30秒に1回、園児の顔を自動で撮影!? 保育の現場に「スマート保育園」の革命が押し寄せている!
2019/11/07
保育士・保育園不足解消のための打開策となる園のIoT 環境整備=「スマート保育園」に関して、保育施設におけるIoT 導入の最新事情と今後の可能性についてのパネルディスカッションが行われた。
幼児教育・保育の無償化によって
“保育の質”が低下する危険性も
講演会は、内閣府 子ども・子育て本部 参事官(少子化対策担当)南順子氏による少子化の現状、内閣府による少子化対策のあゆみ、待機児童解消対策の取り組み、さらに幼児教育・保育の無償化の概要に関する内容からスタートした。
令和元年10月1日、消費増税とあわせてスタートした幼児教育・保育の無償化について、大豆生田氏は、「待機児童や保育士不足の問題が助長されるだけでなく、長時間保育が可能になったことで質が低下する危険性もある」と指摘。
子育て世帯の負担を軽減し、全世代型の社会保障への転換を加速し少子化対策につなげるのが今回の無償化の狙いだが、課題も多く残されている。
その1つが「待機児童」の問題。政府が参考値として発表した2018年10月の待機児童数は、4万7,000人。無償化によってさらに利用希望者が増えることが予想され、入所がますます難しくなるとされている。
待機児童が解消できない最大の原因が、深刻な保育士の担い手不足だ。仕事の大変さに比べ、それに見合った賃金ではないことなどから、離職率は10%を超える。
検温や排せつなどの健康状態の記録、SIDS(乳幼児突然死症候群)など睡眠状態のケアや対策、室内の安全、保護者ケア、遊びや学びの準備……など業務は無数にあり、書類作成をはじめとした事務業務が1日の約4割を占める園もあるという。
そして、もう1つの課題が大豆生田氏も指摘する「子供の安全と保育の質をどう保証するか」という問題。日本の認可保育所などでの保育士の配置基準は低く、特に3歳以上の基準は先進国でも最低水準レベルだ。
さらに認可外施設の4割以上が、子供の命を守るために最低限必要な指導監督基準を満たしていないとも報告されている。
これらの「深刻な保育士の担い手不足」と「子供の安全と保育の質の保証」を解決するヒントとなるのが、今話題になっている子育ての負担をITで軽減するベビーテック(BabyTech)だ。
育児をより安全安心に
効率化ももたらす商品・サービス
「ベビーテック」
ベビーテックとは、「テクノロジー × 育児」を意味する新産業分野。IoT・ICTの力でより安全安心で効率化された育児環境をもたらす商品・サービスのこと。
この言葉が初めて使われたのは、2016年の次世代家電が集結する世界最大規模の家電見本市「CES」だ。同年から「Baby Tech Awards(ベビーテックアワード)」も開催され、欧米ではすでにさまざまなプロダクトが発表されている。
日本でもいよいよ2019年6月、日本唯一のベビーテック専門メディア「BabyTech.jp」を運営する株式会社パパスマイルが、初の「BabyTech Award Japan 2019」を開催した。
部門は「授乳と食事部門」「遊びと学び部門」「安全対策部門」「妊娠部門 」「健康管理部門」「施設向け管理システム」 の6部門。
今回のパネルディスカッションでモデレーターを務めたユニファの「ルクミー午睡チェック」(乳幼児の安全な午睡(お昼寝)を見守る医療機器によるヘルスケアサービス)が「安全対策部門 」で優秀賞を受賞した。
また、「施設管理部門」でもユニファの「ルクミーフォト」(保育施設における子どもの自然な表情や成長を記録し、保護者がオンライン上で購入することができる写真/動画提供サービス)が大賞を受賞。
「ルクミーフォト」は、保育士のエプロン等にバッジ型カメラをつけ、子供たちの園生活での自然な表情をカメラが30秒に1回、自動で撮影するというもの。
これにより、壁張り、手書き注文、現金決済など、撮影から保護者の手元に届くまでのすべての工程の自動化を実現。大幅に保育士の負担を軽減した。