子供の運動神経・能力を伸ばす科学的アドバイス
2016/11/04
スポーツを限定せず
子供の本能と好奇心にまかせて
基礎的運動を習得する幼児期・児童期には、人間の持つすべての運動パターンが習得される。つまり、人間の生活に必要な運動のための幅広い土台を作る時期。専門化された運動の段階への移行が始まるのは早くても7歳以降。
体育科学センター体育カリキュラム作成小委員会の調査によると、2週間にわたって1日1時間の自由遊びの場面での幼児期の子供の動きを観察したところ、「走る」「掘る」「転がす」「引っ張る」「ぶらさがる」「くぐる」「こぐ」「投げる」など、じつに84ものパターンの動きが見られたという。これは大人が行う運動パターンのレパートリーをほぼ網羅する。つまり6、7歳頃までに大人と同レベルにまでに基礎的な運動能力が発達し、人間が生きる上で必要な運動の土台が築かれる。だから、早期から1つのスポーツに絞った習い事は、大きなリスクを伴うのだ。
「スポーツを限定して、もしその子の特性に合っていないと悲惨です。幼児期は、好奇心や関心によってもたらされる内発的動機づけが強い時。森には、子供の好奇心と興味を刺激するものがいっぱいです。多彩な地形が多様な運動を引き出します」。
親としてできることは、遊ぶ時間と場所の確保。なるべく毎日1時間以上の外遊びが理想だという。さらに、杉原教授は言う。
「人間は生まれつき、自分の能力を向上させたいという根源的な欲求を持っています。それを追求している行動が“遊び”なのです」。
【PROFILE】
杉原 隆 教授
東京学芸大学名誉教授。一般財団法人田中教育研究所所長。
主著書『幼児期における運動発達と運動遊びの指導~遊びのなかで子どもは育つ』(ミネルヴァ書房)他多数。
Text » MIKAKO HIROSE
FQ JAPAN VOL.39(2016年夏号)より転載