<映画『太陽の蓋』が公開>親として知っておきたいこと
2016/07/15
3.11の福島原発事故を描いた映画『太陽の蓋』が7/16(土)に公開。そこに映し出される、親として知っておきたい真実とは。
あの日、福島原発で、官邸で、
誰が何をして、しなかったのか
―― 福島原発事故から5年。このタイミングで原発を題材とした映画への主演を決めた理由からお伺いできますか?
3.11を描いた映画だと聞いたときから、ある種の緊張感はありました。しかし、台本を読んで、率直に、これはエンターテインメント作品だと感じたんです。ですから、出演に対して特別な覚悟は必要なかったですし、社会派の重厚なテーマだからと重たく受け止めるのではなく、僕は俳優として、1人でも多くの人に見てもらうためにできることをやろう、と考えました。
―― エンターテインメント作品だからこそ、伝えられる真実がありますか?
ドキュメンタリーのようなテンポでひたひたと進むのではなく、場所や時間が飛んで絡み合う練りに練られた脚本で、僕自身、この映画を通して、日本はそんなにやばい状況だったのかと理解できました。
―― 当時、首相だった菅直人氏をはじめ、閣僚や政治家が映画の中に実名で登場する点でも注目されていますね。
菅さんや(元官房長官の)枝野さんは、いい描かれ方ばかりではないのに、脚本に目を通してOKを出してくださったそうです。ただ、全員が実在の人物というわけではなく、僕の演じた新聞記者の鍋島など、架空の人物が映画全体を窮屈にさせない、いい中和剤になっていると思います。
―― 北村さんは、2014年11月にパパになりましたが、父親として、息子に誇れる作品ですか?
もちろんです。息子が反抗期に入り始めたころに、「父ちゃん、すごいだろ!」って思いも込めて見せたいですね。派手な映画もいいけど、確率からいえば、こういう骨太な映画に参加するほうが難しいですからね。
―― 北村さんのブログを拝見すると、“息子愛”に溢れていますね。
最近は、公園と子供の記事ばかりになっちゃって(笑)。携帯電話の写真も子供だらけだし、ノートパソコンも写真のデータが重くてパンパン。外付けのハードディスクにデータは移してあるんだけど、パソコンのデータを本当に消して大丈夫なのか確信がもてなくて、いつまでも消せないんですよ。まぁでも、そこで初めて、僕にとっていかに息子の写真が大切かを知るんですけどね。
―― どんな親子関係が理想ですか?
僕の父親(俳優の北村和夫さん)は忙しくて、一緒に過ごす時間があまりなかったんです。父の愛情を渇望していたわけでもないけど、うまくコミュニケーションがとれなかったというのがあって。自分が親になったとき、仲よくなんでも話し合える親子像を思い描くようになりました。2、3歳までにどれくらい家族と一緒にいられるかがその後に響くとも聞くので、いまは息子との時間を大切にしています。
―― 子供と過ごす時間は楽しいですか?
楽しいですけど、大変だし、けっこう疲れます(笑)。今日もメイクさんに、「またやせたでしょ?」っていわれたんですけど、たぶん、やせた理由は子育てなんですよ。公園で2時間とか立ちっぱなしだし、砂場での人間関係に神経を張り巡らせているから太れないんだと思いますね。本当に。
―― 息子さんに身に付けてほしい「○○力」を教えてください。
「コミュニケーション力」ですね。こんにちは、さようなら、ありがとう、ごめんなさいがちゃんといえて、友だちとケンカしたり仲直りしながら、すくすく育ってくれたら、親としては安心です。
―― 最後に、父親の視点からこの映画をどうご覧になりますか?
親として、いち大人として、最低限の知っておくべきことがあると思うんです。特に、3.11のような大きな出来事は、マスコミの報道を鵜呑みにするだけでいいのか、今後も原発はこのままでいいのか、自分なりの歴史観が問われます。そういう観点からも、この作品の存在意義があるように感じています。
北村有起哉 YUKIYA KITAMURA
1974年生まれ、東京都出身。1988年、舞台『春のめざめ』および映画『カンゾー先生』でデビュー。現在まで、舞台、映画を中心に幅広く活躍中。2013年に結婚、翌年11月に第1子男児が誕生。子供との日々は、公式ブログ「セーダク、アワセ呑ム」で垣間見ることができる。
映画『太陽の蓋』7月16日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開!
©「太陽の蓋」プロジェクト/ Tachibana Tamiyoshi
福島原発事故から5年。当時の菅内閣の閣僚や報道関係者、福島県での取材などを丁寧に重ねて脚本を制作。政治家はすべて実名で登場し、官邸内での出来事(ノンフィクション)と市井の人々(フィクション)を対比させ、事故の真相を追う新聞記者をキーパーソンに3月11日からの5日間を描く、ジャーナリスティック・エンターテインメント。
Photo » TAIKI FURUKAWA
Text » YUKI IMATOMI
Hair&Make » MAYU ISHIMURA
Stylling » SHIORI TOMITA
※FQ JAPAN VOL.39(2016年夏号)より転載