「根拠のない自信」こそ、育てよう
2014/06/02
根拠のある自信というのは「条件付きの自信」ということ。一方、根拠のない自信とは「無条件の自信」ということ。たとえば、親が子供に愛情を表現するとき、「100点を取った」という裏付けのもとに「100点取ったからあなたのことが好き」というのは「条件付きの愛情」といわれる。ないよりはましだが、非常に脆いものだ。一方、「あなたはどんなあなたであっても好き」というのが「無条件の愛情」。根拠や理由は不要である。こちらのほうが強固な愛情といえる。「条件付きの自信」と「無条件の自信」も同じこと。そして、無条件の愛情をたくさん受けとった子供は「自分は自分であるだけで愛される価値がある存在なのだ」と自己肯定感を高めることができる。それがほかならぬ、「根拠のない自信」の源泉である。
未来のことを語るのに、常に過去の裏付けを求められるような社会の中では「誰もやったことのないことに挑戦してみよう」なんて意欲が湧いてくるわけもないし、湧いてきたとしても評価されないだろう。きっと真顔で、「成功するという根拠を示せ」なんていわれるのだ。誰もやったことのないことが成功する根拠なんてあるわけないのに、である。そして「まだ何も実績を残していないのに、生意気を言うな」というのが、若者に吐き捨てられる常套句である。
だって若いんだもん。実績なんてないんだもん。それで根拠のある自信を示せってほうが無理ゲーだ。冒頭の調査結果はそんないたたまれない若者たちの心情を如実に表現しているように思える。今まで通りのやりかたを正確に効率よくやっていれば儲かるというような仕事をしているときには、前例主義や実績主義が有効だ。しかし、なんらかのイノベーションを起こさないといけない場合、前例主義や実績主義は足かせになる。
時代は変わった。日本の社会の仕組みも変わった。これからはもっと根拠のない自信を評価してもいいのではないだろうか。そのために、親は子を、根拠なく褒めて認めて励まして、無条件の愛情をもっと惜しみなく注いでやってもいいのではないだろうか。
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おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
おおたとしまさの著書一覧
(2014.6.2up)