爆笑問題・田中裕二「子育てに正解はなくて、毎日が試行錯誤。」
2019/03/12
『キャー』って叫んでみかんを指差す。
今日も朝から振り回されてきましたよ(笑)。
朝から夜まで、子供たちに
振り回されっぱなしの毎日
特に最近は、少しずつ言葉も出てくるようになった次女に、毎日、振り回されっぱなしだ。
「ヨーグルトを手に持って『こえ、こえ』って言うから、フタを開けて子供用のスプーンを渡そうとしたら、『ちがっ、ちがっ』って言うんですよ。ちょっと考えて大人用のスプーンを見せたら『こえっ!』となって、ようやく一口食べたと思ったら、今度は『キャー』って叫ぶわけ。指差すほうを見たらみかんがあって、先にそっちを食べさせろって(笑)。これ、今朝の話です」。
朝は、田中さんと子供たちが触れ合う大切な時間。仕事でどれだけ遅く帰宅しても、朝は小学校に通う長女と長男の顔を見て送り出し、次女を保育園に連れていくのが日課だ。
「なるべくコミュニケーションを取りたいので、朝は何がなんでも起きるっていうことだけは決めていて。でも、正直、それ以外に決めていることって、ないんですよ。日々、迷いながら、試行錯誤しながらの子育てなので、これは絶対にこうだという正解が、自分の中にひとつもないんです。だから、朝は顔を見て、できるだけ会話をして、その日、そのときどきの様子を見ながら、こうかな、ああかなって対処している感じです」。
それだけ心を砕いても、子供の思いをくみ取るのは難しく、もどかしい思いをすることの多い毎日だ。
「子供って、急にわけわからないすね方をしたりするじゃないですか。この間も長男が『早くお風呂入って』と言われた瞬間に不機嫌になって泣き出して。理由聞いても言わないから、こっちは、眠くて機嫌が悪いのかなとか思いながら対応するわけですよ。そうしたら3時間くらい後になって『だって昨日、こういう約束したのに、守ってくれなかったじゃん』とか言い出すわけ。早く言やあいいのにさ(笑)。でも、子供の純粋な気持ちを傷つけたのはこっちだからそこは謝るけど、毎日、答えの見えない難題ばかり突きつけられてますよ」。
時代の劇的な変化を念頭に
将来の選択肢を提示する
学校や習い事などの教育面については、子供の自主性を尊重し、サポート役に徹するつもりだという。
「環境のいい学校なら青春時代を楽しく過ごせるかなとか考えたりもしますけど、学校がすべてだとは思わないし、天才を育てようとは思っていないし(笑)。今は、いい大学から有名企業に就職すれば安泰という時代じゃないし、勉強も丸暗記からアクティブラーニングへと劇的に変わっていく過渡期で、自分の学生時代の経験が役に立たないでしょ。親にできるのは、こんな選択肢があるよって提示してあげることくらいで、あとは、子供の選択を尊重して応援するくらいしかできないですよね」。
子供がいれば心配事は増えるし、自分の時間も削られていく。でも、それを上回る幸福感があるから、親になれたことは奇跡的に幸せな体験だと田中さんは言う。
「夜8時ごろに家に帰って、子供が寝るまでのほんの1、2時間の間にも、3人が3人、泣いたり、怒ったり、笑ったり、ケンカしたり。とにかく目まぐるしくて、毎日が大変じゃないわけがないですよ。だけど、子供がいる幸福感は言葉では言い表せないレベルの幸せで、子供のかわいさの前ではなんでも耐えられるし許せちゃう。本当に、うまくできてますよね」。
でも、自分より大変なのは奥さんだから。そう言葉を締めくくるところが、愛妻家の田中さんらしい。
PROFILE
田中裕二(爆笑問題) YUJI TANAKA
1965年、東京都生まれ。1988年に太田光と漫才コンビ「爆笑問題」を結成。現在、テレビ・ラジオのレギュラー番組に出演する他、雑誌の連載、映画『モンスターズ・インク』シリーズなどの映画で吹き替えを担当するなど、マルチに活躍。2015年にタレントの山口もえさんと結婚し、現在は11歳の長女、7歳の長男、2歳になる次女、3人のパパ。
Photo » SATOSHI KANEKO
Text » YUKI IMATOMI
FQ JAPAN VOL.50 より転載