赤ちゃんの頭の形、放置しないで!パパ・ママが知るべき「ヘルメット治療」の現状とは
2025/04/17

「うちの子の頭の形、ちょっといびつかも…」そう感じたことはないだろうか?実は、多くの親が赤ちゃんの頭の形を気にしているにもかかわらず、医療機関を受診する人は少ないのが現状だ。ここでは、ヘルメット治療の最新事情と親としてできることについて紹介する。
日本の赤ちゃんへのヘルメット治療
専門家が有効性と安全性を確認!
日本大学医学部の森岡一朗教授
かつて「自然に治る」と考えられていた赤ちゃんの頭の形のゆがみ。しかし、重度のゆがみは自然治癒が難しいケースが多い。そこで注目されているのが、頭蓋形状矯正ヘルメットを用いた治療である。
2025年3月26日(水)に行われた「~子育て世代の関心が高まる赤ちゃんの頭の形~予防と治療に関する最新事情についての記者説明会」では、日本大学医学部の森岡一朗教授が登壇。Berry社製ヘルメット「ベビーバンド」を用いた最新の研究成果について解説した。
森岡教授は、まず研究の意義について、「乳児の体位性斜頭症は、寝かせ方やライフスタイルの変化により近年関心が高まっていますが、科学的根拠に基づいた情報が不足していました。今回の研究は、日本国内の複数の医療機関(日本大学医学部附属板橋病院、春日部市立医療センターなど5施設)が協力し、実際の医療現場で得られた224名の乳児のデータに基づき、ヘルメット治療の有効性を検証したものであり、今後の標準的なケアを構築する上で非常に貴重な知見となります」と述べている。
主な研究結果としては、以下の点が挙げられた。
・全ての重症度で効果を確認
3Dスキャナーで計測した頭のゆがみの指標が、ヘルメット治療によって全ての重症度群で改善した(最重症で約9%、重症で約7%、中等症で約4%)。これは、ヘルメット治療が幅広い症例に有効であることを示唆している。
・早期治療の有効性、生後7か月未満で改善度が大きい
治療開始月齢が生後7か月未満の方が改善度は大きいものの、生後7か月以降に治療を開始した場合でも、CVAIで約4%の改善が見られ、一定の効果が得られることが分かった。
・安定した治療効果
参加した医療機関や担当医師による治療効果の差はほとんど見られなかった。
・安全性
治療によって頭の大きさ(頭囲)の成長が抑制されることはなかった。患者の2.2%に皮膚の赤みが見られたが、いずれも一時的なもので、ヘルメットの調整など適切な対応により改善した。
このように、今回の研究はBerry社のヘルメット治療が、日本の乳児に対して安全かつ有効であることを示す重要なエビデンスとなった。
頭の形を気にする親は約半数
知識の不足と受診の壁
株式会社Berry代表取締役中野裕士社長
一方で、ヘルメット治療の認知度はまだ十分とは言えず、治療を受けられる医療機関も限られているのが現状だ。同説明会では、株式会社Berry代表取締役の中野裕士氏が登壇し、同社が実施したヘルメット治療の意識調査やBerryの取り組みを紹介した。
同社の調査※では、実に約半数の親が赤ちゃんの頭の形を気にしているという結果が出ている。気になり始めたのは出産直後が21%、生後1~2ヶ月が27%、生後3~4ヶ月が25.6%と、早い段階からパパ・ママは不安を感じていると受け取れる。
しかし、ヘルメット治療の認知率は約4割、実際に医療機関を受診する人は2割程度と、多くのパパ・ママが赤ちゃんの頭の形を気にしているにも関わらず、治療の方法や受診の仕方を知らないでいることが分かった。
受診をためらう背景には、「まだ様子を見ている」「どこで相談できるかわからない」「自然に治ると思っている」「近くに相談できる病院がない」「紹介状が必要で受診のハードルが高い」といった理由が挙げられる。
また、ヘルメット治療期間中は、常時ヘルメットの着用が必要なため子ども自身はもちろん、パパ・ママにも負担がかかる。そこで、Berry社では赤ちゃん向けの人気キャラクター『シナぷしゅ』とコラボレーションしたヘルメットの開発・提供をスタート、赤ちゃんや家族が治療期間を少しでも明るく、楽しく過ごせるような工夫を取り入れたというわけだ。
中野社長はキャラクターデザインの活用について「治療はどうしても赤ちゃんやご家族にとって負担になる側面があります。だからこそ、日々の装着が少しでも楽しくなるような、そして親子で前向きに治療に取り組めるようなサポートをしたい」と語る。同社の取り組みは、ヘルメット治療そのものの認知拡大に加え、治療の心理的ハードルを下げ、親子が前向きに取り組める社会つくりにも大きな影響を与える試みと言えるだろう。
※出典元/「赤ちゃんの頭の形に関する意識調査」
早期対策がカギ!
親としてできる3つのこと
これまで見てきたように赤ちゃんの頭の形は治療が必要なケースも多く、早期発見と適切な対処がカギとなる。
そのため、親として次の3つを意識していきたい。
・正しい知識を身につける:赤ちゃんの頭の形に関する情報を収集し、専門家の意見を聞くことが大切。
株式会社Berryでは、今回の森岡教授との共同研究のように、科学的根拠に基づいた情報を重視している。自社サイトなどで信頼できる情報をパパ・ママに届けるための発信を積極的に行っている。悩むパパママは一度閲覧してみてもいいだろう。
・早めに相談する:少しでも気になることがあれば、自己判断せずに医療機関に相談しよう。
少しでも気になることがあれば、自己判断せずに医療機関に相談しよう。Berryのヘルメット「ベビーバンド」は、国内最多、全国34都道府県、145の医療機関で採用されており(2025年4月時点)、相談できる医療機関も着実に増えている。
・情報収集を積極的に:ヘルメット治療に関する情報を集め、メリット・デメリットを理解した上で、治療の選択肢を検討する。
もちろんヘルメット治療には、治療費、診察代、ヘルメット代など、一定の費用がかかる。治療期間中のケアや調整も必要だ。株式会社Berryの「ベビーバンド」は、国内での開発・製造、3Dプリント技術の活用などにより、品質を保ちながらも比較的費用負担を抑えた治療選択肢となることを目指している。
とはいえ、費用だけでなく、治療のメリット・デメリット、リスクなどを医療機関で十分に確認し、納得した上で治療を開始することが何よりも重要だ。赤ちゃんの頭の形が気になったら、「様子見」で終わらせずに、まずは医療機関に相談することが大切だ。早期発見と適切な対応は、赤ちゃんの健やかな成長をサポートする上で非常に重要である。情報収集を積極的に行い、専門家と相談しながら、赤ちゃんにとって最適な選択肢を見つけていこう。
DATA

株式会社Berryは「必要な時に必要な医療を」目指す医療機器ベンチャー。全国の140以上の医療機関にBerry社製ヘルメット「ベビーバンド」が導入されている。森岡教授ら専門家と連携し、ヘルメット治療に関する研究や正しい知識の普及に注力。3D技術等で費用を抑え治療を身近にする努力も。シナぷしゅコラボなど親子に寄り添う活動も精力的に展開中。
文/竹治 昭宏