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インタビュー

【対談】サッカー日本代表・遠藤航が語る『挑戦力』の育て方 (後編)

サッカー日本代表であり4児のパパである遠藤航選手と主体性を育む保育園の運営を行うエデュリー代表・菊地さんによる対談が実現。後編では、挑戦を続けることで身につく人間としての成長と可能性についてお聞かせいただいた。

前記事:【対談】サッカー日本代表・遠藤航が語る『挑戦力』の育て方 (前編)

プロサッカー選手
遠藤航さん(以下、遠藤・写真左)

株式会社Edulead代表取締役
菊地翔豊さん(以下、菊池・写真右)

言葉+主体性
これからの保育園に望むもの

菊地:今回「挑戦力」ってタイトルになったのも、遠藤選手がエデュリー、エデュラの方針に共感してくれて子どもたちの将来、これからの教育に可能性を感じてくれた経緯がありますが、どういった方向に進んでいってほしいという想いはあったりしますか?

遠藤:子育てに関して言えば、これからどんどんグローバル化していく中で、もっと小さいころから言葉だけでなく主体性を身に着けていっててほしいです。そのためには、経験を積み重ねることや環境をつくることが大事になってくると思う。日本だと中々大きい公園がなかったり遊べる場所も制限があるけど、子どもにとっては、遊んで学ぶことが一番大事だと思いますね。

菊地:確かにそうですね。日本の保育園でなおかつ認可保育園に来たのは初めてですよね。未来のツリー保育園を見てどうですか?

遠藤:ここはすごく綺麗だし、設備がいいですね。僕が通っていた幼稚園は1つの建物にみんながいて、遊びに行くところは公園でした。近くに大きい公園もなかったから。

菊地:ありがとうございます。ここは身近に園庭や芝で遊べたりするような環境設計をしました。月齢が小さい子の遊びは、カートに乗って公園やお散歩で帰ってくるぐらいしかできなかったりするので、安全を確保したうえで身近に遊べる環境があるといいなと。

乳幼児の小さいころから体を動かすことで3~4歳児の運動発達や自己肯定感を高めることにも繋がるのですが、遠藤選手のお子さんはどうですか。何か子どもの運動神経で思うことってありますか?

「やらせてみよう」で
見守る姿勢が大事

遠藤:運動もそうだけど、上の子より下の子のほうがやってみることが早いですよ。下の子は危なっかしいくらい。まだ2歳になっていないけど。ちょっと高めのテーブルから飛び降りようとしたり、「危ないよ」と注意するとやめるけど、やりたそうに見てくるからやらせてみようと見守りつつやらせてみたり。結果、大丈夫でしたけど! 本当に下の子は何でも運動の吸収と成長も早いですね。

菊地:やっぱり上の子を見ているからですね。遠藤選手も、奥さんも「やらせてみよう」で見守る姿勢が凄いですよね。4人の子育てを経験したからですか?

遠藤:4人目だからっていうのもありますね。1人目だったらやらせてないかも。子育ての経験から、このくらいだったら大丈夫かな、という感覚もありますし。

菊地:凄いですね。上の子は何歳ですか?

遠藤:上の子は8歳です。もう少年です。サッカーは好きなんですけど、今ゲームにハマっていて。eスポーツ、プロゲーマーになりたいって言ってる。

菊地:eスポーツもオリンピック競技になるかもしれないですしね。

遠藤:そう。昔ならゲームも1日1~2時間までとか言われてたけど、今はほんとにそこまで制限するべきなのかわからないです。バランスなのかな。それが仕事になる時代だから、子どもの可能性という点でも制限すべきではないのかなって。上の子、めちゃゲームうまいですからね(笑)

菊地:たしかにそうですね。ゲームは何をやっているんですか?

遠藤:ちょっと前はスプラトゥーン、マインクラフトは教育にいいかなと。今はフォートナイトにハマってます。友達と楽しそうにやってますよ(笑)

菊地:ドイツでもフォートナイトは流行ってるんですか?

遠藤:日本人が結構住んでて、学校の友達も日本人の友達何人かいてやってたり、そこでも流行っていますよ。

菊地:日本人のコミュニティがあるんですね。

遠藤:そんなに大きくないコミュニティだけど、同じクラスのママたちがいるので、奥さんも仲良くしています。

菊地:エデュリーは子どもの主体性を大事にしているんですが、親が期待してやらせるのではなくて、「『何でもいい』じゃなく出てくる、子どものやりたいものの邪魔をしない」というところが遠藤選手の考え方で印象に残ったところです。尊重してあげるって簡単だけど難しいから。

遠藤:子どもにはできるだけ大人と同じ目線で接しています。まだ上の子も8歳だから見守ることはするけど、一人の大人としてのバランスは考えてます。

菊地:一人の大人としてというワードがいいですね。4人も子どもがいると子育てのプロですね。

遠藤:子どもに対してどう向き合うかを考えて、探って、今やっと僕自身の子育て論が確立されたかなと思います。まだまだこれからですけどね。

根本の運動能力を培う
小さい頃からやっておきたいこと

菊地:身体発達を伸ばそうとエデュリーの園の中でもいろいろ仕掛けがあって、例えば廊下に置いてあった、凸凹の器具なんかは足の裏や平衡感覚を養ったりできるんです。

遠藤:うんうん、仕掛けが面白いですね! いいと思う!

菊地:ありがとうございます。運動発達について何か小さいころからやっておいた方がいいとかありますか。今って日本の選手もドイツの選手もそんなに体格変わらないじゃないですか。遠藤選手の活躍背景や体幹のベースとか、小さいころからこれやっていると培われるなど、何かありますか?

遠藤:僕も小さいころ色々やってみましたね。一時期野球もやってたし、水泳もやったし、サッカーしながらやってました。色々やってみたらいいと思う。その中で、子供がサッカー選手になりたいといっても、サッカーだけやればいいわけでもないし。自分も野球とか父親とやっていたことがよかったと思います。

菊地:体幹を鍛えるでいうと、もともとのベースよりも毎日の練習や努力を欠かさず積み重ねることでついてくるものなんですか?

遠藤:ベースはそうだね。根本の運動神経、運動能力は小さい時から培われるものだと感じます。最終的に勝てる身体はプロになってから作っていくものだから、本当にベースになるものは小さいころからできてるものなんだとは思います。

菊地:湘南ベルマーレに行って、浦和レッズに行って……同じ練習やっているだけじゃダメってことですよね。それ以外に努力の時間をとるってことですね。

遠藤:そう。サッカー選手の練習は2時間で終わるから、その他の時間をどう使うかがとても重要。海外に行きたいと思っているなら語学の勉強をしたり、本当にその目標に向き合ってできているのか。サッカー選手としてもそうだし、人としての成長にとってもそういう姿勢が大事だと思います。

菊地:2時間の練習以外にフィジカルトレーニングをしてるんですよね。

遠藤:そう。今はトレーナーをつけてますが、当時も筋トレだったり何かはやってました。

挑戦を続ける姿勢が
可能性を広げてくれる

菊地:今って色々な誘惑も多いじゃないですか。コツコツと本業をやり続けるって簡単じゃないですよね?

遠藤:そうですね。あとは自分のキャパシティ(許容量)を把握すること。練習も朝2時間で試合に臨む人がいるのと、朝と午後にも2時間練習するのと……練習の量を人の1.5倍練習して試合のパフォーマンスがいいのと……その差って大きいと思っていて。選手としてのキャパを広げるということは活躍の可能性を広げることなので。

なので、トレーニング量のキャパシテイをどれだけ持てるか。やっていくと意外とできるもので徐々に当たり前になっていく。そうなると強いと思います。人より1.5倍の練習量で試合に臨めますからね。その積み重ねで1年やったら練習量が違うじゃないですか。それは子供にも言えることだと思うんですよね。やらせてみたらできたり。

菊地:キャパシティという話で、今の遠藤選手の過密日程(日本代表スケジュール)を見てびっくりしたんですよ。試合試合試合……。

遠藤:日本代表はそうですね。

菊地:過密スケジュールでもやっていけるのは、普段からキャパを広げることをやっているからなんですね。

遠藤:そうだと思います。

菊地:その点でも日本から出て、やっぱり海外の環境でキャパを広げていったことか成功要因なんですね。

遠藤:海外だとその2時間の練習もかなり質は変わってくる。最初はそれについていくのが精一杯で、最初の半年くらいは練習きついと思いながらやってたけど、今はそれが必要最低限やることで、プラスでトレーナーをつけてトレーニングするまでになりました。海外に行っただけでもそれだけ変化はある。その差ってすごく大きいんです。

菊地:海外のチームは練習きついんですね。

遠藤:まあ、ブンデスがきついんだと思う(笑)

菊地:さっきキャパを広げるって話がありましたが、子供のキャパに気付くこと、特に乳児・0歳児って難しいじゃないですか。遠藤選手の子供達のキャパの個別最適ってどう思っていますか?

遠藤:難しいと思います。僕も上の子にはやらせすぎちゃったな、と思うことがありました。インターナショナルスクールに行かせて、そのあとに日本語の勉強を週2で習わせて、さらにサッカーも習いたいって言ったからやらせてみたんですが、そこは週3サッカーの練習で、土日のどっちかは試合みたいなチームだったんです。だから1週間のうち学校が3時まであって、他は習い事……そうするとやっぱり「サッカー行きたくない」って。

本人もゲームが好きだったし、余計そう思ったのかなと思います。僕もやっぱりやらせすぎたと思ったし、結局全部やめちゃって、「学校だけは行ってね」って言って通っているんですけど。それも本人のキャパなんだなと思って理解してますし、もしまたサッカーや他の事やりたいって言ったらそのときはキャパ増えたんだな、って思います。

菊地:なるほど。やめていいよ、っていうのも大切なんですね。なんでもかんでも辞めていいよ、じゃなくてキャパを見極めてサポートしてあげるのってすごく重要ですね。

遠藤:僕も本当はね、サッカー選手になってほしいなと思ってた(笑)。38になったら息子は18でプロサッカー選手になって一緒にサッカーできるんじゃないかっていう夢を持ってたけど「サッカー辞めたい」って言われたときは意外とすっと受け入れて「いいよ」って言えました。

日本語の勉強もやめちゃったけど、ドリル買ってやってみようか、って言ったら意外とやってたり、色々工夫するようにもなりました。モチベーションをあげる方法を考えたり。

菊地:4人いて、女の子は何番目でしたっけ?

遠藤:2番目です。

菊地:じゃあ、3回はチャンスあるんですね(笑)

遠藤:そう。下に行くほど僕が長くやらなきゃいけない。一番下の子だと43までやらなきゃいけなくなるから。まあ、できなくはないけど、そこまでやりたいと思うかはわからないから。自分のキャパも考えないと(笑)

菊地:そうですね(笑)。長い時間インタビューに答えてくれてありがとうございました。これからも「挑戦」を通して世界で活躍を続ける遠藤選手と一緒にエデュリーも変化し、挑戦し続ける会社の姿勢を発信していきたいと考えています!

遠藤:ありがとうございました。楽しかったです。


●対談者プロフィール

遠藤航/プロサッカー選手
ドイツブンデスリーガ・VfB シュトゥットガルト所属。日本代表。2020東京五輪代表選手。ポジションは MF・DF。17 歳で湘南ベルマーレの選手としてJリーグデビュー。6 シーズンに渡って在籍後、浦和レッズに活躍の場を移す。2017 年にはAFC チャンピオンズリーグで優勝。 2018 年にはロシアワールドカップ日本代表メンバー入りを果たした。同年、ベルギーのシント=トロイデン VV に移籍。2020 年にドイツの VfB シュトゥットガルトに完全移籍し、ヨーロッパの舞台で活躍中。プライベートでは 4 児の父。

菊地 翔豊/株式会社Edulead代表取締役
「主体性を育む」をミッションに世界にひとつだけの保育園創りを行う。日本の教育に馴染まず、ニュージーランドへ留学をした自身の経験から、「自分のやりたい事を追求できる環境」を多くの子どもたちに提供したいという想いで、19歳の時にエデュリー(当時 Kids One)を創業。その後、慶應義塾大学に進学しながら、エデュリーの経営とテクノロジーの力で乳幼児発達を促進するエデュラを創業。2020年に遠藤航選手をはじめとする複数の投資家より出資を受け、事業の拡大を行っている。

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