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インタビュー

稽古中は“師匠と弟子”普段は“父と子”。 多忙を極める野村萬斎さんのパパとしての素顔

狂言師として古典はもちろん、ドラマや映画、教育番組への出演、舞台演出など、幅広い分野で活躍している野村萬斎さん。父と子であり、師匠と弟子でもある、“ちょっと変わった”親子関係を築いている野村家の子育てに迫る。

ひとつのベッドで
川の字になって寝ることも

3歳で初舞台を踏んでから、長年にわたり、狂言の世界で鍛錬を重ねてきた萬斎さんだが、活躍のフィールドは幅広い。映画やドラマ、現代劇にも出演し、さらには新作狂言や海外公演にも積極的に取り組んできた。

各所で活躍し、多忙を極める萬斎さんが、初めてパパになったのは、自身が31歳の時。当時は、舞台演出もはじめた時期で、夜遅くまで公演の準備に追われる日が続いていたそう。そうした中で経験した、印象的なエピソードがある。

「ちょうど、電光掲示板でセリフの解説などをする『電光掲示狂言会』の仕込みのため、劇場にこもっていた日のこと。妻から『具合が悪いので、家に帰ってきてほしい』と連絡がありました。搾乳がうまくいかず、乳腺炎にかかってしまったんですね。急いで帰宅したところ、医学的な根拠はわかりませんが、当時『おっぱいの熱をとるには、ジャガイモを塗るといい』と言われていたようで、妻にお願いされ、夜中にジャガイモをすりおろして湿布のようにしたことがありました」。

また、連日の子育てで疲れている妻に代わり、夜泣きするお子さんを寝ぼけながらあやしたことも。“自慢できるほど、子育てできていない”と謙遜するが、パパとして奮闘したことをうかがわせる。

多忙ながらも、子供たちの夏休みに合わせて休暇をとったり、海外公演の際は家族を伴ったりと、子供たちとの時間をつくってきた萬斎さん。そんな萬斎さんのことが、3人のお子さんたちは大好きなよう。こんな微笑ましいエピソードを披露してくれた。

「子供たちにはそれぞれの部屋にベッドがあったのですが、夜になると、僕と妻が寝ているベッドに潜り込んでくるんですね。気づくと、ひとつのベッドに5人が川の字で寝ていることが多々ありました。小学校高学年ともなると体も大きいので、“なんだか狭いな”と思いながら寝ていましたね(笑)」。
 

楽しいばかりではない稽古に
どう興味を持たせるか

先祖代々、「狂言」を受け継いできた野村家。そうした特殊ともいえる家系に生まれた萬斎さんならではの、子育てにおけるルールやマナーがあるようだ。その一つが、“オン”と“オフ”の切り替えをきちんとすること

「長男の裕基は、僕と同じように3歳で初舞台を経験しています。また、小さな頃から狂言の稽古を積んできました。稽古場に入ったら、正座で向き合って一礼し、“師匠と弟子”として稽古を始める、というのは当初から徹底していましたね。もちろん、稽古が終わったら、“父と子”に戻ります」。

基本の型や発声法など、覚えることが多い狂言の稽古は、子供にとって窮屈に感じられる場合もある。稽古の後、裕基さんが“ガス抜き”できるようにと、一緒にキャッチボールをしたり、フルーツを食べたりするのが習慣だったそう。

「そういえば、僕が子供の頃、父も頻繁にキャッチボールをしてくれましたね。オン・オフの切り替えやガス抜きは、我が家では意識的に行われてきた教育方法だったのかもしれません」。稽古は大変だが、本番では、大勢の観客が狂言を見て喜んでくれる。そういった“成功体験”をさせることも、野村家では重視されている。

「何かを習得するには、あまり楽しくないことにも、取り組まないといけません。でも、頑張ったからこそ大きな達成感が得られるということを、教えてあげるといいのではないでしょうか」。
 

DATA

狂言『ござる乃座』60th

日時:10月26日(土) 18:00開演
   10月30日(水) 19:00開演
場所:国立能楽堂
問い合わせ:万作の会
 

PROFILE

野村萬斎

MANSAI NOMURA

1966年、東京生まれ。狂言師。祖父・六世野村万歳、父・野村万作(人間国宝)に師事。3歳で初舞台を踏み、1994年、28歳で曽祖父・五世野村万造の隠居名「萬斎」を襲名。テレビドラマ、映画にも多く出演。主な出演作は、映画『陰陽師』『のぼうの城』『シン・ゴジラ』『七つの会議』など。2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックでは、開会式・閉会式のチーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターを務める。
 


Photo » NATSUKI MATSUO (NAOTO OHKAWA Photography, inc.)
Text » YOSHIKO OGATA
Hair&Make » MASAKO KOUDA

FQ JAPAN VOL.52より転載

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