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子どもの『好き嫌い』は学びのチャンス?専門家が教える、親子で取り組む食とSDGs

子供も大人も生きるうえで欠かせない「食」。SDGsの観点で考えると、様々な難しい課題を抱えている。食とSDGsを考えるうえで、子供にどう話をしていけばよいのだろうか。SDGs支援機構事務局長の深井宣光さんに解説してもらう。

多様性を理解することから
課題解決への取り組みがはじまる

わたしたち人間が生きるうえで欠かせない「食」は、SDGsにおいても多くの難しい課題を抱えています。それゆえに、学びを深めるにはとてもいいテーマになります。今回は、「食」を扱ううえで避けて通れない「なぜ食べていい動物とダメな動物がいるのか」という問いについて考えてみたいと思います。

多くの日本人は、牛や豚、鳥、魚介類といったさまざまな生き物を食べています。しかし、猫や犬は食べませんし、食べるなんて可哀そうと思う方もいるでしょう。この違いはなんでしょうか。まず、はじめに認識として持っておくべきことは「正しさは存在しないこと」です。事実、犬や猫を食べる文化の国もありますし、宗教上で牛や豚を食べない人もいます。このように、食べていい生き物の唯一の基準はどこにも定められておらず、人間も自らが生きるためにある種の残酷性を持って捕食し、食物としています。

この前提を知っておかないと、自らの主義を正当化し、違う価値観を認めることができません。例えば、ヴィーガン(完全菜食主義者)は、動物を傷つけず、環境負荷の軽減にもなると注目を集めています。しかし、植物にも感情や知性、記憶力などがあるという研究もあり、「傷つける」とは何か? という議論もしばしば起こっています。このように、一方の主義主張を展開するだけでは議論は先に進まず、最後には必ず争いが生まれます。だからこそ、課題解決に取り組むためには、多様性を認めることが必要なのです。

解像度を高めることで
本質的な課題解決へ

子供と考えるときには、「なぜ・どうして」を問いかけることが重要になります。経験が不足している子供は食卓で出てくる牛肉を見ても、どのような過程でスーパーに並ぶ「食肉」になるのかイメージできません。この間の部分を補い、知識の解像度を上げるのです。

「どうしてこんな形になったと思う?」「なんで牛さんは食べてもいいのかな?」など、問いを投げかけて返ってきた答えに対してまた質問をしていきます。こうしたプロセスを経て課題に対する解像度を上げることで、「命をいただいているから大切に食べなきゃいけないし牛さんも辛くないのがいいよね」と理解し、「フードロス」「アニマルウェルフェア」という問題にたどり着くことができます。こうして身につく課題発見能力は、子供の生きる力を育みます。

逆に解像度が低いままだと、本質にたどり着けないこともあります。例えば、子供の頃に好き嫌いをすると「世界には食べられない人もいるんだよ」と言われ、ピンとこなかった経験はありませんか? しかし、「日本の子供の7人に1人が食べ物で困っている」と言い換えたらどうでしょうか。学校の友達のなかにもいるかもと思い、他人事ではなくなります。

また、好き嫌いの理由も解像度を上げると課題が見えてきます。トマトが嫌いな子供であれば、その要因は味なのか食感なのか。食感がダメならすりつぶしてあげる、味が嫌なら甘く調理してみる。そもそも栄養を取ることが目的なら、トマト以外の食材を選ぶこともできます。

こうして争いを減らしていければ、家族みんなが笑顔で過ごせるサステナブルな毎日を実現できるでしょう。

SDGsとは?

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際社会共通の目標。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された。地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓い、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されている。

【まとめ】
●正しさはないという前提を持って多様性を受け止める
●課題の解像度を上げて、本質的な課題解決に取り組む

PROFILE

深井宣光


(一社)SDGs支援機構事務局長。SDGs専門メディア「SDGsジャーナル」を運営。専門知識ゼロでもわかるやさしい言葉で伝え続け、わかりやすいだけでなく行動を喚起する解説者として注目を集めている。講演/研修、TV出演、執筆、監修など多岐に渡って活動を展開。現在2児の父。著書にベストセラー書籍「小学生からのSDGs」。

著書

SDGsビジネスモデル図鑑
社会課題はビジネスチャンス


(出版/KADOKAWA)

本コラムにて登場いただいている、SDGsジャーナル深井宣光さんの最新作。社会課題をビジネスで解決している起業家たちの「成功法則」を解明したSDGsビジネス書。急成長を遂げているスタートアップ企業のビジネスモデルを図解で解説し、ビジネスチャンスの可能性が見えてくるパパ必読の一冊だ。


FQ JAPAN VOL.66(2023年春号)より転載

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