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インタビュー

【対談】サッカー日本代表・遠藤航が語る『挑戦力』の育て方 (前編)

サッカー日本代表であり4児のパパである遠藤航選手と主体性を育む保育所業運営するエデュリー代表・菊地さんによる対談が実現。前編では、海外で生活する遠藤選手の子育てのルールと子供が挑戦する環境の重要性を聞かせてくれた。

プロサッカー選手
遠藤航さん(以下、遠藤・写真左)

株式会社Edulead代表取締役
菊地翔豊さん(以下、菊池・写真右)

海外での生活で感じた
言語力の可能性

菊地:今回は「挑戦力」と題して、挑戦を続けるために大事にしていることや子育ての話なども伺っていきます。

遠藤:よろしくお願いします。

菊地:子育てに対しても、うちの園に対しても、すごく共感してくれていて、「保育を科学する」っていう一線でやっていることにも理解してくれていて心強いです。ドイツで子育てを始めて、将来の子どものためや今後の子育てで何か考えてることってあるんですか。

遠藤:僕は4人の子供を海外で育てながら、日本とドイツの子育ての違いは何なのかを考えている中で、なんでもチャレンジできるようにするのってとても大事だなと思ってます。小さい頃から語学や色んなことを考えながら育児とは向き合ってきましたが、子どもの可能性ってほんと無限大だなって思いながら日々生活してますね。

菊地:子どもの主体性を大切にしているエデュリーでは、外国人の先生が常駐している園も作っています。ここでは、英語を教えるのではなくて、英語が生活の中にあるという環境を取り入れてるんです。家族や友達と日常で使っている日本語以外の環境。ボディランゲージを駆使して、どうやったらコミュニケーションを取ることができるのか自分の頭で考える。そうすることで多様性の許容力を身につけてもらいたいと思っています。

いま実際に、遠藤選手の子どもたちがインターナショナルスクールに通っていて、まさに同じような環境にいるかと思いますが、なにか発見とかありますか?

遠藤:母国語と英語を喋れて、さらにドイツ語も勉強して話せるようになる経験を小さい頃からできるっていうのは、本当に大きいことだと思います。僕らは日本語しか学んできていなくて、途中から英語を始めるという環境でしたから。僕は海外に3年いますけど、やっと日常会話ができるレベルになってきたくらいです。

小さい頃からコミュニケーションツールの一環として日本語だけじゃなくて英語に触れるというのはやっぱり大きいし、何かを学ぶ上でもプラスになると思う。普通に過ごしてたら日本語の情報量と英語の情報量って全く違うじゃないですか。そういうことを考えても母国語だけじゃなくて最低限英語とか、他の言語を学んでいくというのはすごく大事だと思いますね。

保育園を視察する遠藤氏

菊地:ドイツ語は勉強してから行ったのですか?

遠藤:一年ぐらい勉強しましたけど……リスニングなら何となく言ってることがわかるくらい。それだけでも個人的には良かったですけどね。監督が言ってることがなんとなくわかったので。子供たちも日本にいた頃からインターナショナルスクールに通ってたのですが、自分と同じでした。先生の言ってることはわかるけど、自分ではまだ言葉がちょっと出てこないみたいな状態でしたよ。もう結構上の子は喋れてます。

菊地:そうなんですね! 言語力の向上ってプレーの向上、チームプレーの向上と何か関係ってあるんですか。

遠藤:関係はしてると思いますよ、間違いなく。ただ結局、サッカー選手は海外でいくら言葉が話せても、プレーで結果を残さないと認められないところがあるし、逆に言葉が話せなくても、プレーで示して結果を残せば認められることもあるから、話せて結果を残せるのが一番ベスト。

僕も最初はそこまで話せなかったけど、プレーで示しつつ少しずつ語学も上達してきて、今はチームの一員として認められてることをすごく実感します。関係性は間違いなくあるしできるに越した事はないと思います。

菊地:同じく海外で活躍する、久保建英選手とかは小さい頃からスペインにいて、スペイン語がほぼ話せる感じじゃないですか。スペイン語と日本語、両言語で育ってきた選手、今までいなかったですよね? プレーはもちろんのこと、チームの中でのコミュニケーション力の向上もすごいですよね。

遠藤:久保選手しっかりしてますね。自立しているというか、言いたいことをシンプルにぶつけてくる。若いとか関係なしにそれが向こうでは普通だから、ある意味、久保選手は感覚が外国人的というイメージはありますね。それはむしろいい事で、意見をしっかり持って発信できるって事はすごい事だと思う。そういう意味でも他の言語を通じて学ぶ事は大事だし、母国以外の国で生活するメリットもあると思います。

主体性を育てるのは
親の適切な距離感

菊地:幼少期から活躍するまでに色んなベースになったものがあると思うんですけど、今の形をつくった幼少期の体験ってありますか? エデュリーは主体性を育てるをモットーにしているので、子どもたちがそれぞれ活躍していく時にどういうアシストをしてたらいいのか、ヒントになればと思います。

遠藤:幼少期を振り返るとどうなんだろう。すごく負けず嫌いでしたね。サッカーやっていても、絶対チームの一番になりたかったし、試合でも負けたくないっていうのはすごくありました。あとは見たものをそのままどんどん真似してたかな。サッカーだったら、プロの試合を見てボール持ったらこういうプレーしてるのか、こういうシュート打ってるんだ、というのを自分で考えて、それを再現しようとしてました。真似して、チャレンジしてという能力は多分小さい頃に培ったかなと思いますね。

菊地:遠藤選手は兄弟っているんでしたっけ?

遠藤:下に弟と妹がいます。

菊地:お兄ちゃんとして、歳近いのですか?

遠藤:弟は3つ下。妹は離れていて、11個ぐらい。

菊地:それで子ども好きになったって言ってましたね。幼少期の0〜5歳は保育園に行ってたんですか。

遠藤:幼稚園です。

菊地:その時からサッカーをやってたのですか?

遠藤:幼稚園の頃は遊びの一環として友達とボールを蹴るくらいでした。本格的に始めたのは小学1年生の頃。

菊地:負けず嫌いはその頃から?

遠藤:負けず嫌いだったと思いますね。幼稚園で一緒にサッカーやってた子がすでに習っていて、結構上手くて。その子と一緒にボール蹴っているなかで、負けたくないじゃないけど、もっと上手くなりたいから練習しようって思ってたと思います。

菊地:それってお母さんお父さんの影響が大きかったりするんですか? 絶対負けてくるなとか言われたり……?

遠藤:全然言われなかったですね。父親もあんまり喋らない人なので、僕がやりたいことなんでもやらせてくれましたよ、特に何か言われた訳ではないですね。

小さな『目標設定』をクリアすることが
大きな目標達成に繫がる

菊地:最近、『見守る保育』がすごく重要視されてきていて、子供たちの「やる」って気持ちを尊重することが大事にされています。一方で、すごく過保護になってる親御さんも増えている傾向があるんですよね。挑戦する前に止められるみたいな。一人のプレーヤーとして、親として、遠藤選手はどんなことを大切にしてますか?

遠藤:僕は常に目標設定しています。それも長い目で見て、5年後10年後どうなりたいのかと、そのために直近1、2年後とか半年後に、自分は何を達成できるのか、何を目標に置くべきなのかとか、そこの目標設定のセンスは大事だと思うんですよ。プレーヤーとしては。高すぎても良くないと思うし、少し努力すれば実現できそうなことにしっかり目標を置くことはすごい大事だと思う。

なんでもいいんですけど、多分今ここだろうなとか自分がしっかり理解した上で目標を設定する。今回だったらオリンピックでオーバーエイジとして出るとか、その次のカタールW杯でベスト8にいくために、自分は主力選手として出るとか、短期的なところの目標は細かければ細かいほどいいと思うんですね。長い目で見るときは、チャンピオンズリーグに出たいとか、もっとビッグクラブに行きたいとか、ざっくりそういうものを置いておく。その辺は意識してますね。

菊地:日本代表というのは、サッカーをしているみんなにとって憧れだと思うんですが、達成したらそこで終わりなのか、それともその後も活躍を続けられる選手になりたいのか。これは目標設定があるからこそですね。自分がどこまで行きたいか。

遠藤:そう。それをどんどんアップデートできるかが大事じゃないですか。

菊地:日本代表の中心選手になって目標設定は変わりました?

遠藤:めちゃくちゃ変わると思いますね。最初は日本代表になりたいっていうのが夢だったわけじゃないですか。その夢を達成して、今度はさらに上の目標に変わるってくるわけじゃないですか。その先の夢はなんなんだろうっていう、そのアップデートを考えてます。これはすごい大事だと思う。

菊地:最終的にはどこまでいきたいという目標設定はあるんですか?

遠藤:サッカー選手としてはチャンピオンズリーグ優勝か、日本がW杯優勝するか。

菊地:すごい! 選手としては夢に挑戦し続けているのですね。父親としては、子どもたち一人一人の目標設定とか、こういう風に育って欲しいとかあるんですか。

遠藤:そこまで考えてないです、本当やりたいことやってくれればいいと思っているので。僕も父親からあまり何も言われずに育って、ある意味そこで主体性が育まれたと思うので。自分でなんでも考えて、判断して、それを実行するみたいな自立した子どもになって欲しいかな。僕もやりたいって言ったらどんどんやらせてあげるし、それを見守るスタンスでいます。

小さな成功体験の積み重ねが
主体性を身に着ける

菊地:挑戦してきた遠藤選手にとって、子どもたちの挑戦に対してどういう風にサポートしていきますか。父親として、子どもの挑戦をどう見守りたいなどありますか?

遠藤:知識の量で言うとまだそこまでないじゃないですか。知らないものも多いのでいかにいい刺激を与えられるか。例えば好きなゲームならどれだけ大人がちょうどいい具合で制限してあげるか。制限しすぎても良くないし、やらせすぎても良くないし、そこのバランスと設定、制限のバランスは結構考えていますね。

菊地:そこってやはり、子育てもチームプレーなところもあるんですね。どういう風に育ててこうという指標がないと難しいと思いますが、パートナーと話し合ったりするんですか.

遠藤:あんまりないです。

菊地:ないんですね。フィーリングで? パートナーを尊重しながら見守るのか、それとも遠藤選手がそこに合わせてるのか。

遠藤:お互い二人で怒らないようにしようみたいなのはあります。奥さんが怒っていたら、僕はちょっとサポートしてあげるようにしています。「子供 対 親」のように、夫婦二人で子供に怒るのはよくないというのはルールとしてあるかな。あとはそんなにないですね。

菊地:最初に取り決めするんですか?

遠藤:いや、全然。自然にそうなっていきました。あとはあんまり怒りすぎないようにはしてましたね。

菊地:なるほど。ありがとうございます。
次に聞きたいのは、子どもたちが「やってみたい」と思って挑戦したときに立ちはだかる壁(課題)をどう乗り越えるか。挫折してしまう子、諦めずに乗り越える子、色々な子がいる中で、遠藤選手はどんなことが必要だと思うか聞かせてください。

遠藤:自分自身、壁にぶち当たった経験がないというか。壁を壁と思っていないことがあるかな。

菊地:それって先天的なのか、後天的に身についたのか……さっき負けん気が強かったという話も出たので、自分はできると思っているのか……

遠藤:感覚的にできると思っていたかも。自分よりサッカーが上手い子がいて、その子に追いつくのはどうしたらいいかと考えるタイプ。それが壁なのかもしれないけど、そんなことを考えていたかな。あとは成功体験を小さくてもいいから積み上げられるか、それを壁にして乗り越えてみる。どんなことでも挑戦させてみて、ちょっとした大人の手助けで成功に導いてあげるのも大事。その辺は子育てしている中でも意識していますね。

菊地:僕も最初はいじめられっ子で内気だったんですけど、中学・高校とあがっていったときに、自分の小さな成功が自信になってきて、そこから主体性が身についてきたという経験があったかな。

子どもの気質、性格を見ながら成功体験を積み重ね、自信をつけてあげることで、将来が広がるのかなと思う。エデュリーでもそういった子どもたちの気質や特性を可視化しながら、保育を実施したりしています。最終的にスポーツ選手でも政治家でも自分がなりたい自分になってほしい。

遠藤:そうですね。とてもいいと思います。


●対談者プロフィール

遠藤航/プロサッカー選手
ドイツブンデスリーガ・VfB シュトゥットガルト所属。日本代表。2020東京五輪代表選手。ポジションは MF・DF。17 歳で湘南ベルマーレの選手としてJリーグデビュー。6 シーズンに渡って在籍後、浦和レッズに活躍の場を移す。2017 年にはAFC チャンピオンズリーグで優勝。 2018 年にはロシアワールドカップ日本代表メンバー入りを果たした。同年、ベルギーのシント=トロイデン VV に移籍。2020 年にドイツの VfB シュトゥットガルトに完全移籍し、ヨーロッパの舞台で活躍中。プライベートでは 4 児の父。

菊地 翔豊/株式会社Edulead代表取締役
「主体性を育む」をミッションに世界にひとつだけの保育園創りを行う。日本の教育に馴染まず、ニュージーランドへ留学をした自身の経験から、「自分のやりたい事を追求できる環境」を多くの子どもたちに提供したいという想いで、19歳の時にエデュリー(当時 Kids One)を創業。その後、慶應義塾大学に進学しながら、エデュリーの経営とテクノロジーの力で乳幼児発達を促進するエデュラを創業。2020年に遠藤航選手をはじめとする複数の投資家より出資を受け、事業の拡大を行っている。

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