6組に1組の夫婦が不妊治療を経験!? 治療と仕事の両立ができる社会を目指して
2020/03/05
不妊の原因が男性側にある場合も多いことは広く知られるようになったが、不妊治療に対する社会の理解が進んだとはいいがたい。仕事と不妊治療の両立のためには勤め先の理解も不可欠だ。男女を問わず不妊治療に安心して取り組めるよう制度を充実させている企業があるのでご紹介しよう。
最長3年間の不妊休業を新設
不動産活用や住まい探しを支える大東建託株式会社は昨年4月、社内プロジェクト「いろどりLAB(ラボ)」を立ち上げた。当初は女性のさらなる活躍を目標としてスタートしたものだが、議論を重ねる中で、女性に限らず全ての従業員が活躍できることが企業の持続的成長には必要だという考えに至った。その上で調査、検討を進め、不妊治療休暇、マタニティー休暇、看護休暇、不妊治療休業の4つの制度の新設、子の看護休暇、育児短時間勤務制度などの既存制度の拡充につながった。
厚生労働省の2017年の調査によると、不妊治療を受けたことがある人のうち、仕事と治療の両立ができずに離職した人は16%に上る。働きながら治療に取り組める環境を整備しなければ、会社側にとっても貴重な人材を失うことにつながりかねないのだ。
大東建託の不妊治療休暇は、年次有給休暇とは別に年5日間、有給で取得できる。また、不妊治療休業は、妊娠が判明するまで最長で3年間休業できる制度。もちろん男女を問わず取得可能だ。
20人に1人が人工授精で誕生
不妊治療は費用もかかり、心身への負担も大きい。自治体で助成金の形でサポートしてくれるところも多いが、職場の理解、支援があれば心強い。
日本では、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は、全体で18.2%、子供のいない夫婦では28.2%に上る。また、2015年に日本では51,001人が生殖補助医療(体外受精、 顕微授精、凍結胚(卵)を用いた治療)により誕生していて、全出生児(1,008,000人)の5%にあたる。不妊治療も体外受精も、もはや特別なことではないのだ。
厚労省も啓発用のリーフレットを作成したり、職場に不妊治療中であることを届けるための「不妊治療連絡カード」を作成したりして理解を後押ししている。
企業の人材確保、少子化対策、そしてなにより誰もが子供を持つこと、家族で生きていくことを選択できるために、不妊治療を社会的に支える仕組みづくりが欠かせない。今回の大東建託の試みが多くの事業者に広がっていくことが望まれる。
DATA
Text:平井達也