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障がいも個性として尊重される社会をつくるには? 強いこだわりや個性が世界を変える

社会の中には、さまざまな発達特性を持った方がいる。訓練して苦手なものを克服する道はあるが、本当にそれがよいことなのだろうか。障害も個性として尊重される社会をつくるためにどうしたらよいのか、香山先生に聞いた。

純粋な気持ちが海を越え
大人の心を揺り動かす

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが、11月13日、大西洋を横断するため、ヨットに乗り込みました。目的は、スペインで開かれる国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)に出席すること。グレタさんは、地球温暖化対策を呼びかける学校ストライキを始めるなど、16歳の少女とは思えないほどの行動力を示し、世界中の大人の心を揺さぶっています。

彼女は、自分がアスペルガー症候群であることを公表しています。アスペルガー症候群は、かつて自閉症スペクトラム障害という大きなくくりの1つでした。自閉症スペクトラム障害は以前、言葉が話せる・話せない、知能が発達している・していないなど、そのくくりの中で分類していましたが、今はそのような分け方をしません。

自閉症スペクトラム障害の特徴は、コミュニケーションが得意でないことこだわりが強いことなど。グレタさんはしっかりスピーチをこなしているので、障害は重くないほうでしょう。今は、こだわりの強さを、気候変動について徹底的に調べ、行動するためのエネルギーに変えています。そういう意味では、強すぎるこだわりを卓越した個性として活かしている、障害を活かしているといえます。

ところで、彼女が飛行機を拒否しているのは、「飛行機は温室効果ガスを多く排出するから」という理由だそうです。ですが、もしかするとそれ以外に、飛行機の密室空間や狭い席が苦手という理由もあるのかもしれません。社会の中には、さまざまな発達特性を持った方がいます。例えば障害や強い苦手意識のため電車通勤ができない方、満員電車でパニックになってしまう方などです。こういう方を対象に、訓練して乗れるようになる療法もあります。苦手なことに徐々に慣れていってもらい、「怖くないんだ」と認識を改めて、「やってみたらできた」という方向に導くことは、技術的には可能です。

でも、無理やり慣れさせるのではなく、「自宅でテレワークでもいいよ」などと、周りがその人に合わせていくのが人道的でしょう。ですが、日本では「みんなに合わせる」が美徳とされがちですね。その点、グレタさんの場合は、「飛行機が嫌だけど、会議に参加したい」と言ったら、周りが合わせる、協力をするスタイルで活動が成り立っています。今回のCOP25への移動手段については、オーストラリア人夫婦が協力を申し出たそうです。力のある大人の心を動かし、しっかり巻き込んでいく様子は感動的です。



世の中を変えていく
革命家を社会で見守る

彼女は現在、気候変動問題に熱意を持って取り組んでいますが、まだ16歳という若さです。今後、興味の対象が変わることがあるかもしれません。現在は環境という社会的にも関心の大きいテーマのため、世界規模で注目を集めました。いつかグレタさんの関心が変わったとしても、「彼女はダメになった」などと言わず、個性を尊重する態度で受け止めてあげたいですね。

そういえば、アメリカにバーバラ・マクリントックという研究者がいました。彼女はトウモロコシの遺伝子研究でノーベル賞を受賞しましたが、家と畑を往復するだけの風変わりな人。受賞連絡のときも、「あ、そう」とだけ言って、また研究に戻ったほど。他の人だったらすぐ音を上げるような緻密な研究を続け、遺伝学において大きな功績を残したのです。

行動が大胆なグレタさんについて、「誰かが裏で操っているのでは」など、誹謗中傷をする底意地の悪い大人もいますが、突出したこだわりや個性がある人は、世の中を変えていく可能性があるんです。いい意味で空気を読まない力を持った人は強い。

ただし、気候変動問題のシンボル的な存在として持ち上げすぎるのも違うと思います。まだ若い方ですから。でも、なかなか行動できない大人に対して、重要な問いを投げかけ、彼女は世界を変える一歩を踏み出しています。

PROFILE

香山リカ RIKA KAYAMA


東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に「『わかってもらいたい』という病」(廣済堂出版)、「トランプ症候群:明日の世界は…」(ぷねうま舎)など。


Text >> ETSUKO KIMURA

FQ JAPAN VOL.53(2019年冬号)より転載

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