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史上最大の伸び率!前年度比 約13ポイント上昇の30.1%の男性育休取得率。

2024年7月31日、厚生労働省委託事業「男性の育児休業取得促進事業(イクメンプロジェクト)」において、若年層に育休取得についての意識調査を実施。結果は、男性の約3割が「半年以上」の取得で「共育て育休」を希望という内容であった。本記事では、結果に関して、厚生労働省が実施した記者会見の内容もあわせてご紹介する。

メイン画像:会見に立った厚労省イクメンプロジェクト・フローレンス会長の駒崎弘樹(左)と、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役の小室淑恵氏(右)

 

 

<目次>
1.若年層の育休取得・働き方に対する意識を発信
2.男性の約3割が半年以上の育児休業の取得を希望!
3.調査結果
4.仕事と育児の両立のために職場や社会の意識を変える
5.男性の積極的な育児参加を! 「イクメンプロジェクト」の提言

 

若年層の育休取得・働き方
に対する意識を発信

認定NPO法人フローレンス(本社:東京都千代田区、代表理事:赤坂緑)の会長・駒崎弘樹は、2010年のイクメンプロジェクト発足時よりイクメンプロジェクト推進委員会の委員として活動し、2013年よりイクメンプロジェクト座長を務めている。男性育休の啓発とともに、男性産休創設、男性育休義務化に向けた政策提言を長年行ってきた立場から本結果についてこう語る。

『若年層における育児休業等取得に対する意識調査』においては、若年層の育休取得や働き方に対する意識を明らかにし発信することで、特に男性の育児休業取得への社会的機運を高めるとともに、中小企業における育児休業取得促進、若手人材の確保・定着を図っていただきたいと考えている」。

今回実施された、雇用均等基本調査においては、男性の育児休業取得率が令和5年度は30.1%に達し、過去最高の伸び率を記録した。

資料:厚生労働省「雇用均等基本調査」(※)2014年度調査においては2012年10月1日から2013年9月30日までの1年間。(注) 2015年度の比率は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果。

 

 

男性の約3割が半年以上の
育児休業の取得を希望!

今回の、会見に先立って今年6月に実施された本調査では、8000人弱の全国の若者の声を広い、学生若年層の働きがいの傾向が明らかになった。(※)
※本調査の内容は、「厚生労働省委託事業「イクメンプロジェクト」」より転載したものである。

【調査概要】

調査手法: WEB定量調査
調査期間: 2024年6月22日(土)~2024年6月25日(火)
調査対象: 全国の18歳~25歳の男女 高校生・大学生などの学生若年層
サンプル数: 7,840件(スクリーニング調査)、2,026件(本調査)

【調査まとめ】

●若年層は77.9%が仕事とプライベートの両立を意識。また、「仕事と育児も熱心に取り組みたい」男女はほぼ同率の結果に

●若年層の育休制度の認知度は男女ともに9割近い結果。育休を取得するに当たって希望する期間は、長期間の育休取得の希望が高い傾向に

●就職活動において「男性の育休取得実績」を重視していることが伺えた

●就職活動にあたって、「企業からどのような結婚や出産に関わる情報があると就職したい気持ちが高まるか」という問いに対して、「男性の育休取得率」と回答した割合が3割超。

●男性が自身の働き方を考える以上に女性は相手の働き方が結婚、子育てを考える上での鍵だと考えていることがうかがえる結果となった。

 

仕事と育児の両立のために
職場や社会の意識を変える

今回の調査結果から、若年層が非常に高い割合で育児休業制度があるということを認知し、かつ積極的に取得したいと考えていることが分かった。

特に注目すべきは、希望の育児休業期間を聞いた設問に、男性の3割が「半年以上」という回答をした点だ。
つまり若年男性の9割が取得したい「育休」とは、現状の職場では大半である、数週間の「取るだけ育休」ではなく、数か月以上を前提とした「共育て育休」だということである。

人手不足の労働市場において、若年層がそのような意向を持っているということは、企業側は働き盛りの男性が数か月単位で抜けても仕事が回る職場を、常日頃から作る必要があるということだ。

働き盛りの男性が数か月単位で抜けても仕事が回る職場とは、どのような職場だろうか?
人が休むと回らない職場とは以下のような職場である。

●雇用をギリギリの人数に抑え、いざという時は残業で調整する。育児中・介護中などの残業できない社員は冷遇する。長時間可能者が評価・報酬を得るので男女の賃金格差は縮まらない

●人海戦術で解決するので、デジタル投資しない。

これを踏まえて取り組むべきは以下のようなことだ。

2019年から努力義務となっている勤務間インターバルを導入することなどに挑戦し、仕事の属人化を解消する。

●常日頃から「一人多く」雇用するようになり、週3勤務や、短時間勤務を積極的に採用・評価し、非正規の正規化を進める→時間内の仕事で評価され、男女の賃金格差が埋まる

人海戦術では残業が多くなるのでデジタル投資が促進される
 

男性の積極的な育児参加を!
「イクメンプロジェクト」の提言

「2023年度 厚労省イクメンプロジェクト調査」において、職場全体で働き方改革を実施している企業は男性育休取得日数が約2倍でした。その職場だけを支援しても日数は増えなかったことから、組織全体での働き方改革をすることが重要であることが分かる。

そのために重要なのが「均衡割増賃金率」。
時間外に労働させた場合に経営者が平日時間内労働の何倍支払うべきかを定めているものであり、日本においては1.25倍と定められている。その割増賃金率がいくつであれば、今いる従業員に残業させる1時間当たりの労働費用と、新たな雇用をした1時間当たりの労働費用が均衡するか理論上試算したものである。

産業別労働組合JAMの2020年の試算によれば53%であり、つまり時間外割増率が1.53倍であれば経営者には、今いる人材に残業させるよりも人を増やしたほうが安いことになるので、常日頃から追加人材を雇っておくインセンティブが発生する。逆に言えば現状の日本の1.25倍の割増賃金率は、ギリギリの人材しか雇用せず、残業で解決するほうが経営者が得をするようにできている。他の先進国では、平日時間外の割増賃金率は1.5倍である。

現在、日本で働くビジネスパーソンの多くが「自分が休んだら職場が回らない、だから休めない」という苦しさを感じている。
職場全体がそのような高ストレスの中でギリギリで働かされているからこそ、「子持ち様」というような反発が強くおこる。「ギリギリ人員の頑張りと踏ん張りで耐え抜く職場」から、「頭数多めで、お互いの急な休みは想定済・お互い様の職場」を増やしていくことが重要である。

そうした日本社会を実現できなければ、個々の企業が選ばれないだけでなく、若者に日本で働くことを選択してもらうことはできないだろう。今回の「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」の結果なども踏まえつつ、経営者等の意識をかえていく必要があるだろう。
 

 

調査結果詳細

 

若年層が希望する働き方は、「仕事とプライベートを両立」するスタイル

「新卒で入社をする会社を選ぶ際に、将来の仕事(キャリア)とプライベートの両立を意識していますか」の問いに対し、77.9%(男女合計)が両立を意識していると回答。男女別では、男性の76.8%、女性の79.1%が、仕事とプライベートを両立できる働き方をしたいと思っていることがうかがえる。

「社会に出た後の働き方について、何に働きがいを感じるか」の問いに対しては、「仕事もプライベートも両立する」(91.2%)、「定時であがる/休みは取得するけれどもその時間内は密度濃く仕事をする」(87.2%)の順に多く、仕事もプライベートも両方大事にしたいと思っていることがうかがえる。
また、「仕事も育児も熱心に取り組む」意向については、87.0%が「そう思う」と回答。男女別では、男性87.9%、女性85.9%と、「仕事も育児も熱心に取り組む」意向に、男女差はみられない結果となった。
これらの結果から、若年層が希望する働き方とは、「仕事もプライベートも両立」できるスタイルであることが明らかになった。
 

若年層の育児休業制度の認知度・取得意向は、ともに約9割


「育児休業制度」の認知度について、若年層の92.4%が「知っている」と回答している。男女別でも90%以上が知っていると回答し、非常に高い結果となった。「育児休業制度」の認知度を他の制度と比較した場合においても、若年層の90%以上が「育児休業制度」を認知しており、認知度が最も高い「年次有給休暇」(92.8%が知っていると回答)との差も僅か0.4ptであった。


また、若年層に「自分自身は育休を取得したいか」と尋ねたところ、「取得したい」が87.7%と9割近い結果になった。男女別では、女性91.4%、男性84.3%と、多少の男女差はあるものの、男女ともに9割程度の若年層が、育休取得意向がある結果となった。

さらに、「配偶者に育休を取得してもらいたいか」の意向を尋ねると、88.6%が「配偶者に育休を取得してほしい」と回答しており、男女問わず、若年層の育休取得への意向の強さが明らかとなった。

「育休の取得希望期間」については、男性の29.2%が「半年以上」と回答し、「1年以上」の回答も16.0%、「1か月~3か月未満」が25.3%と、若年男性の希望する育児休業期間は比較的長期であることが明らかとなった。
 

就職活動においても、企業における男性の育休取得実績を重要視

「就職活動にあたって企業選定における育休取得情報の影響度」を尋ねたところ、69.7%の若年層が影響があると回答。男女別では、男性63.3%、女性76.7%が影響があると回答し、女性の方がやや重要度が高い結果となった。
また、男性の育休取得情報の影響度について、「仮に男性の育休取得の実績がない企業があった場合、その企業に就職したいと思うか」と聞いたところ、61.0%が「就職したくない」と回答。男女別では、男性57.3%、女性65.1%となり、男女問わず半数以上が、企業における男性の育休取得実績を重要視していることが明らかになった。

 

育休取得率が高い企業に対して、ポジティブなイメージを持つ傾向


就職活動において、「どのような結婚や出産に関わる情報があると就職意向が高まるか」聞いたところ、「男性の育休取得状況」が33.4%と最も高く、育休取得の情報が、若年層の企業選びにおいて重要視されていることが明らかになった。


また、「育休取得率が高い企業に対するイメージ」については、「安定している企業」(41.5%)、「社員想いの企業」(39.3%)、「休日・休暇の多い企業」(28.4%)、「先進的な企業」(22.6%)、「若手が活躍できる企業」(21.5%)と続き、育休取得率が高い企業に対しては、ポジティブなイメージを抱いていることが明らかになった。

 

結婚と子育てのハードルは「お金の問題」が最も高く、意識に男女差が見られるハードルも

調査時点で結婚の意向がない若年層に対し、「結婚のハードル」について質問したところ、「お金の問題」が53.9%と最も高く、次いで「結婚相手の働き方」(42.2%)、「自分の働き方」(36.9%)という結果になりました。男女別の回答結果では、第2位の項目に違いがみられ、男性は「お金の問題」(55.9%)に次いで、「住居の問題」(39.0%)という回答が多かったのに対し、女性は「結婚相手の働き方の問題」(46.5%)が「お金の問題」(51.8%)に次いで多い回答結果となった。

調査時点で子どもを授かることについての意向がない若年層に対し、「子育てのハードル」について質問したところ、「お金の問題」が56.7%と最も高く、次に「結婚相手の働き方の問題」(36.1%)、「自分の働き方の問題」(35.9%)と、ライフイベントの共通課題が明らかとなった。

男女別でみると、男女ともにトップは「お金の問題」(男女とも56.7%)でした。男性は「お金の問題」に次いで、「結婚相手の働き方」(36.4%)、「住居の問題」(35.1%)であるのに対し、女性は「自分の働き方」(39.7%)、「結婚相手の働き方」(35.8%)という結果となり、男女でハードルと感じる問題に差があることがわかった。
 

 

DATA

「イクメンプロジェクト」

育休制度見直しと合わせ、社会全体で、男性がもっと積極的に育児に関わることができる一大ムーブメントを巻き起こすべく、2010年6月に発足し、以降、様々な活動を展開。今後「イクメンプロジェクト」では、新たな制度である産後パパ育休や企業の取り組みなどが社会に浸透・定着し、あらゆる職場で男性が育児休業を取るのは当然、となることを目指している。

認定NPO法人「フローレンス」
「こどもたちのために、日本を変える。」フローレンスは、子育てと仕事の両立、そして未来を担う子どもたちを社会で育むために、事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で社会課題の解決や価値創造の構造に働きかけ、たくさんの仲間と共に「新しいあたりまえ」をつくる、国内有数の認定NPO法人。
日本初の訪問型・共済型病児保育事業団体として2004年に設立され、待機児童問題解決のための「おうち保育園」モデルが、2015年度に「小規模認可保育所」として国策化されたほか、障害児に専門的に長時間保育を提供する日本初の「障害児保育事業」や、子どもの虐待問題解決のため「赤ちゃん縁組事業」、子どもの貧困を解決する「こども宅食事業」などの取り組みを加速している。

問い合わせ

イクメンプロジェクト
フローレンスコーポレート

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