“育児アドバイザー”狩野さやかさんの講座から学ぶ。心身ともにボロボロな子育ての実態とは?
2019/12/09
"ふたり育児アドバイザー"狩野さやかさんの講座「産後の「ズレ」を乗り越える! 笑顔が増える家庭のコミュニケーション術」で取材した内容を大公開!
社会問題でもある子育て
苦労の原因とは?
子供が生まれるとパパママともに環境が大きく変わる。ただし変化の方向、内容や量に、パパとママとでは大きな違いがある。その違いを、特にパパの側が認識できないことによって、ママが追いつめられるケースは多いのだ。
産前、産後で何が変わったか。「時間」「身体」「社会」「精神」の4つについて参加者それぞれが書き出すところから講座はスタートした。
このワークからは一般的に、パパよりママの方がはるかに変化が大きいことが明らかになる。
予想を大きく超えて時間に追われ、自分の時間など「分」単位。身体はボロボロ、社会とのつながりは断たれる。気持ちが休まるときはない。これが典型的なママの実態だ。
相当過酷な働き方をしていた女性でも「仕事の方が数倍ラクだった」と言うそうだ。
狩野さんは「仕事にたとえれば、転勤と事務所の縮小と業務内容の大幅変更と降格と減給と……がいっぺんに訪れるようなもの」かつ「新入社員が、今日からキミ社長ね、と言われるほどの重圧」と語る。
ただでさえ過労死寸前の子育てに加え、家族の介護、多胎児である、自身や子供の障害や疾病など、個別の事情を抱えているママも多いはずだ。家族が増えて引っ越しなどの環境の変化が加わることも多い。
そしてママには、辛さを口にしてはいけない、というプレッシャーもある。退職や育休中で勤労所得を得ていないことから「子育てくらいは自分がしっかりしなければ」と考えてしまうママは多い。
こうしてママたちはマタニティブルーズや産後うつへと追いつめられていく。
パパだってもちろん
怠けているわけではない。
パパ側の変化として多いものは「仕事への責任感が強まる」「成果を上げたいと思うようになる」というもの。ただでさえ業務量が多く責任も大きくなる子育て世代の男性。
さらに本人がパパになったのを機に意欲を出せば、家庭のための時間を取りづらくなるのは当たり前だ。また、日本ではまだまだ、男性は仕事優先、女性は家庭優先、という意識が残る。
パパに対しては「仕事を優先させられないのはダメな男性」というプレッシャーがあるのだ。質量ともにパパとママでは産前産後の変化が異なる。
ママの苦しみを理解できず、「気楽にがんばれ」「あまり思いつめるな」といった言葉をかけてしまっているパパも多いのではないだろうか。
そんな言葉が実はさらにママを辛くしているのだ(ここが分からない方、読み進めていだければ分かります)。
あるいは、自分の母親は一人でちゃんと子育てしていた、と思うだろうか。あなたの記憶にある母親は、少なくともあなたが0歳のときの母親ではないはずだ。
また、1970年代にはすでに、「孤独な子育て」は社会問題化しており、「捨て子」という悲しい事例も数多く起きてしまっていたのだ。ママの子育ての辛さは、断じて最近の女性の甘えなどではない。
意識のズレは夫婦関係にも反映される。調査によればパパママとも、妊娠期には74%が相手に愛情を実感している。
ところが、2歳児期になると、50%以上のパパがその気持ちを維持しているのに対し、ママ側は34%まで落ち込むのだ(ベネッセ教育総合研究所、2011年調査)
そしてこの時期に信頼関係を築けなかった場合、回復は困難なのだ。必要な人員を正しく見積もろう。子育ては、大人1人で処理しきれる業務量ではない。専従者が1名では限界を超えているのだ。
DATA
狩野さやかさんの講座:「産後の「ズレ」を乗り越える! 笑顔が増える家庭のコミュニケーション術」
※本講座は終了しています。
Text:平井達也