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インタビュー

アグネス・チャンが語る絵本の効果とは? 子供の自己肯定感を高める読み聞かせメソッド

多彩な使い方ができる絵本は、親子のコミュニケーションの幅を広げ、子供のさまざまな力を育んでくれる。アグネス・チャンさんも絵本の力を深く信じており、この春、自ら手がけた絵本を発表した。本書にかけた思いと、実体験に基づいた絵本の効果をお話いただいた。

“無条件で愛している”と
子供に伝えるのが大切


1972年に「ひなげしの花」で華々しく日本デビューし、一躍人気歌手となったアグネス・チャンさん。以降、歌手活動を続けるかたわら、米国スタンフォード大学で学ぶなどし教育への造詣を深めてきた。また、子育てにまつわる体系的な知識と自らの子育ての経験を生かし、現在にいたるまでに教育の本をいくつも出版している。

しかし、今回発表した「アグネス・チャン 親子で読む絵本」シリーズは、これまで手がけてきた書籍とまったく毛色が異なる。本シリーズは、アグネスさんが手がけた初の絵本であり、絵本に描かれている絵と物語は、アグネスさん自身が手がけている。絵本を手がけることになった経緯を、アグネスさんはこう振り返る。

「新型コロナウイルスが流行するなか、たびたび香港にいる母の見舞いに行っていました。香港から戻った後、14日間の待期期間をひとりで過ごしていましたが、その間はあまりすることがなくて。でも、子供の頃、絵を描くのが好きだったことを思い出し、水彩画を描きはじめました。描いた絵をSNSにアップしていたら、絵本の編集者の目にとまり、このシリーズを作ることになりました」。

絵本を作るにあたり、アグネスさんがとくに留意したのはテーマ。考え抜いたすえ、「親子の信頼関係」をテーマに据えたそう。その背景には、多くの子供に見受けられる行動と心理がある。

「2歳を迎える頃から、子供は驚くような行動をとるようになります。その一つが、です。でも、嘘をつくという行動の裏にあるのは、『パパやママの愛情を失いたくない』という気持ちです」。

だからこそ、パパやママが無条件で愛を注げば、子供は嘘をつかなくなるという。

「子供が間違ったことをしても、テストで0点を取ったとしても、親の愛は変わらないはず。子供が小さい頃から『あなたが間違ったことをしてしまっても、成績が悪かったとしても、パパやママの愛は変わらない』と教えることが大切です」。

親からの絶対的な愛は、子供のパーソナリティに関わるものでもある。

自分自身を“無条件で愛される存在”だと知った子供は、安心感をもちます。それと同時に、自己肯定感ももつことができるのです」。


絵本を上手に使って
コミュニケーションを楽しむ

子供に絶対的な愛を伝えるうえで役に立つのが、「アグネス・チャン 親子で読む絵本」シリーズの第1巻である「ママはあなたをあいしている、うそをつかなくっていいのよ」だ。本書の特徴は、嘘をめぐって繰り広げられる物語と、巻末に記載された複数の問いかけ。絵本を読んだ後、「うそをつかなくってもいいのはなぜかな?」といった問いかけに沿って、親と子供は話し合うことができる。「この本を子供と繰り返し読んで話し合えば、やがて子供は『自分は無条件で愛される存在だ』と信じるようになります」と、アグネスさん。

アグネスさんいわく、絵本の持ち味は「繰り返し読めるところ」。この持ち味を活かし、アグネスさんは絵本をめいっぱい役立ててきた。

「読み聞かせを何日か続けた後、『今日はママは疲れているから、代わりに絵本を読んでくれる?』と言って子供に読んでもらうんです。すると、子供がどこまで文字を読めているのか分かります。あとは、よく『パパはこの絵本の物語を知らないから、教えてあげて』とも言っていました。子供がパパに話す絵本の内容を聞けば、子供の理解する力や要約する力、記憶力などを知ることができます」。

また、家族全員の前で、子供に絵本の内容を発表してもらうのもオススメだという。

「発表して家族が喜んでくれれば、子供は『自分が発表したり意見を言ったりすることで、みんなが喜んでくれるんだ』と無意識に学び、プレゼンテーションに苦手意識をもたなくなるでしょう。もしくは、家族の前で間違える、もしくは笑われるという経験をたくさんすれば、子供は失敗は怖いものではないと理解します」。絵本を上手に活用すれば、親子のコミュニケーションが活発になるだけでなく、家庭内で子供のさまざまな力が育まれるのだ。

これまで母親として、あるいは教育の専門家として国内外の教育のシーンを見てきたアグネスさん。最後に、日本のパパとママへのメッセージをいただいた。

「自分の子供をほかの子と比べてしまうパパとママがたくさんいますが、これはやめましょう。子供のありのままの性格と能力を受けとめることで、子供の自己肯定感が育ちます。一番優れているところは伸ばし、苦手とすることは助けてあげるようにすれば、子供は健やかに育ちますよ」。

DATA

1巻『ママはあなたをあいしている、うそをつかなくっていいのよ』
2巻『ともだちをたすけるのは、いちばんしあわせなこと!』
3巻『みんなちがうから、すばらしい』
4巻『すべてたいせつ、ちきゅうをまもろう』

各1,540円(税込)。潮出版社より発売中。


取材・文/緒方佳子

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