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インタビュー

クリス・ハートが銭湯で熱唱? 映画初出演を果たした“スーパーパパ”の子育て術

「日本で子育てできて、本当によかった」日本人以上に日本の心を深く理解する3児の父、クリス・ハートさん。2018年には活動を一時休止して、子育てと米国バークリー音楽大学で作詞作曲とボーカルを学ぶなど、育児&仕事の両方を謳歌する。子供の「スリープトレーニング」やママへ贈る「ステイケーション」など、いますぐ真似したいクリス流子育て&夫婦コミュ術をうかがった。

奇跡の歌声と称賛される
アーティストの
銭湯で歌い上げた美声に感涙

2月23日(木・祝)公開の映画『湯道』に、映画初出演をし、銭湯シーンで圧倒的な歌唱力で『上を向いて歩こう』を歌い上げたのは、奇跡の歌声と称賛されるクリス・ハートだ。

その透明感ある美声は空を突き抜け、観る人の心にじんと沁み入る。天童よしみさんと壁ごしでのハモりは、リハなし本番ワンテイク。息ぴったりのハーモニーが銭湯いっぱいにエコーし、感動で涙がこぼれそうになって思わず上を向く人も多いだろう。

「日本の銭湯文化って、本当にすごい。僕は銭湯好きですが、デビュー後はちょっと恥ずかしくて、なかなか行けなくなって(笑)。だけど今回、銭湯で美しい富士山の絵をバックに『上を向いて歩こう』を歌い、あらためて銭湯が持つ力を実感しました」。

クリスさんは、現在38歳。1984年8月25日、アメリカ・サンフランシスコでアフリカ系アメリカ人のミュージシャンの両親の元に生まれ、中学のときに日本の文化に興味を持つ。13歳の夏休みに新潟で2週間ホームステイし、そこから日本がクリスさんの全てになった。大学で日本語を専攻し、2009年、26歳のときに日本に移住する。

そして、10年前の2013年、歌手としてメジャーデビューし、日本の名曲を歌うカバーシリーズが累計100万枚を突破し大ヒットした。

湯船からお湯が溢れ出るように
銭湯で心が満たされる幸せ

「映画の見どころは、そうですね、それぞれ一人ひとりいろんなことをみんな抱えていて、その人間ドラマに涙と笑いがあります。銭湯という場がみんなの居場所(コミュニティー)になっているんですね。がんばった1日の終わりに、湯船に浸かってゆっくり足を伸ばし、銭湯に来た客とおしゃべりしていると、そこにいるすべての人に共通する1つの原風景に繋がるような懐かしい感覚になります

クリスさんは、かつて代々木公園で出会ったグループと意気投合して福島へキャンプに出かけ、旅の最後に仲間たちのサプライズによる初銭湯で感動した経験を持つ。

「なんにも考えずに銭湯でみんなと同じ空間で過ごすと、文化も人種も国籍も関係なくて、同じ1つのリズムで音を奏でるような、そんな一体感に包まれます。一緒にいる時間は長くないのに、同じお風呂に入るだけで距離が縮まって、それまでの人生がぎゅっと詰まった濃い時間が共有できるのです。湯船に浸かると、『あぁ、生きててよかった〜』と感謝の気持ちが溢れてくる感じ、ありますよね。ほら、湯船いっぱいのお湯に入ると、お湯がざーっと溢れていくみたいな。映画でも日本人特有のこの入浴カルチャーがしっかり描かれています。日本の入浴文化を世界中の人に知ってもらいたいと思いました」。

入浴文化だけでなく、日本の子育て環境についても、「日本で子育てができて本当によかった」と語る。

「アメリカは出産後すぐに家に戻され、ママになる準備もパパになる準備もまったくできません。だけど、日本には健康保険があって、妊娠中は毎月のように検診があって本当に安心でした」。

「スリープトレーニング」という名の特訓
あえて厳しすぎる父親を
演出する理由とは?

「僕はあえて厳すぎる父親を演出しています。そうすると子供たち3人の団結力が強くなりますからね」。

とはいえ、日本人にとって「ちょっとそれは厳しすぎるのでは?!」と驚いたトレーニング法がある。それが「スリープトレーニング」だ。

ママが側にいなくても自分1人で寝れるようにする特訓です。そうするとママも夜ちゃんと寝られて身体が楽になります。長男は2週間で、いま3歳の長女のときは3日で寝られるようになりましたよ」。

子供が泣くとすぐに行って抱っこしてやりたくなるが、そうすると子供は泣けばママ・パパが来ると学んでしまう。スリープトレーニングでは、泣いてもベビーモニターを見ながら様子を見て、10分くらい経ってから『だいじょうぶだよ』と声をかけて部屋を出て、寝つくまでそれを繰り返す。

「そうすると僕もママも自分の時間が作れます一緒に子供と添い寝したい気持ちもありますが、そうすると子供のリズムに振り回されるので、できる限り別々に、それぞれのリズムを大切にするのです。だからお互いストレスがない。子供が寝た後は、夫婦2人でおしゃべりしたり、お酒を飲んだり、自分の仕事をする時間が作れます。3歳の娘は、8時になると眠いから寝るねー、と自分なりのリズムで生活しています」

ママをステイケーションに出して
1人で子育て。それが最高のセラピー

いまクリスさんの仕事は、ほとんどが自宅のスタジオでのリモート。料理が得意な主夫として大活躍する。

「いま僕はフルタイムパパのアーティストです。3人の子供たちのそれぞれの習い事の送迎は、電動アシスト自転車がないと無理無理(笑)! 料理も、ハンバーグからパスタ、いろいろ作りますが、スチームウォーマーがお勧めです。野菜や魚、肉など、毎日そこに放り込むだけ。離乳食もこれで乗り切りました」

そして、子供たちの三人三様の食べ物の好き嫌いに、世の中のママの大変さをあらためて実感する。

「こっちはピーマン、あっちはチーズ、そっちはグリンピースが大きらいだけど、こっちは大好きといった具合にみんな好みがバラバラの超カオス。スチームウォーマーでミックスベジタブルを蒸したときは、娘の苦手なグリーンピースを1粒ずつ箸で全部取り除き、これを日々やっているママたちの大変さをよく理解しました」

そんなクリスさんから見ると、世の中のパパたちが何をしても褒められることに不満を感じている。

「ちょっとオムツを替えただけでエラいと褒められる。すると “俺はスーパーパパだ” みたいに勘違いします。むしろ世の中のママたちをもっともっと褒めるべきです。ママがやるのが当たり前ではなく、ママが頑張っていることをパパはちゃんと褒めなきゃダメ。やってもらったことにちゃんと感謝しないと、誰でもモチベーションが下がっちゃいます

クリスさんオススメのママへの感謝法は「ステイケーション」。毎月1回、ママを家事と育児から開放するため、ホテル宿泊のプレゼントを贈る。その間はクリスさんが子供たちの世話をするそう。毎月毎月、子供3人を1人で見るのは大変ではないのだろうか。

「逆にすごい楽。すごい幸せな時間。仕事を忘れて子供と過ごすことは、僕にとって効果抜群のセラピーです。ママは家にいると、家事のこと・子供のことがつい気になっちゃうから、完全に家から離れてマイタイムを作ってもらうのです。それはパパが成長できるチャンス。子供を1人で見ると、子育ての良さがすごくよくわかります。仕事と全然違うリズムだからね。仕事が忙しいときこそ、仕事からちょっと離れて子供と一緒に過ごす。その時間が本当に幸せです」

これが正真正銘の “スーパーパパ” と言えよう。
 

DATA

映画『湯道』
2月23日(木・祝)全国東宝系にて公開


“お湯”を愛する全ての人々へ、心も身体もシットリ感動!
“湯”一無二のお風呂エンタメにドップリ浸かる!!
『おくりびと』小山薫堂 ✕『マスカレード』シリーズ制作陣 ✕ 超豪華出演者

亡き父が残した実家の銭湯「まるきん温泉」に、建築家の長男・三浦史朗(生田斗真)が突然戻ってきた。帰省の理由は、銭湯を切り盛りする弟の悟朗(濱田岳)に古びた銭湯を畳ませ、マンションに建て替えることを伝えるためだった。実家を飛び出て都会で気ままに生きる史朗に反発し、冷たい態度を取る悟朗。ある日、ボイラー室でボヤ騒ぎが起こり、巻き込まれて入院した悟朗に代わって、史朗は「まるきん温泉」の看板娘・いずみ(橋本環奈)の助言のもと、銭湯の店主として数日間過ごすことになる。いつもと変わらず暖簾をくぐる常連客、夫婦、親子連れ。別け隔てなく一人ひとりに訪れる笑いと幸せのドラマ。そこで様々な人間模様を目の当たりにした史朗の中で、凝り固まった何かが徐々に解されていくのであった・・・・。

『おくりびと』で脚本を務めた小山薫堂が提唱する、日本人の入浴に対する精神をつきつめた“湯道”。湯に向かう姿勢「感謝の念を抱く」「慮(おもんぱか)る心を培う」「自己を磨く」という3つの核に、企画・脚本化し、『HERO』『マスカレード』シリーズのスタッフ陣が制作した人間ドラマ。

企画・脚本:小山薫堂(『おくりびと』)
監督:鈴木雅之(『HERO』シリーズ、『マスカレード』シリーズ)
音楽:佐藤直紀
出演:生田斗真 濱田岳 橋本環奈
小日向文世 / 天童よしみ クリス・ハート 戸田恵子 寺島進
厚切りジェイソン 浅野和之 笹野高史 吉行和子 ウエンツ瑛士 朝日奈央
梶原善 大水洋介 堀内敬子 森カンナ 藤田朋子 生見愛瑠
吉田鋼太郎(特別出演) 窪田正孝(特別出演) 夏木マリ 角野卓造 柄本明

©2023映画「湯道」製作委員会

 

PROFILE

クリス・ハート

1984年生まれ、米サンフランシスコ出身。2012年、TV番組「のどじまん ザ!ワールド」に出演し優勝。2013年にユニバーサルミュージックよりデビューシングル「home」にてデビュー。カバーアルバム『Heart song』シリーズは累計100万枚を突破する大ヒットシリーズとなっている。2023年、メジャーデビュー10周年を迎え、『湯道』で映画デビューを果たす。3児の父。
 


写真/松尾夏樹
文/脇谷美佳子

 

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