日本も見習いたい!子育て大国ドイツの制度
2016/11/18
父親は仕事、母親は育児という価値観が根強かったドイツ。しかし、この価値観を大きく覆す家族政策が次々に導入され、父親が育児に参加しやすくなっている。
2000年以降、
父親が育児参加しやすい制度が
次々に誕生
勤勉・実直(ドイツ国旗の黒は勤勉を示す)な国民性を誇るドイツ。日本人の気質とも通ずるところがあり、距離的には遠い国ながらシンパシーを感じる人も多いのでは。実は、ドイツでも、かつての日本と同じで、母親が家で子育てをし、父親は家族を養うために働くという風潮があった。女性の育児負担が大きいためか、2013年の合計特殊出生率は1.40*1で、同年に1.43*2だった日本並みに少子化が深刻であることがわかる。しかし、ドイツ連邦統計局の発表によると2014年の新生児数は10年ぶりに70万人を突破し71万5000人になった。
これは、2000年以降に進めてきた子育て政策が功を奏してきたことが一因といえる。育児休業制度が2000年に諸改正され、翌年には男性も育児休暇を取得しやすいよう名称が「親時間」へと変更された。さらに、2007年には定額の育児手当だったところを、育児休業もしくは育児のために部分休業する親の所得損失分を67%補てんする「両親手当」を導入。あわせて「パパ・クオータ制」の導入により、男性の育児休暇が格段に取得しやすくなった。
日本でも2010年に、育児休業期間を2ヶ月延長できる「パパ・ママ育休プラス」が導入されたが、父親の育児休業取得率は依然低いまま。与えられた権利を必ず行使するドイツ人を見習い、ぜひ日本の父親も大いに育児休業制度を利用してほしい。
*1 World Development Indicators(WDI), April 2016
*2 厚生労働省 人口動態統計
キーワードで見るドイツの育児制度
親時間
子供が満3歳になるまでの間に、合計3年間取得できる育児休業制度。完全休業だけでなく、週30時間内の時短就労も認めている。母親か父親のどちらか、もしくは両親ともに取得でき、雇用主などの同意があれば、最後の12ヶ月分は、子供が満3歳~8歳になるまでの間、再取得が可能。なお、2015年の法改正により満3歳から満8歳まに取得できる期間が、12ヶ月から計24ヶ月に延長された。
両親手当
2007年にパパ・クオータ制とともに導入された育児手当制度。それまでは受給金額が月額300ユーロと定額だったが、産前の平均賃金(手取り)の67%(ただし月額1800ユーロが上限)となり、実質的に引き上げられた。さらに2015年7月からは、受給期間を最高14ヶ月から28ヶ月に延長できる「両親手当プラス」が導入され選択可能に。両親手当プラスの受給額は両親手当の半額(上限)になるが、より育休を柔軟に取得できるようになった。
パパ・クオータ制
従来の育児休業期間・育児手当給付期間の延長ではかえって母親の職業中断を招き、共働き世帯の家計収入が激減するという懸念がある。そこで、それを避けるために2007年に導入されたのがパパ・クオータ制だ。母親に加えて父親も育休を取得することで、育休期間を12ヶ月間から14ヶ月に延長したのだ。さらに期間中は67%の所得を補償(両親手当)。結果、父親の育休取得率UP、母親の早期職場復帰率UPにつながった。
ドイツでは連邦休暇法によって、継続勤務期間が6ヶ月以上の労働者に対しては、1年につき24日以上の有給休暇を与えなくてはならないと定められおり、有給休暇が30日間ある企業が少なくありません。加えて企業の管理職は部下の有給休暇を完全消化させることが義務付けられているため、取得率はほぼ100%。この有給休暇を利用して夏の暑い時期にウアラウプ(夏休み)を満喫するドイツ人ファミリーも多いのです。
(東京ドイツ文化センター所長/ペーター・アンダースさん)