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早期教育の“成功”とは? 精神科医が教える子供の才能との付き合い方

小さいころから専門的な教育を受けさせることに対しては、賛否が分かれる。二元論で割り切るのは難しいが、そんな早期教育や、子供の才能との付き合い方について、精神科医の香山先生に聞いた。

早期教育は是か非か
二元論で割り切れない現実

北京五輪で活躍した選手たちが連日大きく報道されました。将棋の世界では藤井聡太さんが活躍していますし、ローザンヌ国際バレエコンクール2022で大阪府出身の田中月乃さんが2位に入賞したことも話題になりました。彼らは圧倒的な量の練習を積み、実力を高めてきたわけですが、早期から専門的な教育を受けてきた場合が少なくありません。今回は、そんな早期教育や、子供の才能との付き合い方についてお話していきます。

早期教育を受けなければその道の第一人者になれない、と思われる分野は確かに存在しています。早期教育ではなくとも、小学生の頃から、特定の分野に没入して、日々練習に励む。パパやママは費用負担から送迎、学業のサポートに追われる、というファミリーは少なくないと思われます。というのも、そうした暮らしを続けた結果、生活に支障をきたしてしまった患者さんを診察する機会が少なくないのです。子供の才能は、誰が探し出して、どう評価するのがよいのでしょうか? そして家族は、どのようにサポートするのがよいのでしょうか?

一般論でいえば、早期教育を受けなければ十分なレベルに達することができない、という状況は少し歪(いびつ)なものであるといえます。ただし、そうした早期教育を受けられる環境に恵まれる人もいます。例えば、音楽一家に育った子供は、生まれた直後から労せず上質な音楽に触れて育ちます。また、ウィンタースポーツで活躍したある選手は、父親がスキーロッジの経営者で、幼い頃から毎日ゲレンデでスキーを楽しんでいたそうです。では、一般家庭では、どのようにサポートすればよいでしょうか?



親の弱みを狙った
遺伝子ビジネスに注意

誰が見ても明らかな才能があれば、情報化が進んだ時代ですから、自ずと成功への道が拓けるはずです。小さな町のコンクールや大会からでも逸材は発掘されて、相応しい舞台へと上がっていきます。

注意したいのは、普通の家庭の普通の子供です。我が子に才能を見出したいパパ&ママの弱味につけ込むようなビジネス=子供の遺伝子検査をご存知でしょうか? 遺伝子を検査して、子供の学習能力や身体能力、感性を分析し、適正を調べることができる、と謳っています。「ピアノをやってみたい!」という子供に、「あなたの適性は運動なのだから陸上競技をしなさい」と勧めてしまうパパ&ママが出て来かねません。何よりも尊重すべきは本人の意思であるにもかかわらず。



“成功”しない場合でも
無理のないサポートを

一つの道を突き進んだ時、何をもって成功とするのか、また、どのタイミングで、いかにしてその道から離れるのか。

どれだけ努力しても成績が上がらなくなってしまうこともありますし、スポーツであれば怪我をして競技を諦めなければならないこともあるでしょう。そうなった時、これまでに家族から受けたサポートを考えると辞めるに辞められない、と苦しむ子供もいます。

私の患者さんで、高校合格まで付きっきりでサポートした息子さんが寮生活に変わったことをきっかけに、燃え尽き症候群に陥ってしまったお父さんがいました。それとは逆に、これも患者さんの例ですが、「子供時代にバレエの先生から才能があると褒められたのに、親に反対されて続けられなかった」と、大人になっても恨みを抱えたままの人もいます。「わが家ではサポートしません」と頑なになりすぎると、かえって子供から恨まれることもあるわけです。

早期教育や一つの道を突き進む生き方も、もちろん一つの人生ですから、他人がその是非を問うことはできません。ただ、成功事例だけを参考にするのは、あまりに危険です。早期教育を施し努力を重ねても花開かない、という方が圧倒的に多いのが現実です。早期教育は、投資する時間、体力、気力、お金に対して、報われたとは言い切れない結果に落ち着く可能性も、あらかじめ考慮しておかなければなりません。

やはり一番大切にすべきは、本人の意思です。なぜなら、自分で選んだ道であれば、頑張った結果は本人が引き受けられるからです。その道で上手くいかなくなったとき、「よく頑張ったね」と笑顔で労ってあげられるくらいが、家族にできる丁度良いサポートなのではないでしょうか?

PROFILE

香山リカ

東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。


文:川島礼二郎

FQ JAPAN VOL.62(2022年春号)より転載

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