夫婦のカタチはどう変わる? 男性学の視点で読み解くこれからの“理想の夫”像とは
2023/01/03
令和の時代、夫婦の形はどうあるべきなのか? 1990年代まで続いた「男は仕事、女は家庭」というスタイル。しかし、2010年代以降、「夫婦共働き」が当たり前の社会になった。大妻女子大学准教授で「男性学」の第一人者である田中俊之さんに、これからの“理想の夫”像を聞いた。
対等な関係が強く求められるも
妻の時短が多勢で負担に偏りが
これからの時代の夫婦像は、どうあるべきなのでしょうか。振り返ると、高度経済成長期には「男は仕事、女は家庭」というスタイルが定着。この傾向は1990年代まで続き、結婚、妊娠、出産で退職する女性が大勢いました。しかし2010年代になると、約4割の女性が第一子出産後復職するように。そして、その割合はどんどん増えつつあります。
このように「夫婦共働き」が当たり前の社会に向かう今、夫に求められるのは当然、家事育児に協力的な姿勢です。つまり、男女がより対等であることが求められているのです。しかし実態としては、出産後は妻が時短やパートで働いて、家事育児に偏りが生じている家庭が多数を占めているのが現状です。
夫も仕事を中心に考えず
子供中心の時間感覚を共有する
この状況で求められるキーワードは、「いかに仕事のことを中心に考えない夫が増えるか」ということではないでしょうか。特に子育て世代では、「仕事中心」から「家庭中心」に時間感覚が変わる男性をどう増やすのか。これまでは、女性がある意味強制的に家庭中心の時間感覚で生きてきました。ですが今後は男性側も、そこにコミットしていく必要があります。私はこの「子供中心の時間感覚を共有できる夫婦」こそが、子育て世代の夫婦の理想の形だと考えています。
その実現のためには夫も、「家事育児がメインの仕事である」という感覚を持つ必要があります。加えて、妻への接し方としても、対等に話し合いができる態度を心がける必要があるのではないでしょうか。
夫がフルタイム、妻が時短で働いていると、当然夫の収入が上になりがちです。でも、それは賃金格差の問題で、男性が偉いからというわけではありません。ともすれば夫側には「所得が多いのだから、自分の仕事が優先されるべき」「妻は時短で家に多くいるのだから、自分は家庭内のことを多少やらなくてもいい」というような、経済的なマウントを取る心理が働きがちです。そこが、最も注意しなければいけない部分なのです。帰宅時間が遅くて晩御飯が作れないとしても、献立は一緒に考える、必要な食材を買って帰る……など、プロセス全てを任せず、一部でも担えることはないか、謙虚に声がけをする必要があると思います。
外部のサポートを利用して
長期的な視野で家庭の円満を
また、「子供中心の時間感覚」で行動すると、子供が増えれば増えるほど、親は自由時間が少なくなります。ですから家庭円満のために、時にはベビーシッターや土曜保育、ご家族のサポートなど、使える手は使って、自由時間を確保することも心がけてください。それも難しければ、手のかかる時期をある程度“見える化”して、「小学校入学まではがんばって、それ以降はプライベートをもっと楽しもう」など、二人で将来のことを話しておくと希望が湧きます。「3年後にはハワイ旅行」と計画するだけでもワクワクしますよね。
私はそうやって対等な立場で話し合い、パートナー、家族としての信頼を長期的に深めていける関係性こそが、これからの理想の夫婦の形であると考えます。理想の夫婦、そして夫像は、社会の変化に合わせて変わっていくもの。ぜひアップデートして、時代に即した理想の夫婦を目指されてみてはいかがでしょうか。
令和の理想の夫婦型とは?
1位 親友型 690票
2位 尊敬型 599票
3位 一途型 453票
タメニー株式会社による「理想の夫婦」に関するアンケート調査。(対象:20~40代の未婚男女・n数2,400人)
映画「花束みたいな恋をした」の麦と絹にイメージされる親友型が1位にランクイン。2位には、芸能人のDAIGOさんと北川景子さん夫婦のような尊敬型、3位は漫画「呪術廻戦」の乙骨くん&里香ちゃんのような一途型という結果に。それぞれの理由には「対等」というキーワードが見られ、公平な関係性が求められているとわかる。「夫婦関係は作り上げていくもの。しっかりと話し合って理想の姿を目指してみてはいかがでしょうか」(田中さん)
まとめ
●「仕事中心」から「家庭中心」に時間感覚を変える
●収入格差によるマウントを取らないよう注意する
●外部のサポートや長期的な視野で家庭円満を図る
PROFILE
田中俊之
社会学者。大妻女子大学 社会学専攻准教授。男性が男性だからこそ抱えてしまう悩みや葛藤に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて、男女共同参画社会の推進に取り組む。著書に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。
文:笹間聖子
FQ JAPAN VOL.64(2022年秋号)より転載