黒板に向く授業はしない!? 日本初の「イエナプラン教育」を導入した小学校が設立!
2024/06/01
「イエナプラン教育」はドイツで生まれ、オランダで発展した教育だ。「個別の学び」と「共同の学び」の両立を基本とし、「民主的な対話」も重んじる。日本初のイエナプランの小学校が今年4月に設立されたので、その様子をレポート!
黒板に向いた一斉授業はナシ
個別学習と対話を重視
2019年4月、長野県佐久穂町に日本で初めて『イエナプラン教育』という教育法を取り入れた小学校が設立された。
教室を一見しただけで日本の一般的な学校との違いは明らかになる。まず、教室正面の大きな黒板に向かって机を並べる「一斉授業」のスタイルではない。子供は机を向かい合わせて島をつくり、それぞれの子供がそれぞれの課題に取り組んでいる。
基礎的な教科学習については、黒板を前にしての一斉指導ではなく、自立学習を中心に進める。そのようなスタイルの授業時間のことを「ブロックアワー」と呼ぶ。それぞれの状況に応じた課題に個別に取り組むが、グループリーダーが数人ずつを集めて教えることもときどきある。
校舎に入るとすぐあるのが職員室。職員室といっても完全にオープンなスペースで、子供たちが自由に出入りできる。フェイスブックやグーグルのオフィスの様子にも似ている。子供と先生の垣根をなくし、いつでも自然に対話できるような配慮があるのもイエナプラン教育の特徴だ。
<イエナプラン教育のキーワード>
●異学年がともに学ぶ「ファミリーグループ」
●自立学習方式の「ブロックアワー」
●教科横断型の「ワールドオリエンテーション」
●「サークル対話」で民主的対話を重視
●「対話」「遊び」「仕事」「催し」の4つの活動リズム
3学年からなる「ファミリーグループ」(異年齢学級)と4つの基本活動(対話・遊び・仕事・催し)のリズミックな循環による時間割が学校生活の基本だ。
<低学年の時間割>
「ブロックアワー」では、それぞれの発達段階にあわせた週の課題と挑戦課題を自らの計画に沿って、自立的に学習を進める。事物のシステムを共同で探究する「ワールドオリエンテーション」は、日本の学習指導要領の「総合的な学習の時間」のお手本のようなものであり、『イエナプランのハート』と呼ばれている。
図書室にはカーペットが敷かれ、大きなクッションが置かれている。そのため子供たちは思い思いのリラックスした姿勢で本に触れることができる。もちろん椅子と机も置かれているが、子供にとっては本来そのほうが読書に集中しやすいのだろう。
イエナプランでは、学校を、「生活の場」「他者との対話の場」としてとらえる。教室を「リビングルーム」と呼び、1日の学校生活のなかに「サークル対話」という時間を必ず設ける。「サークル対話」では、輪になって、全員がおたがいの顔を見られる状態になり、話し合う。そこで民主的な意志決定や異なる意見をもつひととの関わり方を学ぶ。
輪になって、全員がおたがいの顔を見られる状態に座り、話し合う時間だ。サークル対話は話すだけではなく、ひとの発言を終わりまで聞く練習でもある。こうして子どもたちは、民主主義社会の基本となる対話そして合意形成とは何かを学ぶ。この日はオランダからの見学者も参加した。
スローガンは、「子供の主体性の尊重、異なる他者の受容、学校共同体」だ。教員は「子供と社会と学校についての理想を掲げた20の原則」をコンセプトとして共有している。コンセプトを具体的にどう展開するかは、現場の子どもたちの状況に合わせ、個々の教員の自由裁量にまかせる「オープンモデル」だ。つまり教員の裁量が大きい。それだけ教員の力量が求められる教育法ともいえる。
大きなランチルームの好きなところで好きなひとと食事ができる。大日向小学校では「給食」という言葉を使わず「おひるごはん」という。「与えられる」のではなく、生き物の命をありがたく「いただく」という気持ちを込めている。「北八ハム」「信州サーモン」など地元の食材が使われている。