「良い夫やめました宣言」と「医学部入試の女性差別問題」の共通点とは
2019/01/30
「良い夫やめました」でなく
古い価値観から抜け出そう
オリエンタルラジオ中田さんの「方針変更! 『良い夫』やめました」という記事が話題になりましたね。我慢して妻の要望に応えたのに感謝されない。それどころか要望がエスカレートする一方。だから、もう良い夫であろうとすることはやめた、といった内容でした。私が注目したのは、中田さんの記事そのものではなく、世の男性たちからSNSなどを通じて賛同の声が上がった、という事実です。「僕も我慢している!」「稼いでいるのは夫なのに……」といった意見が多かったように思います。
記事から判断する限り、中田さんの奥様は男性の家事・育児参加は当たり前、という考え方であり、一方の中田さんは、“妻が望むから仕方なく”家事や育児をこなしていたようです。それでは、前向きに積極的に家事・育児に関わってほしい、と願う奥様に「貴方は何も変わっていない」と思われても仕方ありません。中田さんの「良い夫やめました」に賛同の声が多く集まったということは、それだけ多くの世の男性が、妻が望むから仕方なく、家事や育児をこなしている、ということの証明です。
そもそもワーク・ライフ・バランスを見直すとは、どういうことなのでしょうか。仕事の時間を短縮して家事を手伝いましょう、という話ではありません。もちろん子育て中ならば、育児や家事に時間を割くこともあるでしょう。介護の時間を増やす人もいかも知れません。趣味を楽しんでも良いわけです。
ワーク・ライフ・バランスを見直すとは、仕事以外の生活時間にも価値を見出しませんか、という問い掛けです。ワーク・ライフ・バランスを改善するには、男性が陥りがちな“仕事が全て”という考え方を根本から改めることが求められます。「医学部入試の女性差別」と「良い夫やめました」という話題の裏に、古い価値観から抜け出せない人々の姿が浮かび上がります。
PROFILE
香山リカ RIKA KAYAMA
東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。
Text >> REGGY KAWASHIMA
FQ JAPAN VOL.49より転載