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生活を犠牲にして仕事を頑張る……? コロナウイルスが日本にもたらした働き方の教訓

「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」で相談件数が圧倒的に多いのが、妻の側から寄せられる夫婦間の問題。妻の心の根っ子には、満たされない思いがある。新型コロナウイルスに負けない不安・ストレスへ対処するにはどうすればよいか。最近のニュースから考える、香山先生のコラム。

ウイルスに無頓着でイライラ
夫は何もわかってくれない

厚生労働省が3月からはじめたチャット形式の「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」に、相談員への助言などを行うスーパーバイザーとして関わっています。

相談件数が圧倒的に多いのが、妻の側から寄せられる夫婦間の問題の相談です。たとえば「自分は手洗いやマスク着用に気をつけているのに、夫はマスクもしないで外に出るなど、ウイルスに無頓着でイライラする」「夫はテレワークが可能なのに『出社しなければならない』と言って電車通勤を続けている」「夫が会社の接待ゴルフを断れない」など。

夫婦だって人間同士ですから、多少の価値観のズレはあります。普段は接触時間が少ないこともあり、多少は大目に見ることができましたが、今のように命と健康に関わる問題に直面すると、これまでのようには許せなくなります。

妻自身も、新型コロナウイルスの感染拡大はすごく不安で、家事の増加にもストレスを感じています。なのに、夫に話しても「そんなことを言ってもしょうがないだろう」「考えすぎだ」と相手にされない。夫への不満を訴える妻の心の根っ子には、「私の不安やストレスを、夫が全然わかってくれない」という満たされない思いがあると常々感じています。それが一番の問題点です。

心の相談では、たとえ根本的に解決しなくても、相談終了後は多くの方が「気が楽になりました」と満足されます。夫はまず、妻の話にきちんと耳を傾けて、寄り添うことを大切にしてほしいですね。

専門家の見解には冷静な目を
情報に一喜一憂しすぎない

新型コロナウイルスの報道に接し続けることで、かえって不安がつのって心が疲れる場合があります。世界でも、こうした情報過多によるストレスが問題になっており、WHOは、情報収集を1日2回にとどめるよう勧めています。

連日、メディアには専門家と称する人たちが何人も登場しますが、彼らにしても、この新しいウイルスについては今までの経験や研究の中で得た知識を元に見解を述べているに過ぎません。また、いくら専門家だと言っても、国際情勢や社会状況など、専門外の分野にまで広い視野をもって見られる人はどれほどいるのか疑問です。

肩書きが立派でも盲信せず、むしろ「こんな意見もあるんだ」とちょっと冷めた目で見るくらいがちょうど良いでしょう。

日々の情報について、一喜一憂しすぎないほうがいいですね。感染が確認された人数が減っても気を緩めすぎず、逆に感染人数が増えて落ち込みすぎないことです。効果的なワクチンや治療薬の登場で感染が収束するまでの間、日常の身の回りの小さな出来事を見ながら日々楽しむ、といった心のゆとりが必要ではないでしょうか。

仕事はほどほど、家庭が大切
日本人の働き方が変わる?

新型コロナウイルスの感染拡大が、日本人が持つ働き方の価値観を大きく変える可能性がある、と私は考えています。

テレワークをしている知人の会社員は「感染拡大前は、深夜まで働くことも度々ありました。今は通勤する必要がないので朝ゆっくり寝られます。体が楽になり、寿命が延びたように感じますね」と笑いながら話していました。テレワークを経験した他の皆さんも、「深夜まで働いて帰宅後は寝るだけ、という以前の生活は間違ってたんじゃないか」「テレワーク中、仕事を中断して泣き出した子供を世話する方が、本来あるべき姿ではないか」と気づいた方も多いのではないでしょうか。

私自身、以前は土日も講演のために出かけることが多かったのですが、感染拡大によって講演の仕事はなくなり、今では土日もゆっくり寝ています(笑)。今では、「あのハードな生活に戻れるのか」「以前の生活には無理があったのでは」と思うようになりました。

今後、感染が収束すれば「経済のV字回復を目指そう」ということで、日本の社会全体がハードワークに傾く可能性もあります。その時、特に男性の方には、テレワーク中に得た気づきを忘れずに、「自分は生活を犠牲にするような激務は嫌だ。仕事はほどほどにして、家族との時間も大切にする生き方を選びたい」と大きな声をあげてほしいですね。

PROFILE

香山リカ RIKA KAYAMA


東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。


Text >> KOJI GUSHIKEN

FQ JAPAN VOL.55(2020年夏号)より転載

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