世界で広まる“STEAM教育”はパパママの常識? 将来、AIに淘汰されないための教育とは
2020/02/27
「STEAM教育」が注目されている。今年から小学校で新学習指導要領が運用されることもあり、日本でも教育のSTEAM化は避けられないだろう。これからSTEAMを学んでいくわが子を、パパママはどのように励ましていけるだろうか。この新しい教育に何を期待できるだろうか。
もうすぐパパママの常識に!
STEAM教育とはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)を統合する教育の概念だ。デジタル技術の進展、AIの登場に直面している現在、人間は何を学び、できるようになり、すべきか、という教育の根本が更新されつつある。
少なくとも従来のように、知識を詰め込む形の教育は、もう時代遅れだろう。もちろん一定の教養は必要だが、その上でこれからの社会を担う子供たちに求められるものがある。それはテクノロジーを制御し、方向づけ、望ましい社会の形成に役立てる力だ。そのためにもSTEAM教育は欠くべからざるものだろう。
さて、STEAM教育はどの程度認知されているだろうか。e-ラーニングに関するコンテンツを提供する株式会社イー・ラーニング研究所がパパママ対象に行った調査によると、半分近くがSTEAM教育を知っているという結果となった。
パパママたちの間では知られつつある言葉だといえるだろう。
最も関心があるのはArt
同調査では、STEAM教育のどの分野に関心があるかも尋ねている。すると1位となったのはArt=芸術分野だった。
この結果は少し興味深い。Art以外の4分野はいわば理系分野であり、事実、従前はArtを除いたSTEM教育という言葉が広く使われていた。
パパママたちの芸術教育への関心というのは何を意味しているのだろうか。一つの可能性として、技術がいくら進展しても人間らしい感性を養い、クリエイティブ力の強化をしてほしいという願いがあるのではないだろうか。
AIがどれだけ芸術の分野で能力を発揮できるかについては議論のあるところだ。AIが芸術作品を創作するとしても、そこには人間によるデータやパターンのインプットが必要なはずだ。それはもはやAI自身による創作とは言いがたいだろう。
では人間のアーティストによる創作は違うのか?人間による創作行為もまた、経験によるデータやパターンを処理した上でのアウトプットに過ぎないのではないか?こうして問いは哲学的な領域に踏み込んでいく。
STEAMを支える知とは?
そのような哲学的な問いを行う力こそ、STEAM時代に求められるものなのかもしれない。紀元前のピタゴラスにとって、数学と音楽と哲学は統一された学問であった。美術における重要な概念である黄金比は数学上の問題であり、それがなぜ美しいのかを扱う美学は哲学の一領域だ。
テクノロジーをどう方向付けることが良いのか、という問題も根本には倫理という哲学上の問題がある。なぜ生きるか、いかに生きるか、を問わなければ、STEAMの課題も目標も見えてこないだろう。そうしたことを子供に示唆する役割を、パパママに担ってほしい。
DATA
Text:平井達也