なぜ少子化対策は空回りするのか?
2015/08/11
育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏による月イチ連載コラム。今回のテーマは「なぜ少子化対策は空回りするのか?」。
「子供はいらない」という若者が増えている
厚生労働省の調査により、「子供はいらない」と考えている独身の若者が増えていることがわかりました。
子供を望まない独身の若者が10年間で増えている。厚生労働省が若者を対象に実施した調査で、2013年は希望する子どもの数を「0人」と答えた人が独身男性の15.8%、独身女性の11.6%。2003年調査では独身男性が8.6%、独身女性が7.2%で、いずれも数ポイント上昇した。
この数年、国を挙げて叫び続けている少子化対策、残念ながらまるで功を奏していないようです。
「なぜ?」
不思議なような、わかるような。もちろん「これが原因」なんて単純な問題ではありません。何をどうすればこの状況を良くすることができるかなんて、もちろん私にはわかりません。しかし、若者がどうして子供を持つことに前向きになれないのか、その要因をいくつかあげることはできそうです。
※情報元:「子どもいらない」独身の若者、増える傾向 厚労省調査(朝日新聞デジタル 2015年7月17日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH7H6GBCH7HUTFL00J.html
1. 育児世代の“闘争”が重い
育休をめぐる問題の数々、マタハラ、待機児童問題、夫婦の家事分担、電車の中でのマナーなど、子育てをめぐる話題はネットでも格好の炎上ネタです。それぞれの立場で自分たちの権利を主張する人たちの熱量が、近づきがたいオーラを放ってしまっていることが考えられます。「育児って、歯を食いしばって主張しないとできないことなんだ」という印象を、若者に与えてしまっている可能性はあります。育児世代が歯を食いしばらなくてもいいような社会になればそれがいちばんいいことなのですが、それもそう簡単なことではなさそうです。であれば、子育てのポジティブな側面を伝えるメッセージが、世の中にもっと増えるといいのではないでしょうか。
2. 自分のことで精一杯
株価こそ上がってきたものの、経済のグローバル化、世界情勢の不安定さなど、先行き不透明な時代が続いています。そんな状況では、なかなか子供を作ろうなんて思えないのも無理がありません。5年後、10年後に自分がどうなっているかすら見えないのですから。自分のことで精一杯なのですから。「稼げないのは自分が悪い」「子育ては人に迷惑をかけずにやらなければいけない」などの自己責任論が横行すればするほど、子供を欲しいという気持ちは萎えるでしょう。社会全体で子供を育てるという意識が高まることが大切です。でも現状を見る限り、これもハードルが高いですね。
3. 少子化対策のために子供を作ろうと思う人はいない
そもそも「このままじゃ人口が減っちゃって社会が保てなくてヤバイ」と言われている中で、子供を作ろうという前向きな気持ちが湧いてくるわけがありません。社会を支える人柱として自分の子供をもうけようと思う親なんて1人もいないわけですから。むしろ「少子化になってもこういうコンパクトな国に作り替えれば大丈夫」という絵が描けてこそ、若者も安心して子供を産もうと思えるのではないでしょうか。つまり少子化の危機を訴えれば訴えるほど、子供を欲しいと思う気持ちは萎える。逆に「少子化でも大丈夫」というメッセージを発すれば、むしろ出生率は上がるのではないかと思います。
とりとめのない話で恐縮ですが、今回はこの辺で……。
おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
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(2015.8.11up)