渡辺謙「グローバルな子供を育てるのは環境」
2020/03/06
東日本大震災時の福島第一原発事故を描く映画『Fukushima 50』に出演している渡辺謙さん。戦争、震災、原発事故 ―― 年月が経つにつれ過去の出来事が風化していくのを、彼は危惧している。そこには「日本国籍の一社会人として子供の未来を真剣に考えなければならない」という強い思いがある。
情報を取捨選択できる
オープンマインドを育てる
3月6日、渡辺謙さんが出演する映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)が公開される。福島第一原子力発電所で発生した事故現場で奮闘した人々の、知られざる姿を描いたヒューマンドラマだ。
現場所長の吉田昌郎役を務めた渡辺さんは、なぜこの役を引き受けたのか。「3.11がすっかり忘れ去られていると感じたからです」と振り返る。
ボタン1つで通る電気がどこで作られているか。まるで現実感がない。政治の非現実感はなおさらだ。しかし、本当にそれでいいのか。福島第一原発事故で国民は政治やエネルギーの問題を現実的に捉える機会を得たはずだが、風化しつつある。渡辺さんはそれを危惧している。
渡辺さんは以前、SNS上で〈一人も兵士が戦死しないで70年を過ごしてきたこの国。どんな経緯で出来た憲法であれ僕は世界に誇れると思う、戦争はしないんだと! 複雑で利害が異なる隣国とも、ポケットに忍ばせた拳や石ころよりも最大の抑止力は友人であることだと思う。その為に僕は世界に友人を増やしたい。絵空事と笑われても。〉と戦争反対を訴え、話題となった。
「今や日本もアメリカも声の大きい人しかトップに立てません。彼らが全て正しい訳ではない。そこから発せられる情報をきちんと取捨選択して主体的に物事を捉えていかなければなりません」。
それは子育てにも通じる。グローバル社会で成功を掴む秘訣について渡辺さんは「気持ちをオープンにしておくこと」と話す。新潟県出身の渡辺さんは、生まれた時から豊かな自然に囲まれ、野山で自由に遊んだ。それがオープンマインドの原点となった。子供たちも自然に放り込めば創造性が広がり、情報を取り込むパイプが洗練され、正しいものを取捨選択できるようになるんだと感じた。
DATA
映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)
2020年3月6日(金)全国公開
本作は、2011年3月11日午後2時46分に発生し、マグニチュード9.0、最大震度7という、日本の観測史上最大の地震となった東日本大震災時の福島第一原発事故を描く物語。世界中が注目した現場では本当は何が起きていたのか? 何が真実なのか? 浮き彫りになる人間の強さと弱さ。東日本壊滅の危機が迫る中、死を覚悟して発電所内に残った人々の知られざる“真実”が、今、遂に明らかになる。
出演:佐藤浩市 渡辺謙 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人
吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美
配給:松竹、KADOKAWA
HP:映画「Fukushima 50」公式サイト
©2020『Fukushima 50』製作委員会
PROFILE
渡辺 謙
1959年、新潟県生まれ。1987年にNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』で主演を務めた。2003年に映画『ラストサムライ』で第76回アカデミー賞助演男優賞、第61回ゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされ、世界的俳優として高い評価を得る。代表作は映画『明日の記憶』『硫黄島からの手紙』『沈まぬ太陽』などがある。
Photo » MASASHI HASHIMOTO (HAVEROCK)
Text » KOSUKE ONEDA
Styling » JYUNKO BABA
Hair&Make » TSUTSUI TOMOMI (PSYCHE)
「FQ JAPAN DIGEST」VOL.52(2020年春号)より転載