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人口減少はこれから100年続く!? 子供たちへの影響と親世代に求められる視点とは

これからの時代のターニングポイントとなる『2030 年』。少子高齢化問題といった危機が顕在化してきている。日本だけの問題なのか? 世界から見るとどうなのか? 子供たちに迫り来る未来を考えてみよう。

これから100年間続く?
加速化する人口減少

子供が少なくなった。公園やショッピングモールなど、子供たちの人気スポットも最近では、お年寄りのくつろぐ風景に代わりつつある。相次ぐ学校の統廃合。昼間、若者の姿がほとんど見られない地方の町も多い。

「現在の日本経済の停滞には、人口減少が大きく影響しています」。明治大学特任教授で、人口論を研究する金子隆一先生は語る。

「人口減少は私たちが生きている間、恒常的に続きます。その勢いは仮に少子化が解消しても2080年頃まで止まらず、このままでは少なくとも百年以上は続くといわれています」。

厚生労働省による人口動態統計によると、2021年の一人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は、調査以来過去最低の約1.3%。親世代の人口自体も減少し続けているので、比例するように子供の減少も加速している。仮に今、少子化対策が大成功したとしても 2080年頃までに3000万人程度が消失。策を何も講じなければ5000万人以上の人口減になると予測されている(図1)。「『子供を持たない』ライフスタイルを選ぶ20代女性も増え、その数は全体の4割を超えるでしょう。コロナの影響で、出産や子育てへ不安な空気が生まれたことや、国や自治体の子育て支援が先送りになればさらに増えると予想されます」。

図1:総人口の推移と少子化解消シミュレーション※


※出生率=人口置換水準、死亡率=一定(2015年)から算出。
参考資料:国立社会保障・人口問題研究所「統計資料集2017年版」

世界でダントツ1位の高齢化率
日本都市が直面する問題

高齢化問題も深刻。世界各国の高齢化率(図2)を見ると、日本の65歳以上の人口は現在約29%。世界的に見てもこの数値は、2位のイタリアを大きく引き離してのダントツ1位だという。2060年代には、38%台にまで増える予測だ。

「平均寿命が長いから高齢化率が高いというのは誤解で、少子化の影響の方が強いです。フランスやスウェーデンも長寿国ですが、高齢化のペースはもっと緩やか。さらに日本では、2025年に団塊世代が75歳を迎えます。これによってさまざまな問題が顕在化してくるでしょう」。

団塊世代の多くは、戦後の高度経済成長期に地方から都市部へと移り住み、仕事を求めた。

「都市部では医療介護施設が今以上に必要となるはずですが、土地が高く、施設を大量には作れない。その結果、多くの『介護難民』が生まれると予想されているのです」。

図2:世界各国の高齢化率


参考資料:United Nations (2022), World Population Prospects: The 2022 Revision, 日本は総務省統計局「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」[出生中位・死亡中位推計]

地方消滅の危機?
働き方に、視点の変化を

地方の市町村にも問題は山積する。若年層の流出や過疎化問題だ。

「若い世代がいなくなると、地元の産業コミュニティが継承されず、『地方消滅』にもなりかねません。都市部も地方も、これまでの働き方では経済を維持できなくなっているのです」。

少ない労働力で、多くの高齢者を支えていく未来。その現実は、当面変えられない。だからこそ今後は、個人レベルでの働き方の変化や質の向上が求められると金子先生は語る。

「終身雇用や年功序列など従来の保守的な思考にこだわっていては、世界にどんどん置いていかれます。働くうえでも家庭でも、視点の変化がますます必要となってくるでしょう。」

2030年問題とは?

国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者となり、その結果、この時期に様々な社会問題が表面化すると予測されている。慢性的な人口減少や少子高齢化がおもな原因で、社会保障や医療・介護、雇用など、社会全体に大きな混乱を引き起こすことが懸念されている。

教えてくれた人

金子隆一さん

明治大学政治経済学部特任教授。アメリカ・ペンシルバニア大学大学院を卒業後、人口減少や人口高齢化など、人口変動のメカニズムなどについて長期にわたり研究。国立社会保障・人口問題研究所副所長など歴任。著書に「ポスト人口転換期の日本」(原書房)など。


文:甲斐望
イラスト:土井聡士

FQ JAPAN VOL.65(2022-23年冬号)より転載

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