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イクメンはなぜ増えないのか?

2. 新米パパは「仕事の成果を維持しながら・・・・・・」なんて思わない

これから育児をはじめるということは、新規事業の立ち上げをするようなもの。今までの業務と併行して新規事業を立ち上げるなど至難の業。今までの業務については多少業績が悪化してもいいからと割り切り、新規事業のほうに軸足を移さないと、新規事業をうまくスタートできない。

だからいきなり「両立」を目指すのではなく、一度、育児もしくは家庭に軸足を置くという勇気が必要。いったん軸足を家庭において、そっちの足場をしっかり固めてからまた仕事に軸足を移せばいい。そうやって早く新規事業の足場を固めてから既存事業に戻れば、両立はしやすい。

ジャグリングのように、一度手放して、落ちてしまう前にキャッチすればいい。それを繰り返すことで、長い時間軸の中でバランスをとればいい。実際にそうしてみると、心配していたほどには仕事の成果も落ちないもの。「仕事での成果を落とさずに……」なんて手品みたいなことを言っているうちは、何も変わらないどころか虻蜂取らずになる可能性がある。

3. 「仕事にも役に立つから育児しよう」という理屈をやめる

「仕事に役立つから育児しよう」というセリフを聞くことが時々あるが、それも危険。仕事と家庭のことを対等に考えて判断できるようにならなければいけないのに、仕事に帰結する功利的動機付けでは、『仕事>家庭』という潜在意識からいつまでたっても抜け出せない。結果仕事にも活かせることがたくさんあるというのはわかるけど、そういうインセンティブ提示は逆効果を招く。

仕事での成果をダシにして、男性を育児・家事へと誘えば、たしかに即効性がありそうだ。しかしそれは「やっぱり男は仕事で成果を出してなんぼなんだ」という意識を強化しかねないし、仕事の成果にもっと直結しやすい別の方法が出てくれば、男性の意識はそちらに向かってしまうだろう。それこそ景気が良くなれば、育児や家事が不要となってしまう。

このような理屈は、単なる一時的な利益誘導であって、根本的に社会が変わったことにはならない。

以上。

これまでよく言われてきたこれらのかけ声はすべて、表面的には「もっと育児や家事しよう!」という正論でありながら、実は「仕事のほうが大事」という潜在意識の上に成り立っていたのである。言えば言うほど仕事優先の無意識をさらに強化する効果がある。アクセルを踏みながら同時にブレーキを踏んでいるようなもの。これ、もう、やめよう。

0407_01育児・教育ジャーナリスト
おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
>> おおたとしまさの著書一覧

●おおたとしまさ氏の記事 一覧
https://fqmagazine.jp/tag/fathers-eye/

(2015.7.7up)

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