「出産式」がトレンドに? 妊娠初期から出産までサポートするプラットフォームが登場
2021/06/23
出産とはこの世で最大の仕事ではないか。その大仕事を、ママたちには幸せに成し遂げてほしい。パパや家族、病院や周囲の人たちはどんなふうに妊婦を支えられるだろう。最先端のサービスをヒントにしてほしい。
ITで出産の不安を解消?
出産をめぐっては医療技術が進歩し、行政サービスも充実してきた。それでも妊婦の不安や課題は尽きない。それはそうだろう。「この命」を産むことができるのは自分しかいないという重圧と孤独感。特に初産の場合は、未知の体験をすることへの不安。
もっと妊婦に寄り添って、深いところで安心してもらえる手段はないだろうか。重圧、孤独、不安を感じるのは心であり脳だ。妊婦の心(脳)に着目してITを使い快適な妊娠、出産を支えようというシステムの導入が始まっている。
脳科学者の茂木健一郎氏も監修
株式会社タイガアソシエイツが開発したITシステム『Maternity bouquet(マタニティブーケット)』。妊娠初期から、出産、産後にいたるまで妊婦を継続的にサポートする産婦人科向けデジタルプラットフォームだ。
ママと病院のみならず、パパや周囲の人もこのシステムを通して関わり幸せな妊娠、感動的な出産を実現する。
特にユニークなのはシステムのサポートにより退院日に「出産式」が催されること。入学、入社、結婚など人生の節目に式典があるならば、出産という節目にもママを祝福し労う晴れがましい式があっていいはずだ。妊娠中から出産まで、アプリで登録した写真を取り込んだオリジナルムービーをシステムが生成、式で流される。
10ヶ月間を振り返りながら、パパも一緒に思い出、そしてこれからのことを語り合えるひと時。オリジナルムービーはママのスマホにダウンロードしてプレゼントされる。
このシステムの監修には脳科学者の茂木健一郎氏も加わっている。茂木氏は、妊娠中のママにとって一番大切なのはパートナーをはじめとした家族との絆だとした上で
「出産後に自分が経験してきたことを振り返り、ひとつの物語として脳の記憶の回路にちゃんと届けてあげると、そのあとの気持ちの整理が全然違います。無事出産したことを、『あー、本当によかった』と、きちんと振り返って脳の中で整理しておくことで、その後の生活においても、これから経験する様々な出来事や、新しいチャレンジにも前向きな気持ちで向き合えるようになると思います」とコメントしている。
相談やエールでも出産を
サポート
もちろん『マタニティブーケット』の機能は出産式のサポートだけではない。妊娠がわかるとママはまずアプリから、かかりつけ病院の診察番号を登録する。すると主治医との相談機能を使うことができる。
診察室で体調を説明するのは意外と難しいものだ。『マタニティブーケット』を使えば、診察前に医師に状態を伝えておくことができる。医師はそれを踏まえて問診などができ、円滑に診察を進めることができる。
いよいよ分娩となったら「出産エール」機能がママを応援してくれる。事前にアプリを通じて収集した家族、友人たちからの応援メッセージが、LDR(分娩室)のモニターに流れるのだ。ママはどれだけ心強いことだろう。
コロナ禍の産後うつリスクへの影響が危惧されている。妊娠、出産という大事業を成し遂げるママの心(脳)が健やかであるためには、ママを支え応援している存在がいるのだと実感できることが不可欠だ。ITの活用によりそんなサポートのあり方も新たなステージに入ろうとしている。
文:平井達也