家に帰ってきて一人で泣いている……悩む子供を救う親の行動とは?
2024/06/01
「自分の子供が仲間はずれになったらどうしよう」 あるいは、既に仲間はずれにされて子供が悩んでいるかもしれない。 子供の友達付き合いにどこまで関与していいものか親は悩むものだ。 今回はそんな親の悩みをアドラー心理学のプロである熊野英一氏が答える。 知っておくだけで子供の人間関係の悩みの処方箋になるだろう。
この4月に、子供が進学・進級をしたパパ&ママも多いだろう。長いGWが終わり、通常の学校生活・園生活に慣れ始めた頃だが、一方で、今まで気付かなかったわが子のトラブルが顕在化しやすいタイミングでもある。あるママも、わが子の友達とのこじれた関係に最近気づき、頭を悩ませている。
この悩みについて、アドラー心理学にもとづいた「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナルであり、FQ JAPANではおなじみの熊野英一氏に、対処法を提案してもらった。
<今回のお悩み>
「仲良し3人グループの中で、娘が仲間外れにされているようで心配です」
近所に住んでいるAちゃんとウチの娘は、いつも2人で遊ぶほどの仲良し。小学校でも同じクラスで毎日一緒だったのですが、Bちゃんという子が新たにお友達になり、女の子3人のグループになりました。
初めのうちは仲良しの友達が増えて良かったと思っていたのですが、最近は「AちゃんとBちゃん対ウチの娘」という、2対1の組み合わせになることが増えてきました。この間は、学校の帰りに些細なことで2人と口論になったらしく、先に2人で手をつないで帰ってしまったそうです。子供がしょんぼりして帰ってくるのをみると、いけないと思いつつも、ついAちゃんとBちゃんのことを子供の前で非難してしまいます。
子供に、どんな言葉をかければいいのでしょうか? 思い切ってAちゃんやBちゃんと友達づきあいを止めろと言った方がよいのでしょうか? ママ/30代(娘1人)
自分と子供の課題を
切り分ける必要がある
熊野氏:アドラー心理学で子育てについて考える時に大事なのが、子供の「自立」と「幸せ」です。この2つは切り離せない存在で、子供が自立して生きていく≒幸せな人生を歩んでいるとも言えます。
アドラーは、人が幸せを感じるための「幸せの3条件」として、①自己受容、②他者信頼、③他者貢献という条件を示しています。これを満たすことで、人はハッピーに生きていけると考えます。
逆にそれがうまく回っていない時は、①⇔自己否定、②⇔他者不信、③⇔自己犠牲に陥っている状態。おそらくお子さんの心の中には負の感情が渦巻いてしまって、自分や他人を信頼できない状況になっているのではないでしょうか。
もう1つ、アドラー心理学で子育てを語る上で、大切な考え方に「課題の分離」があります。今回のお悩みでいうと、「娘が友達と仲良くできていない」のは、娘さんの課題。なのに「親である私は『娘が友達と仲良くできていない』ことが心配だ」と、自分(親)の課題を上乗せしてしまっている。
もちろん、その心配は親として当然のこと。ただ、その解決を図るために、子供の問題にズカズカと介入してしようとしている。娘さんの自立や幸せと照らし合わせて考えた時に、行き過ぎていないか? と、少し立ち止まって考えて欲しいですね。
<3つの解決策>
子供の話をじっくり聞いて、共感する
まず、子供の話をしっかりヒアリングします。「学校はどう? 最近元気がないように見えるけど何かあった?」といった感じで、フラットに聞いてください。
そして、子供の話や気持ちに「共感」しましょう。共感してもらうことで、きっと娘さんは「わかってもらえた」と安心でき、次のステップに進む勇気を持てます。
親のサポートが必要か、本人に聞いてみる
この問題を自分で解決できるかどうか、聞いてみます。子供なりに、きっといろいろ考えていると思いますよ。「やっぱり3人で仲良くしたい」とか「別のお友達をつくる」とか。そこで、「ママの考えも聞いてみる?」とか「私も同じようなことがあったんだけど、参考になるかな?」といった感じで、助けが必要かを聞いてみましょう。
自分の考えを押し付けず、子供の選択を尊重する
ここで子供が「サポートは必要ない」といえば、それ以上の過干渉はせず、ひたすら見守ります。もちろん、「共感ファースト」の姿勢は忘れずに!
ただ、小学校1年生で親を頼らない状況というのは、ひょっとするとお子さんがママを信頼していないのかも。その時は、自分の子育ての姿勢を見直して、一から信頼関係を築く覚悟を決めなきゃいけないですね。子供に自分の考えを押し付けたり、子供の課題に首を突っ込んで自立を妨げたりしていないか、振り返ってみてください。
一方、子供が「ママにも助けて欲しい」と言ったら、今回のトラブルは、お母さんと娘さん2人にとっての「共同の課題」になります。
ここで初めて、お母さんの案も選択肢として並べられます。相談者さんが「Aちゃん、Bちゃんと付き合うのは止めた方がいい」と思うのなら、それを選択肢に挙げてもいいんです。
忘れないでほしいのが、選ぶのはあくまでも子供自身ということ。無理に考えを押し付けてしまうと、子供が自分で考えるチャンスを奪い、自立を妨げるだけでなく、もし問題の解決がうまくいかなかった場合、「ママの意見に従ったせいだ」と、子供が責任を自分で取らず、転嫁する人になりかねない。子供が主体だということを肝に銘じておきましょう。
お母さんが選択肢を提示する時には、目先のことばかりにとらわれないこと。5年、10年先に、その子の自立や幸せによりプラスになる選択肢を提案しましょう。AちゃんやBちゃんと、今は不仲だけど、この先また意気投合できるかもしれない。仲良しグループではないけど、普通のお友達として関係を続けることはできるかも、とかね。
プロフィール
熊野英一(くまの・えいいち)
アドラー心理学にもとづく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。株式会社子育て支援代表取締役。1972年、フランス パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学し、MBA取得。製薬大手企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事する。2007年、株式会社子育て支援を創業。日本アドラー心理学会正会員。著書多数。最新刊は『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』(小学館)
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