子供たちが巣立った後どう過ごす?空っぽの巣を愛で満たす里親になるという選択
2022/12/28
子供たちが家から巣立っていく。それは親にとっての人生のターニングポイントであり、祝われるべきもの。新しい門出に立つ子供たちの活躍を誇りに思うのと同時に、とても寂しく、喪失感と悲しみを伴うものだ。では、長年の子育てのスキルと経験を生かして、何ができるだろうか。
里親になることを選んだ
キム&キャロンジョーンズ夫妻
子供たちが巣立ち、仕事も勤め終った後、自立した生活を取り戻した私たちには、常に欠けているものがあるように思えました。そんなとき、隣人から里親になることを勧められたのです。彼らは里親の生活を、とても気に入っていました。そこで私たちは、ナショナル・フォスタリング・グループ(NFG)に連絡を取り、詳細を調べることにしました。手続きには6ヶ月ほどかかりましたがNFGは非常に親切で協力的でした。
こうして、里子として迎えられたダニエルとの暮らしが始まりました。彼は自閉症で、ほとんど言葉を発せず内向的でした。目を合わせることも自分の身の回りのこともできません。家族から引き離され、必要なサポートを受けられない介護施設に預けられ、転々としたそうです。自分の人生をコントロールできず、次に何が起こるのか、どこで暮らすことになるのか、まったくわからない状態でしたから、当然、不安や怒りも大きかったのでしょう。
しかし、彼はサッカーが大好きでこれが突破口となりました。私はリバプールのサポーター、彼はマンUのファンでした。クラブはライバルですが、フットボールは私たちが関係を築くために必要な共通項となってくれました。ダニエルに必要だったのは、しっかりとした基礎と愛情だけだったのです。
私たちはダニエルを特別教育施設(STF)のある学校に入学させました。施設はとても良い対応をしてくれて、卒業後は大学に進学しました。現在は、レンガ職人としての見習いを終え、車の運転も学んでいます。彼は18歳になり、正式に里親を離れましたが、「When I’m Ready」スキームの一環として今も私たちと一緒に暮らしています。
物語はこれだけでは終わりません。ダニエルが14歳のとき、弟のライリーが来て一緒に暮らさないかと言ってきたのです。ライリーは12歳で、ダニエルと同じような経験をしていました。彼もまた自閉症で、自尊心が非常に低く、自分の面倒を見るのに苦労していました。そしてまたもや、スポーツがカギだったのです。
ライリーはとても運動神経がよく、意欲的で、競争心があり、アウトドアと、クリケットが大好きな少年です。私たちは彼をダニエルが通っていた学校に入学させました。すると、たちまち才能を開花させ、ウェールズ障害者クリケットチームと町内の17歳以下のチームで選手としてプレーし、リーグとカップの2冠を達成しました。あの内気で心配性な12歳の子が、自信に満ち溢れたスポーツマンになるなんて、誰が思ったでしょう。ただ、彼には信じてくれる人が必要だったのです。
ダニエルとライリーは、私たちの生活に大きな変化をもたらしてくれました。私たちの家には、子供が巣立った後に欠けていた愛とエネルギーが再び満ち溢れています。二人が成長し、歩みを共にする姿を見るのはとても嬉しいことです。里親になることは、社会に積極的に貢献することです。里親ができることは若者が未来を変えることを助けること。もしあなたの心と家にスペースがあるならば、里親になってください。人生の新しい章を始め、空いた巣を愛で満たしてください。
文:kim Jonns
FQ JAPAN VOL.64(2022年秋号)より転載