法的には存在しない!? 1億6600万人の子供が出生未登録という状況の打開策
2019/12/24
世界では1億6600万人の小さな子供たちの出生未登録が問題となっている。この世には“存在しない”とされ、国の法律や政策の対象から漏れてしまう子供たちにある危険性とは？ユニセフ（国連児童基金）が世界の出生登録に関する新たな報告書を発表した。
4人に1人の子供が出生未登録
ユニセフが世界の出生登録に関する新たな報告書を発表した結果、世界で出生登録されている子供の数は大幅に増えているものの、1億6600万人の5歳未満の子供たちが出生未登録であることが分かった。
これは世界で4人に1人の割合で出生登録ができていないということだ。
南アジアでは登録数が大幅に改善
174か国のデータを分析した報告書『2030年までにすべての子供に出生登録を：その進歩は？』では、世界で登録されている5歳未満の子供の割合が10年前に比べて20％増加したとしている。
特にバングラデシュ、インド、ネパールで大きく改善がみられている。
例えばインドでは、出生登録されている子供の割合が2005年～2006年は41％だったが、2015年～2016年には80％と大幅に上昇した。
また、ユニセフは国全体の出生登録数に優先的に取り組めるようにインド政府と協力し、出生登録拠点を増やし職員やコミュニティワーカーの訓練を行いながら、最も弱い立場に置かれたコミュニティで啓発プログラムを実施している。
出生未登録における弊害
ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォア氏は「出生登録されていない子供は見えない存在。政府の政策や法律において存在しないことになってしまうので、教育、保健、その他不可欠なサービスから除外されてしまい、虐待や搾取を受けやすくなってしまう。
未だに数えきれない多くの子供たちが隙間をすり抜け、数えられることもなく、行方も分からない状態だ。」と、現状を危惧している。
出生登録されない原因とは？
出生登録されない原因は以下のようなものが挙げられる。
1.子供の出生登録における知識不足
2.出生登録または出生証明書の申請料金の高さ
3.申請が遅れた場合の追加料金
4.最寄りの登録施設までの遠さ
また、生んだばかりのママは屋内に居るべきだという伝統的な慣習も、出生登録の妨げになっているようだ。
持続可能な開発目標（SDGs）に「2030年までにすべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する」が掲げられている。この目標を実現するためには、世界で2億3700万人の5歳未満児の中の約3人に1人が登録を証明する公式書類を持っていないという状況を改善する必要がある。
すべての子供を守るためには
ユニセフはすべての子供を守るために以下の5つの行動を呼びかけている。
■すべての子供に、出生の証明書を提供する
■すべての親に対し、出生時、性別を問わず子供を登録するよう後押しする
■出生登録を他のシステムと連動させ、保健、社会保障、教育などのサービスに対する子供の権利を促進させる
■安全で革新的な技術に投資し、出生登録を促進させる
■すべての子供の出生登録を実施できるようにコミュニティに働きかける
ヘンリエッタ・フォア氏は、「すべての子供には名前、国籍、法的身分に対する権利があり、出生登録数が増えたことは歓迎すべきことです」と述べた。
しかし、「今年30周年で子供の権利条約で定められているように、すべての子供たちが登録されるまでは、行動をやめてはいけません」と警鐘も鳴らしている。
子供の健やかな人生のために
出生登録を！
地球に生まれてきたからには、誰しも幸せになる権利がある。出生登録数は以前に比べて微増してはいるが、未だ出生未登録である子供たちが世界にはたくさん存在しているのだ。
これからは出生登録の大切さを理解してもらう学びの場をさらに広げるために迅速な環境整備が必要だと言える。
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