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子供をリーダーに育てたいなら「周りに合わせる”フリ”」を教える

親が「周りに合わせなさい」「何で言うことを聞かないの」などと言っていると、子供は同調圧力に負けてしまう。本当に教えるべきは「周りに合わせる"フリ"をする能力」なのだ。首都大学東京教授・宮台真司の「マイノリティ教育」に関するコラム中編。

種の保存に必要な
「なりすまし」

蟻の群れでは1割が無意味に見える行動をしますが、ダイバーシティとしてのNM※1の行動も平時は無意味に見えます。だからこそ緊急時に出番になる。平時には無意味に見える存在が、人類の生存上最重要の役割を担うのだと読み替えるべきです。集団は個体の乗り物で、個体は遺伝子の乗り物なので、NMが集団的生存確率を上げることで、個体の生存確率も上がります。

同じロジックを個人の生き方に当てはめられます。「社会に適応した自分」を自分の9割にしておき、1割は「社会に適応しない自分」つまり別の生き方をする自分を残すべきです。僕はこれを「なりすまし」と言います。システムに適応したフリをして、いつシステム外に出ても生きられるように備えておく。そうした生き方をNMではない人たちにも推奨したい。

僕は医者から「なりすましという発想自体が自閉症スペクトラムの典型」と言われました。DSM※2的に自閉症スペクトラムに当たるカスパー・ハウザーやアヴェロン野生児は、やがて社会に幾分適応し、その分サヴァンな能力を失いました。「適応は能力喪失が代償」という図式も大切です。



ならば、適応ではなく「適応したフリ」で済ませるのです。フリの向こう側にある本体は衝動が渦巻いて我慢している状態。これをできるだけ低いストレスで維持しましょう。マジョリティの人たちは何のストレスもなく慣れ親しんだ社会を生きています。でも、何の疑問もなく環境に適応しているから危険です。そういう人たちに「NMに習って、適応も大概にしろ」と言いたいところです。

システムの環境が激変すれば、過剰適応するマジョリティは死滅し、逆にマイノリティが生き残って種を保存します。紹介してきたようなロジックが理由です。

そうしたロジックで、国や会社組織のような集団の在り方や、個人やカップルの在り方を、考えていかなければなりません。

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