時事・コラム

子育てにも応用できる! 親が知っておきたい「ダイバーシティ」の歩み

子育ての第一歩として、ダイバーシティを受け入れ、隅々まで「頭で」理解することが必要だ。私たちのルーツをたどってみても、種の融合によって生まれたダイバーシティが貴重な機能を果たしてきたのである。首都大学東京教授・宮台真司の「マイノリティ教育」に関するコラム後編。

前記事:「子供をリーダーに育てたいなら「周りに合わせる”フリ”」を教えろ!」

種の融合が生む
ダイバーシティ

僕たちが「人類」と呼ぶのはヒト属サピエンス種ですが、2万年前まではヒト属ネアンデルタール種と共存しました。ネアンデルタール種が死滅する直前に交雑してサピエンス種に吸収されたのです。白人は、白肌、金髪、碧眼、体毛が多い、体格がいい、寒冷地を好む、といった特徴がありますが、これらはネアンデルタール種から受け継いだ性質です。



不思議なことに、全ての生物種は死滅しそうになると隣接種と交雑して融合します。種が死滅するように見えて実際には合体するのです。ネアンデルタール種はサピエンス種に合体して遺伝子を残しました。それが今の定説です。白人は黒人の変異種ですが、この変異にネアンデルタール種の合体が関係します。

黒人から僕たちのような黄色人種が最初に分かれました。その頃の黒人は黒くありません。日差しの強い場所に生活して肌の黒さが遺伝的に定着するのに必要な期間は高々1500年。黄色人種はネオテニー(幼体成熟)の度合が高く、その分環境適応力があり、極寒の地アラスカから南米アマゾンまで生きられる。19世紀の段階で黄色人種の環境適応力の高さが知られていました。

黒人は環境適応が低くてアフリカに留まりましたが、北上の過程でネアンデルタール種と交雑して白人化しました。黒人から、まず黄色人種が分かれ、その後に北上した一部がネアンデルタール種と交雑して白人が生まれたわけです。ネアンデルタール種は寒い所にしか住めず、黒人は温暖な所にしか住めなかったので、寒い場所に住むために必要な変異でした。

こうしたストーリーは、全人種のゲノム解析と、ネアンデルタール種のゲノム解析が完了したことで完全に証明されています。そこからお分かりのように、ダイバーシティが人類ないしホモ属の全地球的な環境適応を助けたわけですね。

という次第で、ダイバーシティアレルギーの「ヘタレ」は困りものですが、実はそういうクラスタも集団的生存上必要だったことを申し添えておきます。遊動段階では過剰な冒険を抑止する機能を果たし、定住革命つまり農耕以降は「法内のルーティンという退屈」に耐える機能を果たしました。

とはいえ俯瞰して見れば、やはり「ダイバーシティ超OK」的クラスタと「ダイバーシティは苦手」的クラスタの両方が存在してきたという、それこそダイバーシティが、人類を生存させてきたのです。ダイバーシティが苦手な人たちも、理屈を理解し、ダイバーシティを受け容れるべきなのです。

ダイバーシティは
貴重な機能を果たす

最近では朝型と夜型の人がいるのもゲノム上のプログラムであることも分かりました。集団全員が同時刻に就寝すると、危急存亡の事態に備えられなくなるので、集団的生存戦略からして不都合だった、という事情があったわけです。

復習すると、約束を守らず、時間を守らず、仕事のとっかかりと手離れが悪く、周囲とのワイガヤが苦手で、言葉を聞いておらず、嗅覚と触覚に鋭敏といったASDの特徴は、抽象的には「媒介を嫌い、直接性を好む性質」としてまとめられ、狩猟集団の前衛に要求されるNM的能力だった、という事情をお話ししました。これはダイバーシティ問題を理解するための典型例です。



他方、共同体になじまず、共同体によるラベル貼りを気にしない特質が、性愛的な直接性の世界ではむしろ好まれがちであることもお話ししました。サヴァンな能力も含めてNMのベネフィットを理解する手がかりは、ルーティンな日常に埋没すると見過ごされがちではあれ、実は周囲に転がっています。僕はこれを「未規定性の有用性」「規定不可能性の有用性」と表現します。

でも、マジョリティの人たちはまだまだ理解しようとしません。だからここまで僕が紹介してきたようなNMの生物進化上の機能などを手掛かりに、ダイバーシティが貴重な機能を果たすことをマジョリティに理解させていかなければいけません。そのために使える材料は多数あるのです。

例えば社会学者マックス・ウェーバーが『職業としての学問』という著書の中で、知識人を「毎日幸せであるだけでは幸せになれない人間」と定義しています。生活には直接役立たないようなことを考える存在。それが「職業としての学問」を担うのだとしています。NMの話に酷似しています。

彼自身は、ダーウィンの進化論やスペンサー流の社会進化論にさして関心を抱きませんでしたが、今日の視座から振り返れば、彼の知識人論は明らかに神経学的ダイバーシティあるいはNMの擁護です。学問知は、日常生活に役立たないことが多数ある、というか、それが本体です。それが何に役立つのか分からないからこそ、未規定な未来にとって必要なものなのです。

大学を有用知に限定したがる頓馬な勢力がありますが、これも、単なる「反人類的な間抜け」です。日本を同質的な同族だけで固めたがる勢力が「反国家的な間抜け」なのと同じです。そんな中、社会学のルーツに、進化論を含めた自然の摂理に忠実たらんとする「自然主義」が見られるのは心強い。

他方、インターネットでは内外問わず「知識人ヘイト」が進んでいて、自分にない能力を持つ人を見ると癪に障るヘタレも少数ながら一定数います。「ネトウヨ」も「炎上厨」もネットユーザーの1%に過ぎないことが各種調査で分かっていますが、これらはネットにへばり付くので、まるで「膨らし粉」のように世論を形成していると見え、これに勇気づけられる間抜けな政治家も出てくる惨状です。

こうした惨状を打開する原理的な方法は、もっぱら教育ですが、その教育において、NM的な機能を果たし続けてきた知識人こそが一定の役割を果たさなければなりません。僕がここでお話ししているのもそうした流れに即したものです。

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