その慈善事業、ブラック企業になっていませんか?
2015/06/15
ブラック企業にならないために
もしかしたら「おおたは金にうるさい」と思われているかもしれないが、しょうがない。「もし仮にこの料金で毎日仕事を受けていたら、私の年収はいくらになると思いますか? それで家族を養い、ローンを払い続けることができると思いますか?」と説明したくなるが、そこまではしない。
でも、本来、そういうふうにお互いの立場をみんなが想像しあえるようにならないと、24時間子育てに追われてついキリキリしてしまう親の気持ちや、本当はもっと仕事がしたいのに保育園のお迎えに行かなければいけない親の焦燥感、仕事と育児の両立で悩む親の立場なども理解できるわけがない。
そういう意味で、「世の中のパパやママたちを笑顔にしたいので協力してください!」と言いながら、手弁当の講演依頼をいただくと複雑な思いになる。
始めたばかりの事業でどうしても最初の資金がないから、1回だけ力を貸してほしいというような依頼なら、私も無下には断らない。
しかし、「世のため人のためなんだから、無料でやってくれて当たり前でしょ。次もよろしくね」という軽いニュアンスで来られると、「それのどこが世のため人のためなんですか? その理屈、ブラック企業といっしょでしょ」とツッコミたくなる。
ボランティアとして講演活動をしている人はまた別の話だろうけど、私自身がボランティアに裂ける時間は、地域ボランティアだけで現状いっぱいいっぱいだ。地域ボランティアの依頼も多いが、「これ以上は無理」と、今はすべてお断りしている。
執筆依頼も同様だ。今はたくさんのWebサービスがあるので、ときどきびっくりするような料金での執筆依頼がある。それも「世のお父さんやお母さんが笑顔になるようなことを書いてください」って、社会的意義は満点だ。
でも、「この料金で仕事をして、生活ができると思います?」という料金で私が仕事を受けていたら、世のお父さんやお母さんが笑顔になれるはずがない。ますます賃金が下がり、暗い顔になっていくはずだ。その矛盾に気づいてほしい。
ちなみに、金曜日の夕方に執筆依頼があり、「月曜日までに原稿をお願いします」みたいな仕事は論外だ。「パパにお勧めする家族との週末の過ごし方を書いてください」なんて言われると、あまりのブラックユーモアのセンスに感服してしまう。何かでトラブってしまって、どうしても助けてほしいというなら話は別。しかしそれを連続でやられたら、さすがにもう2度とそことは仕事しない。
でも待てよ。そこだけがんばれば1ヶ月くらい遊んでいてもいいくらいのギャラがもらえるなら、それは受けるかも……。やっぱり私はお金にうるさいようだ。ごめんなさい。
おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
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