コロナで“家庭重視主義パパ”が増加!?「家族の重要性を意識するようになった」約半数に
2021/01/02
新しい生活様式が浸透した2020年。出産・育児にまつわるさまざまな事柄も、ニュースタイルが定着しつつある。テレワーク化が進み、父親の家事・育児参加率が高まる今。家族の在り方はどう変わっただろうか。
テレワーク化で
男性の育児参加は当たり前に
緊急事態宣言の解除後、内閣府は、「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を実施した。その結果から見えてきたのは、家族単位での新しいライフスタイルの在り方だ。
就業者のうちテレワークを経験したと答えた人の割合は全国で34.6%に到達。また、感染症拡大前に比べ、「家族の重要性をより意識するようになった」と回答したのは全体の49.9%に及んだ。さらに、「仕事以外の重要性をより意識するようになった」が31.5%で、「仕事の重要性をより意識するようになった」の21.9%を上回る結果に。
「日本の社会が、家族重視型のライフスタイルに舵をきるきっかけになった」と話すのは、家族の経済学と労働経済学を専門とする、東京大学経済学部の山口慎太郎教授だ。
「テレワークが増えたり、飲み会が減って家に早く帰る生活が当たり前になったり、コロナ禍によって、仕事中心の生活が強制的に引きはがされた結果、家族重視型のライフスタイルへの願望が高まったことは調査結果からもはっきりと読み取れます。とくに男性は、家族時間が増えたことをかなりポジティブに捉えている人が多い印象です」
ピーク時と比べるとテレワーク普及率は減少傾向とも言われるが、「家庭重視主義は一過性ではない」と山口教授は予想する。
「コロナ禍をきっかけに、たとえ嫌々ながらでも家事育児に関わるようになった男性たちがいるとして、コロナが収まったらすべてが元に戻るのかといったら、恐らくそうではない。男性育休の研究では、子供が生まれて1〜2ヶ月の間に育休を取得した人は、その後のライフスタイルに変化があると言われています。カナダ・ケベック州での調査では、育休を取得しなかった人に比べて取得した人は、3年後の育児時間、家事時間が約2割多いというデータもある。コロナ禍で経験したことは、今後の家族関係にも少なからず影響があるはずです」
さらに、家族重視型社会の追い風となりそうな法改正の動きも。現在、厚生労働省では、男性社員の育休取得について会社が推奨することを義務づけるための法改正を検討しているという。
テレワーク化の普及、男性の育休取得率が高まる今後の社会において、男性の育児参加はもはや当たり前のものになるに違いない。
教えてくれた人
山口慎太郎さん
東京大学経済学部教授。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。『「家族の幸せ」の経済学』(光文社)で第41回サントリー学芸賞を受賞したほか、ダイヤモンド社 ベスト経済書2019 第1位に選出。
文:曽田夕紀子(株式会社ミゲル)
FQ JAPAN VOL.57(2020-21年冬号)より転載