“家族は人生を豊かに” 信条を貫くのがドイツ流
2016/08/17
日本のパパが育児をより楽しむためのヒントを海外の育児に学ぶ!今回取り上げる国は勤勉実直、日本との共通点も多いドイツ。できる時間にできる人ができることをするのがドイツ流。更に、家族が最も大切であるという共通認識を持ち、時間管理をすることで、無理のない家事・育児分担を可能にしている。
早めに出勤する妻に代わり
朝食や幼稚園送迎を担当
2人の出会いは、北ドイツのハノーファーで開催された世界万国博覧会(エキスポ)。エキスポで働いていたクロシュさんと遊びに来ていたクリスティーナさんは知り合いを通じて出会い、交際がスタート。2005年に結婚し、2007年に長女エレンちゃん、2012年に次女リンちゃんが誕生した。2人は夫婦別姓で子供たちはパパの姓を名乗っている。
クロシュさんはイラン出身で16歳のときドイツに移住し、現在はドイツ国籍を取得。大学で建築学を修め、友人と建築事務所を経営している。クリスティーナさんは幼稚園教諭で、3歳未満の子供のクラスを担当。
正社員だが短時間勤務を利用し、現在は週33時間働いている。ただし、始業が早いため、子供たちに朝食を食べさせ、ランチ用のパンや果物を持たせるのはパパのクロシュさんの役目。小学2年生のエレンちゃんは、徒歩5分のところにある小学校に1人で通学。クロシュさんとリンちゃんはバスで幼稚園へ。
週末の家事は、料理と掃除機かけはクロシュさん、片付けやその他の掃除はクリスティーナさんが担当。洗濯は2人で一緒に行う。
環境を整えて仕事に集中。築100年以上のドイツの伝統的な木組みの家がクロシュさんの建築事務所。中は現代風に改装され、オシャレで快適。仕事にしっかりと打ち込める環境を作ることで、仕事・家事の切り替えはバッチリ。
予定をすり合わせて時間管理
夫婦の時間も大切にする
実は2人目を妊娠したとき、クリスティーナさんは、あるウイルスに対する抗体がないことが発覚し、すぐさま産休を取ることに。そのウイルスに感染すると、流産の恐れがあったからだ。正社員であるクリスティーナさんは産休中、給料の全額が支給された。
一方で、自営のクロシュさんにはそのような金銭的な手当てがなかったが、愛する妻とお腹の子を守るために、なるべく家で仕事をしたり、家事を積極的に行ったり、エレンちゃんと触れ合う機会を増やしたという。
そうして、現在4人家族となったクロシュさんだが、2人目誕生以降、今まで以上に時間をマネジメントすることが大きな課題になっている。
どのような予定があるのか、事前に夫婦で調整して、子供の送り迎えや勉強担当を分担している。そうすることで、平日のオンタイム、休日のオフタイムとも、子供たちと過ごす時間を捻出している。また「意識して夫婦の時間を作らないと、パパ、ママという役割分担だけになってしまう」と、しっかり夫婦水入らずの時間も確保している。「子供を持って、人生に意味があることがわかった。自分の人生は自分だけのものじゃないんだ」と話すクロシュさん。家族のいる幸せをかみしめている。
勉強は子供と触れ合う絶好の機会。2人の勉強をみることもしばしば。子供とのコミュニケーションを図る1つの手段でもある。
昨年のウアラウプ(夏休み)はおじいちゃん・おばあちゃんとアルメニアに10日間の旅行へ。外での家族時間も大事にしている。
ドイツでも民法によって、結婚したら夫婦は同一の姓を名乗ることとされていたが、1991年に連邦憲法裁判所が両性の平等違反としてこの条文を無効に。1993年に民法が改正され夫婦別姓が可能になった。子供が生まれた場合、父親か母親どちらかの姓を名乗るが、子供1人ごとに姓を変えることはできない。
Photo » Franz Renz
Text » Riho Taguchi
FQ JAPAN VOL.39(2016年夏号)より転載