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親の固定観念が子供の自尊心を傷つける!? 自己肯定感を高めるオモチャの与え方とは

「お人形は女の子の遊び」「ブロックは男の子の遊び」。そんなオモチャに対する無意識の“固定観念”で、子供の自由な発想を奪わないようにするためにはどうしたらいいのか? 文筆家の堀越英美さんに話を伺った。

価値観にとらわれない
みずみずしい感覚が身につく

「子供に自由に伸び伸びと育ってほしい」と思う一方、「女の子用」「男の子用」を無意識に区別してオモチャを与えてきたのが今までの一般的な子育ての風景だ。しかし「ジェンダーフリー」「多様性」が叫ばれる時代を生きていく我が子のために、親としてはジェンダーにとらわれずに子供が好きなオモチャを与えてあげたい。『女の子は本当にピンクが好きなのか』の著者・堀越英美さんに聞いた。

「幼い子供はもともとオモチャの男女差を感じていませんが、3歳くらいから性の自認が始まり嗜好がはっきりしてきます。『男の子は電車やクルマなどの動くオモチャが好き』『女の子はパステルカラーが好き』など好みの傾向がありますが、性別による好みの傾向差は幼児にはよくみられることです。

こうしたこだわりは大切にしつつ、様々な選択肢を用意して子供の可能性を広げるという意味では、『ジェンダーフリー』なオモチャの登場は喜ばしいことだと思います。男の子も『女の子っぽいカラーじゃないおままごとセット』があればそれで遊ぶかもしれませんし、女の子も『かわいらしい工具セット』があれば何かを組み立てて遊ぶかもしれませんから。

実際グローバルな視野で見ると、従来の男の子は理系のオモチャ、女の子はお人形、のような価値観を覆すものも増えてきていますし、先入観を持たずに『おままごと好きな男の子』『科学者になりたい女の子』を当たり前に受け入れる土壌ができてきたのではないかと感じます」

オモチャを性別で選ばず
子供の“好き”を尊重しよう

一方で『ジェンダーフリーなオモチャ』だけを与えていけば良いのかというと、それは違うという。「『ジェンダーフリーなオモチャしか認めない』であれ、『男の子は男の子のオモチャ、女の子は女の子のオモチャで遊ぶべき』であれ、子供の嗜好を無視して親の願望を押し付ければ、子供の自尊心を傷つけることになり成長に悪影響が出てしまいます。

ですから、おままごとや少女ヒロインのオモチャで遊びたい男の子、戦隊モノやロボットで遊びたい女の子を、親は否定しないで見守ってあげて欲しいと思います。重要なのは『子供の嗜好を尊重すること』。それが何より子供に安心感を与え、アイデンティティーを形成していく幼い年齢の子供にとって、自己肯定感の高まりに繋がります」。

子供の意志を尊重したい気持ちはあれど、一般的に女の子のオモチャといわれているものを好きな男の子や、男の子のオモチャといわれているものを好む女の子を親として不安に思ってしまうこともあるだろう。しかし堀越さんはこうアドバイスする。

「『うちの子、これでいいのかしら?』『他の子と違うかも』と思うかもしれませんが、子供の興味はそんなに長く続くものではありません。子供の成長にとって大切なのは『どのオモチャで遊ぶか』ではなく『自分の欲しいオモチャを認めてもらうこと』

そして幼い子供に性別のこだわりがあるのは当たり前なので、『男なのにピンクなんておかしいの』と言った子供がいたとして、その子を咎める必要はありません。けれどそこで大人が『ピンクが好きでもいいんだよ』と言い添えてあげると、子供にも自然と否定しない気持ちが育っていくと思います」。

ジェンダーフリーなオモチャは新しい選択肢のひとつとして素晴らしいもの。その上でどんなオモチャを選ぼうとも、子供の気持ちを尊重し応援する姿勢を見せることが、子供の心の成長に繋がっていくのだ。



ジェンダーフリーなオモチャとは?

決まった定義はないが、いわゆる従来の「男の子らしさ」「女の子らしさ」という価値観にこだわらず、男女の性差なく遊べるオモチャのことを言う。もともと男女を意識していないニュートラルなデザインのものや、「理系玩具で女の子が好むデザイン」「性別が男のお世話人形」など様々なものがある。個々の興味や関心を大切にしようという社会意識の高まりから近年増加し「新時代のオモチャ」として注目されている。

オモチャとジェンダーの歴史

オモチャと性別の問題が注目されたのは、1970年代頃のアメリカの『ウーマンリブ運動』の頃からだった。これは『男女の性別は社会的・文化的に作られたもので、差別や区別を徹底的になくそう』という女性解放運動のムーブメントのこと。この時、育児環境からも性別区分を無くそうという思想が広まり、オモチャや衣服から中性的なカラー以外が排除されるという動きが各地で起こった。

しかしこの少し行き過ぎた思想への反省もあり、1980年代以降は『男女それぞれの個々の気持ちを尊重しよう』という機運が高まった。そして近年のオモチャの傾向として2010年代後半から女性科学者のファッションドールなど男女の固定観念を覆すものもブームになり、日本でも男女差なく遊べるオモチャが増えてきている。

教えてくれた人

堀越英美さん


1973年生まれ。文筆家。著書に女の子とピンクの社会的な意味や歴史について、オモチャなどの視点から紐解いた『女の子は本当にピンクが好きなのか』『スゴ母列伝』『不道徳お母さん講座』 等、訳書に『ギークマム』『世界と科学を変えた52人の女性たち』『ガール・コード』等。


文:松永敦子

FQ JAPAN VOL.58(2021年春号)より転載

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