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『悪いことするとオバケが来るよ』はNG⁉精神科医・香山リカが教える正しい叱り方とは

親が子供を叱らなければいけない場面は、育児の中でたくさんあります。そんな時、親はどのように叱ればよいのか? 精神科医の香山先生に聞いた。

<事例>
35歳男性
長男(3歳)・長女(1歳)・妻との4人暮らし

長男が物心がついてきて悪戯や危ない遊びなど叱らないといけないケースが増えてきました。同じことを繰り返すので良くないとはわかっていてもつい感情的に叱ってしまうこともあります。親として、どう叱るのが正しいのでしょうか?

正しくない叱り方は
大人になっても影を残す

パパやママが子供を叱るのには、色々な理由がありますよね。小さな子供であれば、いたずらをしたり、してはいけないことをしてしまったり。また、子供が少し成長した後になっても、学校の試験の成績が悪かった、毎朝きちんと起床せず学校に遅刻する……などなど、叱らねばならない場面はいくらでもあります。そんな時、親はどのように叱れば良いのでしょうか?

本題に入る前に、私が診察室で診ている患者さんのお話をしましょう。患者さんの中に、子供の頃に『正しくない叱り方』をされた方がいらっしゃいます。お話を伺っていると、子供の頃に叱られた経験がトラウマとなり、それが大人になっても影を残している場合があるのです。具体的に行為を叱るのではなく、子供自身の人格や性格に結び付けて叱られた場合や、存在を否定するような叱られ方は、子供の後の人生に悪影響を与えているようです。

そこから分かるのは、『正しくない叱り方』です。例えば、「だから何をやってもダメなんだ!」・「こんな子ならいらなかった!」といった叱り方は厳禁です。また、兄弟姉妹と比較することも劣等感を植え付けてしまうのでNG。日本では昔から見られる、『悪いことをすると鬼やオバケが来る』といった恐怖の対象をつくることもトラウマを生み出すきっかけになることがあるので注意が必要です。

その場で起きた具体的な行為そのものを指摘すること。人格や性格、存在意義まで含めて叱らない。それが叱るときの鉄則と言えます。

感情的に叱らないために
第三者的視点を持つ

当然のことながら、親は感情のはけ口として子供を叱ってはいけません。親と子には、圧倒的に力の差があります。子供よりも遥かに身体も声も大きいパパ&ママに叱られるのは、子供にとってはショックな出来事であり、物凄い恐怖心を抱かせます。それを常に意識しましょう。

私達大人もストレスの多い生活をしていますから、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んで、それを子供に対して吐き出してしまう場合もあります。子供を謝らせることで自己承認の気持ちを得てしまう、ということがある。支配欲、つまり子供を自分に服従させることで自分の欲求を満たすような叱り方は、絶対にしてはいけません。それを防ぐには、自分のなかに第三者の目を持って、怒っている自分をチェックすることが重要です。

また、子供の年齢や状況によっては、叱られる理由を理解してもらえないこともあります。この時、分かってくれないことに腹を立ててはいけません。例え話をいれてみるなど、伝え方を変えてみると良いでしょう。それでも分かってもらえないときは……一時的に諦めてしまいましょう。

子供の思考力や理解力は、時と共に発達します。今言って分からないことでも、一ヶ月後や一年後に、分かるようになるものです。今わからないから駄目だ、ではありません。時間をおくことで成長を待って、もう一度伝えてみましょう。その時に理解してもらえたら、それは子供が成長した証。親冥利に尽きる瞬間ではないでしょうか?

まとめ
●具体的に、行為そのものを叱るのが鉄則
●人格否定や比較、トラウマのきっかけとなる叱り方はNG!
●第三者の視点を持って叱っている自分を確認する

PROFILE

香山リカ

東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、様々なメディアで発信を続ける。『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など著書多数。


文:川島礼二郎

FQ JAPAN VOL.64(2022年秋号)より転載

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