラン・バレッツ公使に解決方法を聞いた。
働くママを支援、多児に手厚い
制度&手当で家族運営しやすく
経済的な不安により、2人目を生むことをためらう人がいる。育児環境が整っていないためだ。1990年前半に合計特殊出生率が1.7に落ち込んだフランスではこの答えを解消すべく、保育サービスの充実を促進させたという。
フランスでは3〜6歳児はほぼ100%保育学校に通っているため、それより小さな子供の預け先はどのようになっているのだろうか。「フランスでは、3歳児未満の保育先として保育所のほか保育ママ(assistante maternelle)を拡充しました。また、週35時間労働制の導入させることで、パパやママが家庭で過ごせる時間を多く確保できるようになりました。
経済的不安を断ち切るために、フランス女性はママになっても働き続けるのがスタンダード。25〜49歳の女性の就業率はなんと84%になります。パパと2人で働けば収入が維持・アップできるため、2人目・3人目が持ちやすい。加えてフランスの家族給付は子供が増えるほど手厚くなる傾向に。日本の児童手当に該当する家族手当は第二子以降が対象になっています」。(ベルトラン・バレッツ氏)
家族政策が重要という国民性も
働くママ・イクメンを後押し
フランスでこのような手厚く多様な家族政策がとれるのは、家族は大切なものというコンセンサスが社会全体で形成されているためだという。そのため、社会保障に家族支援制度がしっかり組み込まれており、2011年家族関係に支出した割合はGDP比で2.85%(約586億ユーロ)。日本の1.36%(約6兆3890億円)の倍以上となっている。
「フランスでは第二次世界大戦後、戦争によって崩壊してしまった家族を再構築するため、家族政策に力を注いできました。
そして、社会の豊かさに呼応する形で最近のフランス人パパは育児に参加したいという思いが強く、実際に育休を取得するパパも増えています。以前の父親の育休は、出産から4ヶ月以内に連続して11日間取得できるものでしたが、2014年から父親も6ヶ月の休暇を取得する権利と、国からの手当てが受けられるよう法改正されました。ママや子供をバックアップするためには、家族のために時間を割くことが大切です。日本・フランス関係なく、家族の絆を深めるためにも、パパが家族と一緒にいられる時間を増やすことが重要ではないでしょうか」。
フランス大使館 ポール=ベルトラン・バレッツ公使。2児の父であり、自身も育休を取得。
2002年より常勤で働く人の労働時間を週35時間に規定したもの。時短勤務によって家庭で過ごす時間がパパ・ママともに増加したり、新たな雇用を創出するといったメリットがある。2. 保育ママ《assistante maternelle(アシスタント マテルネル)》
職業訓練を受けた後、県などによって認可されたのが認定保育ママ、assistantematernelle(アシスタント マテルネル)。1人の保育ママにつき4人まで預かることが可能。子育て中のママが資格を取得し我が子と一緒に面倒を見ることも。3. 出産前の地位を保障
ママが子育てのために育休や一定期間のパートタイム労働を選択したのち復職した場合、以前と同じもしくは類似した雇用と報酬を保障することが法律で定められている。
Photo » Sophie ROBICHON(Mairie de Paris)
Text » RIE SUGITA
※FQ JAPAN VOL.40(2016年秋号)より転載